2011/08/09(火)「ヒックとドラゴン」

 文句のつけようのない傑作とはこういう作品を言う。クレシッダ・コーウェルの児童文学を「リロ・アンド・スティッチ」のディーン・デュボアとクリス・サンダースがアニメ映画化した。アカデミー長編アニメーション賞では「トイ・ストーリー3」に敗れたが、少しも遜色はない。恐らく小さな差だったのだろう。正統派の物語は「憎しみの連鎖を断つ」という今のアメリカに必要なテーマを盛り込んでいるし、3DCGアニメの技術も完璧だ。

 北の海に浮かぶバーク島。ここで暮らすバイキングたちは長年、ドラゴンとの戦いを繰り広げていた。ヒックは鍛冶屋で修行中のひ弱な少年で、父親のストイックは村のリーダーだ。ある夜、ヒックは自分で作った投擲機で最強のドラゴンと言われるナイト・フューリーを打ち落とす。翌日、ヒックは森の中で傷ついたナイト・フューリーを見つけるが、殺すことができない。飛べないドラゴンのために羽根を作ったヒックはドラゴンと徐々に交流を深めていき、ドラゴンたちが村を襲うのは人間が攻撃してくるからであることを知る。

 戦いよりも相互理解という映画の訴えは真っ当すぎるほど真っ当だ。そして感動的である。見事なエンタテインメントであると同時にこうした主張を兼ね備えているのが良い。こういう映画を見た子どもたちは(そして大人たちも)戦いより平和の道を選ぶ人間になるのではないか、と思う。IMDBの評価は8.2。

2011/08/02(火)「エクスペンダブルズ」

 シルベスター・スタローンが監督主演を務め、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ミッキー・ロークらのアクションスターが勢揃いした作品。ゲスト的にブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーも出ている。アイデアは良かったのだが、なんせ1人でも映画の主演を張れるスターばかりだから、扱いには困ったのだろう。エクスペンダブルズ(消耗品部隊)側は誰も死なない。

 銃と爆薬が炸裂するクライマックス、弾切れなんか考慮してないよといわんばかりに銃を撃ちまくり、ナイフを投げまくる部隊を見ると、かつての脳天気なアクション映画が思い出される。アクションに関しては悪くないので、アクション映画の好きな人がぼんやり眺めるには良い作品かもしれない。

2011/08/02(火)「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2」

 第1作「賢者の石」が公開されたころ、「近所の石」と言っていた長男は今、高校1年なのだから、確かに10年は長い。10年間携わったスタッフにはご苦労様と言いたい。僕が劇場でこのシリーズを見たのは4作目まで。5作目と6作目はスルーした。子供が見に行こうとは言わなくなったからだ。4歳のころに第1作を見た次女などは「怖い」と言って、その後は見に行きたがらなかった。というわけでシリーズのファンではない。

 最終作は前作、Part1のラスト、ダンブルドアの墓からニワトコの杖を奪ったヴォルデモートの場面で幕を開ける。ヴォルデモートを倒すため分霊箱を探すハリーたちはその一つがホグワーツにあることを知る。そしてホグワーツでヴォルデモートの軍団たちとの最終決戦が繰り広げられる。

 物語を語る点でデヴィッド・イェーツの演出は的確だが、残念なことにドラマを盛り上げる演出が今一つのように思う。スネイプ(アラン・リックマン)の運命などもっとドラマティックにできたはずなのだ。ここは物語の大きなポイントでもあるのだから、余計にそう思う。