2001/03/19(月)「サトラレ」

 「踊る大捜査線 The Movie」の本広克行監督の快作。周囲に思念波を放射するサトラレの青年(安藤政信)とそれを保護する特能保全委員会から派遣された精神科医(鈴木京香)の交流がスラップスティック調を交えながらさわやかに描かれる。

 冒頭の飛行機墜落→自衛隊出動→サトラレ発見の場面は導入部として優れた迫力とスピード感(SFXは白組が担当)。周囲の人間も協力し、24時間の厳戒態勢でサトラレが保護されているという突飛な設定を無理なく嫌みなく描いている。鈴木京香は主人公より年上の設定を逆手にとって(初対面の主人公から「けっこう年いってるな」と思念を放射されて、ムッとする)、コミカルな味を見せ、好感が持てる。安藤政信も「バトル・ロワイアル」とは打って変わって素直な好青年を演じている。

 物語は医者としての主人公の生き方をクライマックスに持ってくる。一般的にはこれが当然だろうが、SFとしては肝心のサトラレの能力があまり生かされないし、クライマックスのくどさにはちょっと辟易させられる。しかし、全体としてはよく出来ているといっていい。本広克行は昨年の「スペーストラベラーズ」の汚名を返上したようだ。エンタテインメントに徹した姿勢がいい。

2001/03/11(日)「ワンピース ねじまき島の冒険」

 ビデオクリップのような「ジャンゴのダンスカーニバル」、昨年春の劇場版の続編「デジモン・アドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲」との3本立て。もちろんメインは「ワンピース」で、東京でも興行収益1位となっている。

 「ワンピース」のストーリーというのは以前にも書いたが、正義、友情、義理、人情の世界である。積もり積もった怒りが最後に爆発し、悪を倒すというパターン。今回はトランプ兄弟という海賊に支配されたねじまき島でルフィ、サンジ、ゾロ、ナミ、ウソップらの面々がいつも通りの活躍をする。安心して見ていられる仕上がりで、作画もテレビより丁寧。映画だから、テレビより面白いものを作ろうという肩肘張った部分はなく、テレビの延長として素直に楽しむ映画だろう。

2001/03/01(木)「BROTHER」

 日英合作で、撮影はハリウッド。しかし、北野武の映画であることに変わりはない。アクション路線の集大成を目指したようで、いかにも北野武らしいショットが多数出てくる。デビュー作「その男、凶暴につき」(89年)とその後の数作を見て、どれも未完成な感じを受けた。だから僕は映画監督としての北野武をそれほど高く評価してはいない。唯一波長があったのが「あの夏、いちばん静かな海。」(91年)だけれど、これにも未完成な感じはつきまとった。

 その「あの夏…」に出ていた真木蔵人が10年ぶりに北野作品に出演している。日本を追われたヤクザ山本(ビートたけし)が単身渡米する。ロサンゼルスには弟のケン(真木蔵人)がおり、ヤクの売人をやっている。上部組織とのいざこざを山本が乱暴なやり方ですっきり解決。黒人らと組織を作り、次第にのし上がっていく。しかし、マフィアとの抗争で仲間は次々に死んでいく。

 ヤクザ映画の指を詰めるシーンが僕は生理的にダメなのだが、この映画にはそういうシーンが3回出てくる。「仁義なき戦い」を経た映画とは思えない古風なシーンも皮肉を込めて描かれている。ハリウッド方式の凄絶な銃撃シーンはジョン・ウーとは違った重さが感じられる。いや重さというと、少し違うかもしれない。熱いジョン・ウーの映画に比べて、北野武の映画はいつも冷たい感じがするのである。この冷たさはクールとも違う。決してかっこよくはない。僕が北野映画に感じてきた未完成な感じは、フィルムから受けるこの冷たさによるものなのだろう。それは恐らく、監督の死生観と切り離せないものである。

 今回、面白かったのは冷たい描写に挟まれる軽妙な描写で、デニー(オマー・エプス)と山本のやりとりや、山本の弟分である加藤(寺島進)のバスケットボールの場面などおかしい。クスクス笑える場面がほかにもいくつかあり、そうしたことが映画に膨らみを与えている。役者では加藤雅也の熱い乱暴なヤクザが良かった。