2001/04/03(火)「ミート・ザ・ペアレンツ」

 ベン・スティラーが結婚を決めた彼女の両親に会いに行く話。根は善人なのにやることがすべて裏目に出るというタイプなのか、あるいはたまたまその日が最悪の運に見舞われたのか、遺灰の入った壺を割り、家を焼きそうになり、彼女の妹の目にアザを作りと、最悪の展開となる。

 ゲラゲラ笑って見られる映画なのだが、どうも脚本が雑である。テレビのコメディを見ているような感じ。

 監督は「オースティン・パワーズ」「オースティン・パワーズ デラックス」のジェイ・ローチ。父親を演じるロバート・デ・ニーロは怖くてどこか怪しげな役をうまく演じているし、スティラーもその彼女のテリー・ポロも悪くはないのだけれど、この脚本ではね。とりあえずのつじつま合わせのレベルで、見ていて

納得いかない。ギャグを散りばめるのはけっこうだが、その場限りの笑いよりは全体の統一を図った方が良かった。

2001/03/28(水)「ザ・セル」

 ジェニファー・ロペス主演のサイコ・サスペンス。シリアル・キラーに誘拐された女性の居場所を探すため、小児科医(ロペス)が昏睡状態の犯人の精神世界に入っていく。そこで繰り広げられるイメージが見どころ。かなり気色の悪い場面もあるのだが、なかなか面白い出来と思う。

 「マトリックス」によく似たアイデア。あちらはサイバー・スペース、こちらは人間の脳の中だから、こちらの方がじめじめして荒廃している。中で死ねば、現実世界でも死んでしまうというのは「マトリックス」と同じだ。

 スタイル抜群のロペスがよろしいし、映画の展開も結末もまともである。CM出身のターセム監督のイメージの造形は見事。奇抜な衣装を担当したのは「ドラキュラ」でアカデミー賞受賞の石岡瑛子。これも見事。

2001/03/21(水)「プルーフ・オブ・ライフ」

 南米の某国でアメリカの技術者(デヴィッド・モース)が反政府ゲリラから誘拐される。その妻メグ・ライアンとプロの交渉人ラッセル・クロウが誘拐交渉に当たる。クロウは会社から派遣されたのだが、会社は保険料を払っていなかったことが分かり、途中で帰国。しかし、再び戻り、仲間とともにゲリラの本拠地を襲撃。見事、夫を救い出す。

 いったん交渉をやめたクロウがなぜ帰ってくるのか、あいまいである。メグ・ライアンに同情したのだろうが、これは人間的には納得してもプロとしてはあるまじき行為だろう。そういう男が優秀な交渉人であるはずはない。プロはビジネスで動くのが本筋。この誘拐交渉に成功してもなんら報酬はないのに命をかけますか。

 物語の根幹にかかわる部分だけに気になる。こんなことなら途中で帰国する設定などない方が良かった。人道的な理由からであるなら、もっとそこを重点的に描く必要があった。テイラー・ハックフォード、何をやっておるのか。

 導入部のチェチェンでのスピーディーな展開を見て、期待できるかと思ったが、全体的にどうも演出が緩い。クロウと息子との場面など後に少しも生きてこず、不要である。メグ・ライアンとラッセル・クロウはいいんですけどね。

2001/03/15(木)「スナッチ」

 ガイ・リッチーの前作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」は見ていないが、映画のタッチは同じようなものらしい。ロンドンを舞台にしたダイヤモンドを巡る争奪戦。主要登場人物だけで14人もいる。それを細かいカット割りと編集でスピーディーに描写していく。いちおう主人公はいるが、狂言回し的役柄であまり大きな比重は置かれていない。

 この編集はさてはと思ったら、やはりガイ・リッチー、CMとミュージック・ビデオの監督の経験がある。短いカットをポンポン入れていくのがいかにもミュージック・ビデオ風である。登場人物のキャラと行動がどれもおかしく、楽しく見させてもらったが、内容もミュージック・ビデオそのままに軽く、印象が薄くなる。利点と欠点が同居している作風である。

 役者はブラッド・ピットを除くと、地味なメンバー。ブラッド・ピットが薄汚れた感じのボクサー(発音が悪く、言葉がよく聞き取れないというキャラ)を演じており、「ファイト・クラブ」を彷彿させる。

2001/03/07(水)「バガー・ヴァンスの伝説」

 映画を見る前にざっとあらすじを読んで、ああ、これは「ナチュラル」(1984年)だな、と想像した。バリー・レビンソン監督、ロバート・レッドフォード主演のこの映画は野球の天才打者が不運な事故に見舞われ、そこから奇跡的な再起を果たす話だった。キム・ベイシンガーが主人公を堕落させる悪女、主人公を支え続ける幼なじみをグレン・クローズが演じた。ファンタスティックな雰囲気が素敵な映画だった。

 「バガー・ヴァンスの伝説」は戦争で精神的ショックを受けたゴルファーのジュナ(マット・デイモン)が酔いどれ生活から再起を果たす話。不思議なアドバイスをするキャディーのバガー・ヴァンスに出会い、恋人アデル(シャーリズ・セロン)の支えも得て、エキシビジョン・マッチでトッププロ2人に挑む。

 プロットは「ナチュラル」とほとんど同じ趣向である。古き良き時代を背景にしているのも同じ。レッドフォード監督はこういう話が好きなのだろう。かつて自分が演じた役をデイモンに演じさせているわけだ。ただし、出来の方は「ナチュラル」の方が上回る。

 「ナチュラル」は善と悪の力に翻弄されながらも自分の道を迷わず突き進む主人公がよく描けていたし、映画に透明で郷愁を誘う雰囲気があった。ラスト、主人公が特大のホームランを放ち、ライトが砕けて花火のように飛び散る描写も素晴らしかった。

 「バガー・ヴァンスの伝説」はエキシビジョン・マッチの模様が中心になり、構成としてはやや単調であまりうまくないのである。ラストの処理も「ナチュラル」に比べると地味だ。バガー・ヴァンスの役回りは守護天使のようなニュアンスをもっと出した方が良かったと思う。

 断然いいのはシャーリズ・セロン。勝ち気で快活な富豪の娘役を演じ、魅力が弾けていますね。