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2004年10月01日の記事

2004/10/01(金)「アメリカン・スプレンダー」

 「アメリカン・スプレンダー」チラシ公式ホームページの作りは、サエない男のラブストーリーといった感じだが、実際にはハービー・ピーカーというコミック原作者の自伝的映画で、ラブストーリーの部分は大きくない。ハービーは自分の身の回りのことを書く、いわば私小説的なコミック作家。病院の書類係で2度の結婚にも破れた男がコミックの原作を書くことで、ささやかな幸福を得るという話である。

 といってもサエない日常にそれほどの変化はない。監督のシャリ・スプリンガー・バーマンとロバート・プルチーニはドキュメンタリー作家だから、物語よりもハービーという人間を浮かび上がらせることに重点を置いている。俳優とコミックの絵と実際のハービー・ピーカーまで登場させる手法は面白く、映画製作の過程まで見せる。このあたりがアカデミー脚色賞にノミネートされた理由だろう。脚色の過程を描いたスパイク・ジョーンズ「アダプテーション」を思い起こさせる手法だが、違うのは「アダプテーション」が終盤、フィクション性を高めたのに対して、この映画は事実に近づいていくこと。実際のハービーがたびたび登場して物語に解説を加えており、こういう表現方法によって、物語自体の求心力はやや薄れたような気がする。「アメリカの輝き」というタイトルとは裏腹にアメリカの小さな日常を描いた映画になっている。

 クリーブランドの退役軍人病院の書類係として働くハービー(ポール・ジアマッティ)は2度目の妻にも逃げられ、退屈な日々を送っていた。ある日、ハービーは近所のガレージセールでロバート・クラム(ジェイムズ・アーバニアク)と知り合う。クラムは異色のコミックを書き、やがて「フリッツ・ザ・キャット」の作者として有名になる。ハービーも一念発起して自分の日常を書くことにする。絵は描けないので、コミックの原作だが、それを読んだクラムは「傑作だ」と評価する。「アメリカン・スプレンダー」と題して出版したコミックはマスコミでも高い評価を受ける。デラウェア州でコミック書店を経営するジョイス(ホープ・デイヴィス)は自分のために取っておいた「アメリカン・スプレンダー」を相棒に売られてしまい、ハービーにコミックを譲ってくれないかと手紙を書く。それをきっかけに2人には交流が生まれ、クリーブランドにやってきたジョイスとハーピーは結婚することになる。テレビの人気番組にも出演するようになり、ハーピーは有名になるが、ある日、がんに冒されていることが分かる。

 ハービーは妻の協力でがんの闘病記までコミックにする。この闘病記はさらりとした描写で、映画の狙いがこんなところにはないことを示している。監督2人の頭にあったのはあくまで、普通のダメな中年男の生き方であり、ハービーその人を描くことだったのだろう。ハービー・ピーカーがアメリカでどのくらい有名なのか知らないが、この内容から見てコミック自体はそれほど売れているわけではないと思う(当初は自費出版だったそうだ)。それでも世のダメな中年男の共感を得る部分は大きいようだ。

 主役を演じるポール・ジアマッティは実際のハービーと風貌がそっくり。原作者がテレビに出る場面はそのまま当時のビデオが使われているが、全然違和感がない。このほか、NERD(おたく)のトビー役のジュダ・フリードランダーなど話し方まで実際のトビーをそっくりにまねている。

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