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2004年09月17日の記事

2004/09/17(金)「スウィングガールズ」

 「スウィングガールズ」チラシ「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督がビッグバンドジャズに打ち込む女子高生たちを描いた青春映画。シンクロをジャズに替えただけと言われそうだが、それでも面白い。ジャズの演奏は出演者たちが猛練習して吹き替えなしだそうで、だんだん楽器の音が出ていくあたりにリアリティがある。元気で溌剌過ぎてトラブルメーカーの主人公をはじめ、漫画みたいなキャラクターの造型に優れており、細かいギャグのセンスも抜群。ゲラゲラ笑って見終わる気持ちの良い映画である。設定からして、どういう映画になるかはほぼ予想がつくのだが、それでも面白く見せる技術は大したものだと思う。悪意を持つ人物が出てこない点、ズッコケたキャラクターばかりな点、細部まで手を抜かない点に矢口脚本の大衆受けする理由があるように思う。ただ、ジャズを扱っていても音楽映画にはならず、あくまでも青春コメディ。そのあたりは「ウォーターボーイズ」と同様で、物足りないと言えば物足りないのだが、素人がジャズに挑戦する話なのだから、バランスを考えれば、こういう仕上がりでいいのだろう。

 なぜ、女子高生がジャズをやることになったのかという説明がうまい。東北のある高校。夏休みの補習授業中、吹奏楽部が野球部の応援にいくのをぼんやり見ていた友子(上野樹里)は、遅れてやってきた弁当店を見て、「弁当届けよう」と提案する。補習授業を抜け出すのが目的で、十数人で列車で追いかけるが、途中、弁当1個を食べてしまう。おまけに居眠りして駅を乗り過ごしたため、炎天下、歩いて球場に向かう羽目に。このため、届けた弁当は腐っており、食べた吹奏楽部の生徒と顧問の先生が食中毒でダウン。ただ一人弁当を食べられなかった拓雄(平岡祐太)だけが食中毒を免れる。野球部の試合はまだあるので、責任を感じた(というか、補習を受けない理由のために)友子たちが拓雄の依頼を引き受けて、猛練習に励むことになる。ジャズの魅力も分かって、さあ試合というところで、吹奏楽部の面々が復帰。友子たちはお役ご免となる。吹奏楽部の前では強がりを言っていた友子たちが外に出た途端号泣するのが微笑ましい。ジャズの魅力を知ってしまった友子は買ったのにほとんど使っていなかったiMacを売って、中古のサキソフォンを購入。拓雄をはじめ、スウィングガールズの面々も再結集し、ジャズに詳しい(と思えた)数学教師・小澤(竹中直人)の指導で練習に打ち込むことになる。そして演奏会を目指す。

 吹奏楽部は最低24人必要だが、ビッグバンドジャズなら17人でできるというのがジャズを始める理由で、このあたりの脚本の配慮に手抜かりがない。演奏されるジャズは「ムーンライト・セレナーデ」「イン・ザ・ムード」「A列車で行こう」など耳になじんだ有名な曲ばかり。このほか、大イノシシ退治の場面で「この素晴らしき世界」が流れる(ここはホントに漫画チック)。上野、平岡の2人に加えて貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨の主要メンバーがそれぞれに面白く、キャラクターをきっちり描き分けてある。他のスウィングガールズや脇役の木野花、大倉孝二、白石美帆、徳井優、田中要次、渡辺えり子もうまい。頼りない兄弟デュオの真島秀和、三上真史が失恋の歌をデュエットする場面などは爆笑ものである。その失恋相手のヤンキーな関根香菜、水田芙美子まで含めて、この映画、本当にキャラクターの描き分け、キャラの立たせ方が絶妙だと思う。

2004/09/17(金)「バイオハザードII アポカリプス」

 ミラ・ジョヴォヴィッチ前作のラスト、目覚めたアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)が荒れ果てた街を目にする場面から始まるのかと思ったら、映画はそれより少し前、アンブレラ社の地下研究所ハイブに完全装備の特殊部隊が入っていくところから始まる。案の定、それによってアンデッド(ゾンビ)たちが地上にあふれ出てきて、ラクーンシティはパニック状態、人々は次々にアンデッドになっていく。そこでアリスが目覚める場面へとつながる。アリスが目覚めた理由は実は、というのが映画の中心主題で、今回はアンデッドは少し背景に退き、アンブレラ社が行っていたT-ウィルスの研究とそれによって生まれたモンスター、その目的が明らかになっていく。前作よりSF度は増しており、これはゾンビ映画というよりもSFアクション。B級テイストたっぷりの出来の良いノンストップアクションである。

 ポール・W・S・アンダーソンからバトンタッチした監督デビューのアレクサンダー・ウィットはスピーディーな演出で物語を語っていく。その反動か、喜怒哀楽の感情描写はどこかに置き忘れたようだが、アクション中心なのだから、それほどの不満は感じない。ビジュアルな題材をビジュアルに撮ることに徹して、ウィットは十分な演出を見せている。

 バレンタイン役のシエンナ・ギロリー前作はアンデッドに汚染されたハイブからの脱出を描くサバイバルものだったが、今回も核兵器によって消滅させられるラクーンシティからの脱出がメインプロットとなる。アリスやバレンタインたちはT-ウィルスを開発したアシュフォード博士(ジャレッド・ハリス)の依頼で、脱出路を教えてもらう代わりにシティで行方不明となった娘アンジェラ(ソフィー・ヴァヴァサー)を助けることになる。シティにはアンデッドのほか、T-ウィルスに感染してモンスター化した犬ケルベロスや生物兵器のネメシスがアリスたちの前に立ちはだかる。果たしてアリスたちは脱出できるのか。

 SF度を増したのはアリスの設定で、前作では普通の人間だったが、今回は超常能力を持つスーパーヒロインとなっている。この能力を得た秘密が物語と関わっており、ネメシスの正体もまたそうである。腕のある監督なら、このあたりの悲劇性をもっと前面に出したはずで、その点がウィット演出の弱いところではある。また、アクション場面でカットを割りすぎるきらいがある。ジョヴォヴィッチにハードアクションが(たぶん)できないのだろうが、もっとじっくり見せてくれと言いたくなる。

 注目すべきは今回初登場のジル・バレンタイン役シエンナ・ギロリーの抜群のカッコよさ。ゲームからそのまま出てきたような髪型、スタイル、コスチューム、身のこなしでアクションをこなし、ジョヴォヴィッチに負けない魅力を放つ(「ラブ・アクチュアリー」にも出ているそうだ)。この2人、ともにいかつい顔つきが似ていて、ひたすらクール。この2人が出るのなら、当然作られるであろう3作目にも期待を抱かせる。