2000/10/25(水)「五条霊戦記」

 後の源義経である遮那王(浅野忠信)が高僧の阿闍梨(勅使河原三郎)を一刀両断する場面を見るまで、僕はこの映画を従来の弁慶と牛若丸の話と信じて疑わなかった。だから前半がかったるかった。どうせ、君らは今は対立していてもすぐに仲間になるんでしょうが、と思っていたのだ。しかし、映画は両親を殺され鬼となった遮那王と、お告げで鬼を倒すことに全精力を傾ける弁慶(隆大介)の対決をクライマックスに持ってくる。この2人は決して仲間にも主人と臣下の関係にもならず、対決すべき好敵手としてのみ描かれるのだった。

 そしてここでは、はっきりと遮那王は悪である。それを討とうとする平家も悪で、弁慶のみが乱れた世を救う善を体現しているのだった。アイデアは悪くないと思う。だが、映画化の技術が伴っていない。殺陣の見せ方、キャラクターの描き分け、画面の構成などに雑な部分が目に付く。陰々滅々とした一本調子の話は鬱陶しく、おまけに2時間17分は長すぎる。

 快作「さくや妖怪伝」の対極にある重い作りは残念だ。2人の対決を見届ける鉄吉(永瀬正敏)の使い方が一つのポイントだったように思う。もっとこの人物を軽妙に演出していれば、何とかなったかも知れない。石井聰亙監督に必要なのはそうした軽妙な演出なのだろう。