2011/05/29(日)「無法松の一生」

 所々で激しく胸を揺さぶられる。日本人の感性にぴったりの作品と言うほかない。陸軍大尉の未亡人(高峰秀子)とその息子を一途に支え続ける車引きの松五郎(三船敏郎)のあまりにも有名な話。松五郎は献身的に尽くすが、身分の違いをわきまえて、未亡人への慕情を表に出すことはない。それがついに押さえきれなくなったクライマックス、松五郎は「俺の心は汚い。奥さんにすまん」と絞り出すように言う。

 稲垣浩監督は1943年に阪東妻三郎主演で映画化したが、軍の検閲によってカットされ、不完全なまま上映せざるを得なかった。15年後にリメイクしたこの作品はベネチア映画祭金獅子賞を受賞した。日本的な話だが、国境を越えて共感を呼ぶ映画なのだなと思う。キネ旬ベストテン7位。

2011/05/16(月)「十一人の侍」

 1967年の作品。西村晃が「十三人の刺客」に続いて剣の達人を演じる。クライマックス、豪雨の中での死闘は「大殺陣」の殺陣より見応えがある。ここで夏八木勲と大友柳太郎の1対1の決闘を描くのは集団だけを描いた「大殺陣」の反省に立ったからか。

 ストーリーもシンプルな仇討ちで分かりやすいのだが、「忠臣蔵」と「十三人の刺客」を合わせたような作りになっていることが減点対象。そういう意味で革新的な部分はないのだけれど、これはプログラムピクチャーとして間違ったあり方ではないだろう。暴君の松平斉厚を演じる菅貫太郎を含めて役者たちも好演している。なお、「大殺陣」と「十一人の侍」はビデオはあるが、DVDは出ていない。

2011/05/14(土)「左ききの狙撃者 東京湾」

 1962年の野村芳太郎監督作品。DVDは出ていないようなので、書いておくと、これすごい傑作です←オーバー(^^ゞ

 WOWOWのストーリー要約を引用すると、「麻薬密売組織に潜入捜査を行っていた麻薬取締官が何者かに射殺され、死体の状況から犯人は左利きであることが判明。捜査一課のベテラン刑事・澄川は、まだ若手の刑事で妹の恋人でもある秋根とコンビを組んで、捜査に当たることになる。組織の一員と思しき武山をマークして尾行するさなか、澄川は、旧友の井上と10年ぶりに再会。井上は、かつて戦場で彼の命を危うく救ってくれた命の恩人で、左利きの優秀な狙撃兵でもあった」ということになる。井上が狙撃者であるわけだが、この映画が面白いのは井上の境遇が明らかになる後半だ。

 戦争から故郷の尾道に帰った井上は女に3人失敗し、東京に出てくる。妻と2人で東京湾に続く川のほとりでボート屋を営んでいる。今の妻は少し知的障害があり、井上がいないと買い物もできない。しかし、純粋に一途に井上を愛している。尾道に行くと言って家を出た井上を待ち続ける笑顔が切ない。

 脚本は松山善三と多賀祥介。上映時間は1時間24分。シャープで切れ味の鋭いドラマ。今のだらだらと2時間以上もある映画よりずっと知的な展開だ。刑事澄川役に西村晃、井上役に玉川伊佐男。

2011/05/14(土)「大魔神」

 WOWOWの放送画質のきれいさが意外だった。これはブルーレイが出ているのだろうと思ったら、やっぱり3部作を収録したブルーレイボックスが発売されていた。しかし、買うならこのボックスよりも平成ガメラのブルーレイボックスの方だろう。

 監督が座頭市シリーズの安田公義なので、時代劇の作劇はきわめて真っ当。謀反を起こした家老が領主を殺し、領民たちを圧政で苦しめる。10年後、生き残った領主の子である兄妹が家老を倒そうとする。家臣たちが山にある武神像を壊そうとしたことで怒った大魔神が姿を現す。

 大魔神の設定と特撮にあまり魅力を感じない。怪獣映画の主役はあくまで怪獣であり、怪獣のキャラクターが重要だと思う。大魔神には神としてのキャラクターしかないのが今ひとつ、面白みに欠ける理由なのだろう。家老を倒しても怒りが収まらない大魔神が罪のない領民も殺してしまうという趣向は良いのだから、これをもっと推し進めた方が良かった。付け加えておくと、この映画、作りがしっかりしているので冷笑とは無縁の作品になっている。

 Wikipediaの大魔神の項目はとても詳しい。熱心な特撮映画ファンは多いのだ。

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