2018/05/10(木)amazonの転売屋にご注意

 東日本大震災のルポ「津波の霊たち 3・11 死と生の物語」(早川書房)がイギリスの文学賞「ラスボーンズ・フォリオ賞」(「ブッカー賞」に対抗して2013年に創設とのこと)を受賞した。著者は英紙タイムズの東京支局長リチャード・ロイド・パリー。この名前、聞き覚えがあるなと思ったら、ルーシー・ブラックマン事件を取り上げた秀逸なノンフィクション「黒い迷宮」の著者だった。そういうことなら、読まなくてはいけない。amazonを見てみると、2700円余りもする。しかもプライム対象ではなく、送料が260円ほどかかる……あれ?

 どうもおかしいと思ったら、amazonで検索して出てくるのは転売屋が出品している本なのだ。一時的に品切れになったので転売屋の本が表示されてしまうのだろう。問題は転売屋の本と正規ルートの本の見分けがamazonではつきにくいことだ。

 本は再販制度の対象なので、新刊に関しては小売店(書店)が高く売ったり、安く売ったりすることはできない。古本は再販制度の対象外なので、安くも高くも売ることができる。本来なら古本に分類されるべき本がamazonでは新品と表示されるのは罪が深い。間違って買ってしまう人も少なくないのではないか。amazonは自社で販売するページとマーケットプレイスの出品者が販売するページのデザインを明確に変えた方が良いだろう。

 楽天ブックスを見ると、「津波の霊たち」の正規の価格は1944円だった。


2018/04/28(土)10インチタブレットと読み放題サービス

 amazonのFire HD8がサイズ的に使い勝手が良いので、次に買うAndroidタブレットも8インチにしようと思っていたが、雑誌読み放題サービスの楽天マガジンに入ったら、雑誌を読むにはやっぱり画面が大きい方が良い。本は8インチ、雑誌は10インチがジャストサイズだと思う。ただしAndroidの10インチタブレットは選択肢が少ない。スパイウェアが入ってるとか、いろいろと良くない噂を聞く中国のメーカーを排除すると、日本のメーカーではNECぐらいで、価格競争力を考えると、台湾のASUSには勝てない。というわけでASUSのZenPad 10を買った。

 価格が2万円前後なので、いたって普通のタブレットだ。大きな満足もない代わりに不満もない。当たり前だが、amazonのFireタブレットでは使えないアプリが普通に使えるのが嬉しい。Fireタブレット用のアプリの場合、Radikoはエリアフリーに対応していないし、PanasonicのMedia Accessもないなど使えないアプリが多いのがストレスになるのだ。

 おっ、と思ったのはブルーライト軽減フィルターがあること。ブルーライトカット(Blue Shade)はamazonタブレットだけかと思っていた。Blue Shadeは画面が赤っぽくなるのに対して、これは少し黄色っぽくなる感じだ。あると便利なスクリーンミラーリング機能は設定の「無線とネットワーク」→「もっと見る」→「Play To」でできる。Panasonicの4Kテレビとすぐにつながった。

 amazonのタブレットには当然のことながら、楽天マガジンとdマガジンのアプリはない。まあ、ライバルのアプリには対応しないのでしょう(その割にNetflixやHuluなど動画配信サービスのアプリがあるのは不思議だ)。楽天マガジンは月額380円(年払いだと3600円)。200以上の雑誌が読めてこの価格なら、コストパフォーマンスが高いと思う。雑誌の記事すべてが読めるわけではない(読める雑誌もある)が、これで十分という感じ。普段なら絶対読まないであろう雑誌も定額なら読んでみようかという気になる。お陰で「TARZAN」が男性向けの健康雑誌であることを初めて知った。自分には関係ない雑誌と思って、これまで書店で手に取ることもなかったのだ。

 読み放題サービスの有用さが分かったのでamazonのKindle Unlimitedの30日間無料体験も始めてみた。これは個人的にはまるでダメだと思う。和書12万冊と言いながら、読みたい本がないのだ。ミステリー・サスペンス・ハードボイルドのジャンルを見ると、数が少ない上に有名作家の作品はまったくない。SFも同じ。投資・金融・会社経営ジャンルも同じ。このサービス、売れない本を少しでも活用するためのサービスなのではないかと思えてくる。これぐらいの品ぞろえで980円は高すぎる。Primeリーディングで十分だ。

 ASUS ZenPad 10のカバーはこれにした。

2016/06/18(土)118作品が200円

吉川英治全集 118巻合本版

 某ブログに「吉川英治全集・111作品」のKindle版へのアソシエイトリンクがあった。「三国志」や「宮本武蔵」など111作品がたったの200円。これは買わなきゃと思ったが、レビューに「新書太閤記」が途中までしか入っていないという指摘があった。「吉川英治全集 118巻合本版」には入っているという。7作品多いのに、これも同じ200円だ。どちらも40ポイント還元なので実質160円。なぜ、同じような全集が2つあるのか分からなかったが、とりあえず、こっちを1-Clickした。

 200円なのでポイントは使わなくても良かったのだが、1-Clickだと、ポイントで精算されてしまう。これだとポイントは付かないなと思ったら、なんとamazon、ポイントで払ってもポイントが付くのだった。驚くなあ。

 ところが、Kindleストアの吉川英治の作品の一覧を見ると、「三国志」も「宮本武蔵」も0円で販売(?)されていた。著作権が切れているので、0円でもおかしくはない。160ポイント払う必要さえなかったのだ。Kindle版の吉川英治作品は青空文庫のもので、収録作品の順番は青空文庫の作家別作品リスト:吉川 英治と同じだ。

 111作品は昨年12月発売で、118巻は今年3月発売。昨年12月には青空文庫への収録作業が111作品までで、その後追加された分をまとめて118巻として発売したのではないか。同じ全集に作品を追加すると、先に少ない方を買った人から不満が出るだろうから、別の本として発売したのだろう。同じような全集が2つあるのはそういう理由だと思う。青空文庫では収録作業中の吉川英治作品が62作品あり、そのうちこれを追加したKindle本も発売されるに違いない。

 合本だと、Kindleの中が散らからなくていいし、118冊を一気に検索できるというメリットはある。それにしてもamazonの価格の付け方は絶妙だなと思う。118作品が200円なら、よく調べないでポチる人は多いだろう。

【amazon】「吉川英治全集 118巻合本版」 「吉川英治全集・111作品⇒1冊

2016/06/04(土)キネマ旬報の定期購読料値下げ

 KINENOTEのメルマガで案内が来た。7月下旬号からのリニューアルに伴い、「学割を含む定期購読料を値下げ」するそうだ。以下のようになるとのこと。

●これまでの定期購読料金(税抜き)

半年(12冊)9,889円

1年(24冊)19,778円

2年(48冊)33,620円

3年(72冊)44,500円

学割(1年間のみ)15,822円

●これからの定期購読料金(税抜き)

半年(12冊)廃止

1年(24冊)18,360円

2年(48冊)32,640円

3年(72冊)42,840円

学割(1年間のみ)12,000円

 僕は毎年1年間の購読料金を払ってきたが、あらためて料金を見てみると、3年契約にした方が随分安い。キネ旬は1冊税込み918円。1年契約では現在1冊あたり891円。新料金は1冊あたり827円になるが、3年契約にすると、643円だ。これは3年契約にするしかないでしょう。

 キネ旬を最初に買ったのは40年ほど前で、その頃の価格は1冊500円だった。当時購読していた「ロードショー」(休刊した)より小さく薄い(記事量は多かったが)のに価格は100円か200円近く高かった記憶がある。新料金の学割は1冊あたり税込み540円になる。40年前と同じぐらいの価格設定というのは大盤振る舞いと言って良い。学生の皆さん、購読してください。といっても、学生にとって一度に1万2960円の支払いは安くないよなあ。

 キネ旬を毎号欠かさずに買うようになったのは1978年から。郵送で定期購読するようになって20年ほどになると思う。最近は定期購読者へのサービスが向上した気がする。先日は「午前十時の映画祭」のプログラムをもらったし、アンケートに答えて「表紙でふりかえるキネマ旬報」と「キネマ旬報ベスト・テン個人賞60年史1955-2014」をもらった。プレゼントに応募して5000円の図書カードが当たったこともある。プレゼントの当選確率が高いということは応募者が少ない=定期購読者もそんなに多くない、ということになるんだろうか。キネ旬に限らず、雑誌も本も売れない時代なので、値下げは少しでも購読者を増やすためなのだろう。

 気になるのは7月下旬号からのリニューアル。長い映画評の「読む映画」が5月下旬号で終わってしまってがっかりしたが、こういう軽い方向へのリニューアルは勘弁してほしいと思う。映画評はある程度長くないと面白くない。

2016/05/27(金)創刊60周年

 ミステリ・マガジンのこと。創刊は1956年7月号だそうで、2016年7月号で創刊60年になった。ミステリ・マガジンを毎号欠かさずに買うようになったのは1983年ごろからだから33年。半分強は読んでいることになる。といっても掲載されている短編はほとんど読まない。コラムと書評目的で毎号買っている。

 今号には過去に掲載したコラムが再録されていて、都筑道夫さんの「読ホリデイ」とか青木雨彦さんの「共犯関係」とか瀬戸川猛さんの「夢想の研究」とか懐かしくてたまらない。「読ホリデイ」はディーン・クーンツの「十二月の扉」を取り上げていて、クーンツとスティーブン・キングの比較に関しては今読んでもそのまま通じる。年月がたったからといって、通用しなくなるような批評は批評とは言えないのだ。

 懐かしいのはいいのだが、初掲載がいつなのか書かれていないのは残念。これはしっかり書いておいてくださいよ、早川書房さん。

 僕が購読し始めて間もないころ、ミステリ・マガジンは長編分載を始めた。その頃に読んで、文庫になってまた読んで、昨年新訳で再刊されてまたまた読んだのがマーガレット・ミラーの「まるで天使のような (創元推理文庫)」。ミステリ・マガジン掲載時に「パトリック、パトリック、オー・マイ・ゴッド、パトリック!」の場面で言いようのない感動を覚えた。昨年読み返した時にはこの場面の衝撃は分かっていたが、そこに至るまでの小説のうまさに感心させられた。この1作でミラーは夫のロス・マクドナルドの業績に匹敵すると思う。

 それにしても、ミステリ・マガジンが隔月刊なのは物足りない。そろそろ月刊に戻してはどうでしょうかね。