2004/12/13(月)「レディ・ジョーカー」

 「レディ・ジョーカー」チラシ「グリコ・森永事件」を基にした高村薫の原作を平山秀幸監督が映画化。脚本は鄭義信(チョン・ウィシン)。「愛を乞うひと」「OUT」に続くこのコンビの第3作なのだから期待したのだが、完成した映画はがっかりさせられる出来だった。犯人グループ5人のそれぞれの犯行の動機の描き方が希薄で、物語に説得力がない。これが一番の敗因と思う。平山監督はパンフレットで「(原作の)全体から浮かび上がってくるのは、すきま風だらけの日本の現状です」と言っている。だからといって、すきま風だらけの映画にすることはなかった。僕はなんとなく「新幹線大爆破」を思い出しながら映画を見たが、「新幹線…」にあった犯人たちの切実さがこの映画からは感じられなかった。登場人物の多い原作だから、その中の誰に焦点を当てるかによっても映画の印象は変わってくる。誘拐される社長か、犯人か、合田刑事か。それを単に均等に描いていったのでは映画は面白くならない。どれかに重点を置いた方が良かっただろう。そうしなければ、こうした原作ものによくある原作のダイジェストにしかならないのは自明のことだ。脚本の段階でもう少し詰めが必要だったのだと思う。

 昭和22年、日の出ビールを解雇された物井清二が故郷の青森に帰ってくる場面で映画は始まる。清二は被差別部落出身者とともに不当解雇された。弟の清三は兄が日の出ビールに批判の手紙を出すのを見る。そして現代。清三(渡哲也)は東京で薬局を経営しながら一人暮らし。兄は特別養護老人ホームに入っており、やがて死ぬ。その5カ月前、清三の孫は日の出ビールの入社試験に落ちた後、バイク事故で死亡する。ここが重要なのだが、なぜ清三が競馬仲間4人と共謀して日の出ビールを恐喝するのかがよく伝わってこない。レディ・ジョーカーと名乗る犯人グループの5人はそれぞれに事情があるらしいが、それがはっきり見えないのである。レディとは犯人グループの1人、布川(大杉漣)の重度障害を抱えた娘。布川は自分の境遇を「ババを引かされたようなものだ」と自嘲的に言うが、企業恐喝に向かう理由は見あたらない。同じく刑事でありながら犯行に加わる半田(吉川晃司)についてもその理由は明確ではない。

 加えて、犯行の描き方も不十分で、最初の日の出ビール社長(長塚京三)の誘拐はいいとしても、その後の恐喝の描写がきわめて物足りない。ビールに毒物を入れることをにおわせただけで、企業が20億円もの金を払うのかどうか。犯人グループの日の出ビールに対する明確な優位性をアピールする場面がほしかったところだ。

 平山監督は「これは被差別側が、差別する側に対する復讐劇ですよね」と言ったら、高村薫に「違う」と言われたそうだ。確かに原作は社会の闇を含めてもっと幅が広いけれど、映画にするのならそういう風な単純な映画化もありだなと思う。原作のすべての要素を入れることは無理なのだから、一面的と言われようが、筋の通った映画にした方が良かった。いや、少なくともわかりやすさを捨てて、原作に近づこうとした平山監督と鄭義信の努力は買うべきなのかもしれない。不幸なことにそれが実を結んでいないのだ。

 合田刑事役の徳重聡はやや弱いのだが、渡哲也、長塚京三、大杉漣、松重豊、吉川晃司、吹越満、國村隼、岸部一徳らがことごとく重みのある演技をしている。特に吉川晃司はすさんだ感じがいい。こうしたうまい役者をそろえながら、描写が表面的なもので終わってしまったことが惜しまれる。映画に核がないのである。

2004/12/12(日) ビデオ編集

 子供のピアノ発表会をデジタルビデオに撮り、Premiere Proで編集してみる。パソコンへの取り込みはDVgate Plusで行ったが、最初からPremiereでもいいのだろう。シーンごとに分割されたAVIファイルをPremiereに読み込み、シーンごとにカットしたり、字幕を入れたり。面白いですねえ。シーンの変わり目にワイプやクロスディゾルブや暗転を入れると、本格的なビデオに見えてくる。

 これをClick to DVDの形式に書き出して、レンダリング&書き込み。CPU3.8GHzとはいってもMPEG2へのエンコードにはやはり時間がかかる。12分程度の作品だが、取り込み、編集、DVD作成まで2時間ほどかかった。Premiereはさすがにプロ仕様なので、いろんなことができる。ビデオ編集は面白くて、はまってしまいますね。

2004/12/11(土)「山猫は眠らない2 狙撃手の掟」

 ルイス・ロッサのあの傑作から9年ぶりの続編。トム・ベレンジャーが50歳を過ぎた狙撃手トーマス・ベケットを演じる。バルカン半島でイスラム教徒抹殺作戦を行っている将軍の暗殺にかり出されたベケットが元エリート狙撃手で死刑囚のコール(ボキーム・ウッドバイン)とともに任務に就く。しかし、作戦の裏には別の作戦があった。

 クライマックスは廃墟での敵の狙撃手との戦いになり、悪くない設定なのだが、どうも味が薄い。IMDBで調べたら、TVムービーとのこと。監督はクレイグ・R・バクスレー。原題はSniper2。

2004/12/08(水)「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」

 「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」パンフレットクラシックなスタイルの巨大ロボットがニューヨークの街中を地響きを立てながら行進する。そういうビジュアルな面では申し分ない。いや、良くできていると思う。羽ばたきながら飛ぶ飛行機とか、空中に浮かぶ巨大基地とか、後半に登場する恐竜のいる島の描写も優れている(キングコングが出てくれば、もっと良かった)。監督デビューのケリー・コンラン、かつてのSF映画や1930年代から40年代の映画に強く影響を受けているという。その通り、これはマニアが作ったことが一目で分かるビジュアルである。紗のかかった映像がレトロ感を煽るし、主演のジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウのファッションもキャラクターも設定した時代によく合っている。しかし、話もクラシックにすることはなかった。古いSF映画そのままのストーリーでは、最新のVFXを使っているのにもったいない。こういう描写の映画として当然行き着くところの話に終わっていて、よくまとまっているけれども、新鮮さや驚きがなく、物足りないのである。ビジュアルが満点とすれば、話の方は60点程度。外見だけでなく中身にも凝ってほしかったところだ。

 1939年のニューヨークが舞台。突然、巨大なロボットが多数、飛来してくる。科学者失踪事件の取材をしていたクロニクル紙の記者ポリー・パーキンス(グウィネス・パルトロウ)はロボットに遭遇し、必死に写真を撮る。空軍はエースパイロットであるスカイキャプテンことジョー・サリバンに助けを求める。現場に急行したジョーは巧みな操縦技術でロボットを食い止め、街の危機を救う。科学者失踪事件と巨大ロボットの間には関連があるらしい。かつて恋人だったジョーとポリーは事件を捜査し、背後にドイツ人の科学者トーテンコフ博士がいることが分かってくる。ロボットによって空軍基地が襲われ、ジョーの助手で天才技師のデックス(ジョヴァンニ・リビシ)が連れ去られる。デックスの残した地図からトーテンコフ博士がネパールにいることが分かり、ジョーとポリーはネパールに向かう。そしてトーテンコフ博士が「明日の世界計画」と呼ばれるプロジェクトを進行させていることを知る。

 ジュード・ロウはハンサムなのでこうした冒険活劇にぴったりのように思えるのだが、この人、陰を引きずった部分があるので、ユーモアの部分が弾けにくい。グウィネス・パルトロウは活発な美人記者役に徹していて悪くない。ゲスト出演的なアンジェリーナ・ジョリーも空の要塞を指揮する隻眼の女艦長を好演。監督も出演者も映画を楽しんで作った感じがあり、それが好感度につながっている。

 映画の元になったのはコンランが1人で4年かけてパソコンで作った6分間の短編という。コンラン、オタクな人なのだと思う。そうしたオタクがまず外観を真似ることから始めるように、この映画の外観もかつての映画のイメージで組み立てられている。急いで付け加えると、外観は似ていても、そのアレンジはオリジナリティにあふれており、コンランが作るイメージには一見の価値がある。コンランの次作はエドガー・ライス・バロウズの「火星のプリンセス」。これまたコンランにぴったりのクラシックな題材に思えるが、脚本まで1人で担当するのではなく、強力な助っ人を頼んだ方がいいのではないかと思う。

2004/12/06(月) 液晶保護フィルター

 DVDメディアを買いにパソコンショップに寄った。液晶保護フィルターの棚を見ていたら、何となく買いたくなったので1年ぶりに買い換える。Arvel製のLSF170L。前回、別のメーカーの薄いタイプを買ったら、案の定、貼る時にうまくいかず、隅の方が少し浮いた。で、今回は厚さ0.8ミリのやつにした。これぐらい厚みがあると、まず失敗しない。貼るといっても、四隅に透明テープを貼るだけ。だからしっかり固定はできないし、激しく動かすと外れそうだが、ディスプレイはそんなに動かすものではないからいいでしょう。

 前の製品よりも光沢感は上々。DVDを見ると、きれいに感じる。これまで貼っていたフィルターをよく見ると、相当汚れている。1年もたつと、汚れるものですねえ。

Nvu 1.0ベータ

 このページ、今朝はなかなかつながらなかった。Mozillaから生まれたWebオーサリングソフト「Nvu」のベータ版が公開を読んで、あれ0.6しかないぞと思ったら、0.6が1.0ベータだったわけですね。

 Nvuは以前のバージョンを使ったことがあるが、保存するたびに改行が増えて使い物にならなかった。今回は大丈夫みたいだ。ただ、日本語版ではないので、設定でReformat Html Sourceを選ぶと、不要なところで改行してしまう。Retain Original Source Formattingを選んでおいた方がいい。1.0のリリースは来年3月らしい。英語でも操作は分かるけれど、日本語化を期待。

瞬間PDF

 ベクターで12月12日までは2,352円と書いてあったので衝動的にダウンロード。パスワードなどセキュリティの設定と、PDFのタイトルや作成者の名前などが記入できるのがメリットだが、ほかはフリーソフトでもできることばかり。ま、分割・結合はフリーソフトより簡単か。

 出来上がるPDFの品質はまずまず。ただ、一太郎の文字罫線は出力されない。ソースネクストのいきなりPDFでもきれいには出力されないが、これはまったく出ない。無料のAdobeのpostscriptプリンタドライバとGhostscriptを使えば、きれいに出力されるのに、これでは製品版の名前が泣きます。