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2003年11月07日の記事

2003/11/07(金)「アダプテーション」

 チャーリー・カウフマン脚本、スパイク・ジョーンズ監督の「マルコヴィッチの穴」コンビの新作。スーザン・オーリアンの「蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界」をカウフマンが脚色した。と、普通になるわけはなく、この原作の脚色(アダプテーション)の様子を取り入れたメタフィクションである。主人公のカウフマンをニコラス・ケイジが演じる。デブで禿げという設定だが、実際のカウフマンはそうではないようだ。

 脚本家の苦悩を普通に描けばジュンブンガクになってしまうが、不眠症になったり、女友達とうまくいかなかったり、対照的な双子の弟のドナルド・カウフマン(ニコラス・ケイジ二役)のサスペンス映画の脚本が先に売れたりする様子を面白おかしく描いていく。ラスト近くはサスペンス調になるのが、娯楽映画らしくて良い。

 現実のように見せかけたフィクションと本の中の話が交錯する物語は小説ではそれほど珍しくはない。映画では少ないだろうが、「マルコヴィッチの穴」ほど斬新なアイデアとは言えず、ケイジのほか、クリス・クーパー(アカデミー助演男優賞)、メリル・ストリープ(同助演女優賞ノミネート)の演技に助けられた部分が大きいと思う。

 今回はSF的なアイデアの発展がないのが残念なところ。双子の弟が実はカウフマンの妄想であったとか、そんな展開になると面白かったと思う。多重人格に絡むセリフがあるので、そういう展開もカウフマンは考えたのではないか。ニコラス・ケイジは主演男優賞にノミネートされて結局、取れなかったが、儲け役のクリス・クーパーよりも二役を明確に演じ分けてうまい。