2000/08/23(水)「ホワイトアウト」

 原作を読んだのは5年前。細部をすっかり忘れていて、後半の犯人グループの描写に、「ああ、こういう展開だったか」とちょっと驚いた。映画はオープニングの冗長な演出を除けば、面白い仕上がり。原作にある「男の復権」のテーマをしっかり引き継いだのが良かったと思う。

 主人公の富樫(織田裕二)が一人で奮闘する中盤の描写がやや単調になったきらいはあるが、それを救っているのが警察側と犯人グループの描写。所轄に県警本部が乗り込んでくるという「踊る大捜査線」的シチュエーションの下、所轄の意地を見せる署長役・中村嘉葎雄の好演が光る。犯人グループのボス役佐藤浩市も異様なメーキャップで憎々しい演技を見せ適役。一番頑張っているのは織田裕二で、いや、ここまで好演するとは思いませんでした。松島菜々子は、ま、あんなものでしょう。

 原作者の真保裕一が脚本に加わり、15稿まで書いたそうだ。それが原作のテイストを壊さなかったことにつながったのではないかと思う。映画独特のアイデアも含まれ、原作を読んだ人も楽しめるのではないか。

2000/08/16(水)「さくや 妖怪伝」

 1707年、江戸・宝暦時代。富士山の噴火で妖怪が溢れ、公儀妖怪討伐士の榊咲夜(さかき・さくや=安藤希)が父親の跡を継いで、妖怪退治に乗り出す。ガメラシリーズの樋口真嗣がSFXを担当しているが、怪猫や河童など作り物がありありの着ぐるみが多い。これはかつての妖怪映画の伝統を守ったのかもしれない。子泣き爺とか一つ目の唐傘とか別にストーリーに絡まない妖怪もゲスト的に出てくる。クライマックスは見応えあり。話も「ジュブナイル」や「パーフェクト・ストーム」など今夏のSFX大作よりまとまっており、手堅い。一番いいのは主演の安藤希で、清潔感とかっこよさがあり、十分主役を張れる演技でした。妖怪のボス土蜘蛛を演じるのは松坂慶子。こちらも感心するぐらいに真剣に演じている。手を抜かないのはさすが。

 監督・原案の原口智生は特殊メイクアップ・アーチスト。SFオンラインによると、「妖怪映画・怪談映画の愛好家であり、そういった映画の再評価やビデオ化企画で積極的に活動をしている人物でもある」という。こういう話が真剣に好きだからこそ、面白い映画になったのだと思う。

2000/08/05(土)「デジモン・アドベンチャー02」

 アメリカ人の少年が飼っていたデジモンのチョコモンがなぜか姿を消し、数年後、なぜか巨大化した姿で少年の前に現れる。チョコモンはなぜか、人間たちをデジタルワールドに幽閉。前シリーズの主人公太一たちが幽閉されたのを知った今シリーズの主人公大輔たちはアメリカに渡り、チョコモンとの闘いを始める。この“なぜか”の部分を映画はほとんど説明しない。途中で列車の多数の乗客が消える場面があるのだが、それがどうなったのかも分からない。説明不足、描写不足が多すぎて、もう最低の脚本である。パンフレットを読むと、チョコモンはデジタルワールドに吸い込まれ、そこで孤独のために心を失って凶暴化したらしい。そのあたりをもっとしっかり描く必要がある。

 デジモンはテレビでまったく見たことがなく、今放送されているのが第2シリーズに当たる「02」であることも初めて知った。映画の内容はテレビシリーズとはまったく関係なく、独立した内容なのだが、作画のレベルはまあまあであるものの、この脚本ではどうしようもないだろう。

 巨大なチョコモンの造型は「エヴァンゲリオン」の影響がありあり。こういう造型ができるのだから、もっと製作に時間をかけるべきと思う。ま、東映の番組の都合で仕方なかったのだろうが、こんなレベルの作品を公開してはマイナスにしかなりませんね。