2007/12/16(日)「題名のない子守唄」

 ジュゼッペ・トルナトーレが描きたかったのは終盤の展開なのだろう。ここを描くのが中心なら、もう少し効果的な手法があると思う。無理にサスペンス調にする必要はなかったし、ヒッチコックをまねたタッチ(ヒロインが使うのはハサミだし、舞台はらせん階段のあるマンションだ)が目立ちすぎるのは大きなマイナスだ。エンニオ・モリコーネの音楽もヒッチコック映画でおなじみのバーナード・ハーマン調だから、余計にそう感じる。

 序盤からヒロインが何のためにある家族に接近しようとしているのかまったく説明されないのはサスペンス映画として悪くはないのだけれど、この部分を引っ張りすぎている。ヒッチコックならこんなに長く謎を謎のままにはしていないだろう。あまり長いと、途中で飽きてくる。このテーマを描くのにこの手法は間違っていたとしか思えない。手法とテーマが乖離しているのである。

 僕は「ニュー・シネマ・パラダイス」からトルナトーレは一流になりきれない監督だなと感じている。偽物感がつきまとって仕方がない。きっと、トルナトーレ、この映画を撮る際にいつも同じ手法では面白くないからと思い、サスペンスタッチを取り入れたのだろう。ヒッチコックタッチが目に付くのはそれなりにヒッチコックの映画を勉強しているからだと思う。しかし、それなら結末も含めてきっちりとしたサスペンスを作って欲しいものだ。この人、「ニュー・シネマ・パラダイス」が評価されすぎで、本来は二流の力しかないのではないか。