2000/12/25(月)「バトル・ロワイアル」

 見る前に思っていたのは「中学生同士で殺し合ってどうする。そんなエネルギーがあるなら、そういう状況に追い込んだ大人に刃向かえ」ということ。これは映画を見終わった今もそう思う。本来であれば、“子どもたちの復讐”的意味合いがなければならないと思う。この映画は現在の状況を映しているわけでもないし、単なる殺し合いの映画でもない。アクション映画でさえないが、面白くてしょうがなかった。エネルギッシュで息を抜ける場面がなく、見終わると、頭がクラクラした。これは傑作の証拠である。

 端的に言って深作欣二の映画としては「仁義なき戦い」に匹敵する出来と思う。深作欣二はこの映画に関して、空襲で仲間がバタバタ死んだという自分の15歳のころの原風景を語っているが、その通り、極限状況を描いた映画として戦争映画に近いものがある。クラスメートを殺さなければ、自分も死んでしまう。そんな状況に置かれた人間はどういう行動を取るのか。そういう側面を描きつつ、主人公2人には決して人を殺させず、ヒューマンに描いている。この2人と行動を共にする転校生の川田(山本太郎)が一つのキーポイントで、このキャラクターに先ほど書いた復讐の意味合いをもっと持たせた方が良かったかもしれない。

 黒沢明やチャップリンのヒューマニズムが僕は嫌いだが、深作ヒューマニズムは納得できた。さまざまな欠点があるのは承知しているけれど、今年見た映画のベストと思う。