2011/05/16(月)「パリより愛をこめて」

 ノンストップのアクション。ただし、この話、1時間を過ぎたあたりの展開を序盤に持って来た方が良かった。初めの方の展開はノンストップではあっても謎が物足りないのだ。情緒を描く暇もない。昨年、サイモン・カーニック「ノンストップ!」という小説が面白かったけれど、あれを見習って欲しい。ただ、アクションに関しては十分、水準は行っている。トラボルタは敵を殺しすぎだけど。監督は「96時間」のピエール・モレル。主演はジョナサン・リース=マイヤーズ。

2011/05/16(月)「トゥルー・グリット」

 チャールズ・ポーティスの原作を半分ぐらいまで読んだところで見た。冒頭のナレーションは原作の書き出しと同じ。それにかぶせてマッティ・ロスの父親の死体と逃亡する馬を見せるのがうまい省略の仕方だ。冬の西部の風景が美しく、コーエン兄弟は的確な画面設計と描写でストーリーを語っていく。画面に格調の高さがあり、正統派の西部劇といった感じに仕上がっている。今年のアカデミー賞では無冠に終わったが、せめて撮影賞は人工的な「インセプション」ではなく、この映画の方が良かったと思う。

 飲んだくれの連邦保安官ルースター・コグバーンを演じるジェフ・ブリッジスはセリフ回しなど、ちょっと作りすぎかなと思えるが、まず好演と言って良いだろう。ちなみに原作でアイパッチをしているのは左目だが、映画では右目になっている。主演のヘイリー・スタインフェルドはこれが映画デビューとは思えない。芯の強い少女をしっかりと演じている。トゥルー・グリット(本当の勇気)はこの少女を指しているのだろう。

 ところで、主人公の父親が買った馬は原作ではポニーとなっているし、映画のセリフでもポニーと言っているが、字幕はマスタング。画面に出てきたのも普通の馬に見えた。僕はマスタングについては野生馬という訳しか知らなかったが、調べたら小型の野生馬のことだった。小型の馬だからポニーと言っていたのか?

2011/05/16(月)「十一人の侍」

 1967年の作品。西村晃が「十三人の刺客」に続いて剣の達人を演じる。クライマックス、豪雨の中での死闘は「大殺陣」の殺陣より見応えがある。ここで夏八木勲と大友柳太郎の1対1の決闘を描くのは集団だけを描いた「大殺陣」の反省に立ったからか。

 ストーリーもシンプルな仇討ちで分かりやすいのだが、「忠臣蔵」と「十三人の刺客」を合わせたような作りになっていることが減点対象。そういう意味で革新的な部分はないのだけれど、これはプログラムピクチャーとして間違ったあり方ではないだろう。暴君の松平斉厚を演じる菅貫太郎を含めて役者たちも好演している。なお、「大殺陣」と「十一人の侍」はビデオはあるが、DVDは出ていない。

2011/05/14(土)「左ききの狙撃者 東京湾」

 1962年の野村芳太郎監督作品。DVDは出ていないようなので、書いておくと、これすごい傑作です←オーバー(^^ゞ

 WOWOWのストーリー要約を引用すると、「麻薬密売組織に潜入捜査を行っていた麻薬取締官が何者かに射殺され、死体の状況から犯人は左利きであることが判明。捜査一課のベテラン刑事・澄川は、まだ若手の刑事で妹の恋人でもある秋根とコンビを組んで、捜査に当たることになる。組織の一員と思しき武山をマークして尾行するさなか、澄川は、旧友の井上と10年ぶりに再会。井上は、かつて戦場で彼の命を危うく救ってくれた命の恩人で、左利きの優秀な狙撃兵でもあった」ということになる。井上が狙撃者であるわけだが、この映画が面白いのは井上の境遇が明らかになる後半だ。

 戦争から故郷の尾道に帰った井上は女に3人失敗し、東京に出てくる。妻と2人で東京湾に続く川のほとりでボート屋を営んでいる。今の妻は少し知的障害があり、井上がいないと買い物もできない。しかし、純粋に一途に井上を愛している。尾道に行くと言って家を出た井上を待ち続ける笑顔が切ない。

 脚本は松山善三と多賀祥介。上映時間は1時間24分。シャープで切れ味の鋭いドラマ。今のだらだらと2時間以上もある映画よりずっと知的な展開だ。刑事澄川役に西村晃、井上役に玉川伊佐男。

2011/05/14(土)「大魔神」

 WOWOWの放送画質のきれいさが意外だった。これはブルーレイが出ているのだろうと思ったら、やっぱり3部作を収録したブルーレイボックスが発売されていた。しかし、買うならこのボックスよりも平成ガメラのブルーレイボックスの方だろう。

 監督が座頭市シリーズの安田公義なので、時代劇の作劇はきわめて真っ当。謀反を起こした家老が領主を殺し、領民たちを圧政で苦しめる。10年後、生き残った領主の子である兄妹が家老を倒そうとする。家臣たちが山にある武神像を壊そうとしたことで怒った大魔神が姿を現す。

 大魔神の設定と特撮にあまり魅力を感じない。怪獣映画の主役はあくまで怪獣であり、怪獣のキャラクターが重要だと思う。大魔神には神としてのキャラクターしかないのが今ひとつ、面白みに欠ける理由なのだろう。家老を倒しても怒りが収まらない大魔神が罪のない領民も殺してしまうという趣向は良いのだから、これをもっと推し進めた方が良かった。付け加えておくと、この映画、作りがしっかりしているので冷笑とは無縁の作品になっている。

 Wikipediaの大魔神の項目はとても詳しい。熱心な特撮映画ファンは多いのだ。