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2002年12月11日の記事

2002/12/11(水)「マイノリティ・リポート」

 別にののしるほどの悪い出来ではないのだが、ディックの原作を単なるミステリにしてしまったスピルバーグというのはいったい何を考えているのか、という感じである。ミステリとして新機軸はないうえに、舞台が未来でなくても成立する話である。未来を描くなら、少しぐらいSFマインドが欲しいところだった。

 かつてのスピルバーグなら、映像的にハタと膝を打つうまいシーンが一つぐらいあったものなのだが、この映画には感心した映像は皆無。年を取れば、人間、凡庸になる。それを地でいくようなスピルバーグなのである。

 2054年のワシントンD.C.が舞台。この時代、犯罪予防局が設置され、殺人は予知することで防げるようになっている。主任刑事のジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は3人の予知能力者(プレコグ)の見た映像を分析して未来殺人の容疑者を逮捕している。ある日、プレコグがジョンの殺人場面を予知する。見も知らない男を殺している映像を見たジョンは犯罪予防局から逃げ、事件の真相を探り始める。裏には誰かの陰謀があるようだ。

 ミステリでサスペンスだから当然のように、ヒッチコックの引用も目立つ(「海外特派員」とか)。しかし、犯人が分かった後の描写は極めて手際が悪い。ヒッチコックならば、映画の中盤で犯人を割ってしまい(謎解きなんぞに興味はないから)、そこからサスペンスをたっぷり見せてくれたが、この映画の場合、犯人が分かった後の描写というのは話に落とし前を付けるためだけのものである。カーティス・ハンソンの某作品と同じような構成であるにもかかわらず(犯人が分かるところなどほとんど同じである)、演出的には随分劣っている。元々の脚本がたとえ、こうであったにしても絶好調のころのスピルバーグならもう少し何とかしただろう。いや、映画を撮る前に脚本を手直ししたはずだ。

 スピルバーグは「ブレードランナー」あたりも意識したようで、未来社会は色彩が少ない暗い映像で綴られる。描写はどこかクラシックな雰囲気がある。ということはつまり、目新しい描写、イメージがないのだ。SFX自体は良くできていて、スパイダーと呼ばれる小型の探査ロボットなど面白い小道具だと思うけれど、ただそれだけのことである。なのに2時間25分。うーん、1時間50分程度の映画にしてもっとスピード感を付けるべきだったのではないか。巻き込まれ型のプロットというのは観客に考える暇を与えてはいけない。

 トム・クルーズは昨年の「バニラスカイ」と同じく、顔が醜くなる場面がある。上司役で名優マックス・フォン・シドウ。犯罪予防局の調査に来る司法省の役人に「ジャスティス」のコリン・ファレル。ファレルはブラッド・ピットを思わせる風貌で、「ジャスティス」よりは良かった。

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