2024/01/28(日)「哀れなるものたち」ほか(1月第4週のレビュー)

 26日に始まった宮藤官九郎脚本のドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系)は最初から爆笑しました。1986年と現代(昭和と令和)を結ぶ“意識低い系タイムスリップ・コメディ”で、コンプライアンスもハラスメントも知らない86年の風俗は今見ると、乱暴すぎて笑えます。

 職員室はもちろん、教室でもバスの中でもタバコをスパスパ吸う描写があり(僕は喫煙者でしたが、さすがにバスの中では吸いませんでした)、ブスだのハゲだの不適切用語も頻出するため、おことわりが二度出ました。主人公の体育教師役に阿部サダヲ。もう引退してしまうのかと思ってた河合優実がそのスケバン娘役で出ています。このほか、仲里依紗、磯村勇斗、吉田羊、中島歩など。途中でミュージカル風になる展開も面白く、視聴者サービスは意識高い系です。今期のドラマの本命はこれでしょう。

「哀れなるものたち」

 アカデミー賞11部門ノミネートのヨルゴス・ランティモス監督作品。原作はアラスター・グレイのゴシック小説。死んだ妊婦が自分の胎児の脳を移植されて蘇り、屋敷の外の世界に旅立つという物語。フランケンシュタインからイメージしたような前半に対して、性を通じて人間社会の真実を知るという後半は手塚治虫のコミックにもありそうな展開です。

 美術賞は確実と思える美しいセットや衣装の絢爛さはフェリーニ映画を思わせました。一方で「籠の中の乙女」(2009年)、「ロブスター」(2015年)などランティモス作品に特徴的なグロテスクさもあります。ただ、過去作に比べれば、抑制の効いた表現になっていて、全体的に芸術的な完成度が高くなった印象。このあたりは前作「女王陛下のお気に入り」(2018年)と共通するところです。

 天才外科医のゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は飛び降り自殺した妊婦女性の胎児の脳を女性に移植し、蘇った女性にベラ(エマ・ストーン)と名づけて世話をする。大人の体に赤ちゃんの脳を持つベラは急速に知識を吸収。自慰を覚えてゴッドウィンから親離れし、弁護士のダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)とともにヨーロッパ横断の旅に出る。

 ゴッドウィンの屋敷には犬の体にアヒルの頭を移植された生き物がいたりして、いかにもランティモス作品だなと思いますが、これがラストへの伏線にもなっています。プロデューサーも兼ねたエマ・ストーンはよちよち歩きを表現したぎこちない歩き方で幼児の動きを表現。セックス三昧のシーンも多数ある映画を牽引する演技を見せています。個人的にあまりセクシーさを感じなかったのはベラの在り方が無垢で好奇心丸出しだからでしょう。ストーンは「ラ・ラ・ランド」(2016年、デイミアン・チャゼル監督)に続く二度目の主演女優賞の可能性もあるかなと思いました。

IMDb8.4、メタスコア87点、ロッテントマト93%。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞。
▼観客10人(公開初日の午前)2時間22分。

「きっと、それは愛じゃない」

 ドキュメンタリー映画監督のゾーイ(リリー・ジェームズ)は隣家のパキスタン人で幼なじみの医師カズ(シャザド・ラティフ)が見合い結婚すると知って驚く。興味を持ったゾーイはカズの結婚までを撮影することにする。ゾーイ自身は男を見る目がなく、クズ男ばかりと付き合っていた。カズはオンラインでお見合いをして、結婚が決まる。そうなって初めてゾーイはカズへの思いに気づく。「人生は短いけど、悔やんで生きるには長すぎる」と結婚直前のカズに訴えるが、既に遅かった。

 先は読めるんですが、英国ワーキングタイトルの映画なので終盤の展開に工夫がありました。パキスタンの伝統や移民差別への言及もあり、悪くない出来と思います。監督は「エリザベス」(1998年)、「ニューヨーク、アイラブユー」(2008年)などのシェーカル・カプール。

IMDb6.3、メタスコア59点、ロッテントマト71%。
▼観客6人(公開12日目の午後)1時間49分。

「笑いのカイブツ」

 作家・構成作家のツチヤタカユキの私小説を映画化。主人公は笑いのネタを作ることに全集中し、テレビの大喜利番組や深夜ラジオに笑いのネタを投稿します。才能を認められてお笑い劇場の作家見習いになりますが、人間関係が不得意なキャラクターでバイトも長続きせず、生きづらい日々を送ることになります。実際のツチヤタカユキがどうかは分かりませんが、映画で岡山天音が演じたツチヤタカユキは発達障害、特にアスペルガー症候群のように見えました。

 こういう主人公を描いた映画があったっけと考えて、「シャイン」(1995年、スコット・ヒックス監督)を思い出しましたが、「シャイン」の主人公デイヴィッド・ヘルフゴット(演じたのはジェフリー・ラッシュ=アカデミー主演男優賞)は統合失調感情障害だったとのこと。ただ、発達障害が精神的な病気を併発することは知られていて、ヘルフゴットも発達障害だったのかもしれません。

 岡山天音はそうした主人公を実にリアルに演じています。主人公の周辺の松本穂香、菅田将暉、仲野太賀、片岡礼子もそれぞれに好演。ただ、重くて鬱な展開が続くので、それが評価の分かれ目になっているようです。実話に近い内容らしいので難しいんですが、控えめに再起を描いたラストは明確な希望を提示した方が良かったのではないかと思いました。

 滝本憲吾監督はこれが商業映画デビュー。脚本は滝本監督のほか、足立紳ら3人がクレジットされています。ツチヤの才能を認める漫才師(仲野太賀)のモデルはオードリーの若林正恭とのこと。
▼観客5人(公開6日目の午後)1時間56分。

「マエストロ その音楽と愛と」

 Netflixオリジナル作品。「ウエスト・サイド物語」などの作曲家・指揮者レナード・バーンスタインと妻フェリシアを描き、アカデミー作品賞など7部門にノミネートされました。ブラッドリー・クーパーが監督・主演を務め、フェリシア役をキャリー・マリガンが演じてともに主演賞ノミネート。バーンスタインの音楽よりも夫婦の愛を描いていて、浮気相手の若い男を家に連れてくるバーンスタインへの複雑な感情をキャリー・マリガンが繊細に演じています。終盤、ガンにかかったフェリシアの苦悩もリアルな表現をしていて主演女優賞ノミネートも納得です。

 バーンスタインの娘役でマヤ・ホーク(イーサン・ホークとユマ・サーマンの娘)が出ています。マヤは母親譲りの美貌で、「ストレンジャー・シングス」(Netflix)のシーズン3(2019年)からレギュラー、映画では昨年の「アステロイド・シティ」(ウェス・アンダーソン監督)などに出ていますが、主演級の作品もそろそろほしいところですね。
IMDb6.7、メタスコア77点、ロッテントマト80%。2時間9分。

「彼方に」

 アカデミー短編実写映画賞ノミネート。始まって数分であっけにとられるシーンあり。これは何も知らないで見た方が良いでしょう。ある出来事で失意のどん底にたたき落とされた男のその後(原題“The After”)を描いています。描写の丁寧さが良いです。ミサン・ハリマン監督はナイジェリア生まれのイギリス人写真家、起業家、社会活動家で映像作品の監督は初めて。
IMDb6.2。18分。

2024/01/21(日)「ゴールデンカムイ」ほか(1月第3週のレビュー)

 テレ東のドラマ「SHUT UP」の第6話「一夜の真実と性的同意」は実にタイムリーな内容でした。何がタイムリーかって、松本人志の性加害疑惑の根底に通じるからです。このドラマ、同じ大学寮に住む4人の貧しい女子大生の1人が妊娠し、中絶費用を稼ぐために3人がパパ活をしたことから悪意と不運の連鎖で危機に陥る物語。

 妊娠した女子大生は「自分が男のアパートに付いていったから」という負い目を感じていますが、性暴力を考える団体の代表と話し、「そうじゃない、性行為の同意なんてしていなかった」ことに気づきます。つまり、「ホテルのスイートで開く飲み会なんだから、そういうつもりで参加してるんだろ」という勝手な論理を振りかざす松本擁護者たちがいかに単細胞的考えなのかが分かるんですね。

 仁村紗和、片山友希、莉子、渡邉美穂の貧しい4人に加えて裕福な女子大生役で芋生悠。このキャスティングだけでも見る価値あると思いましたが、性暴力の本質を突くこのドラマの価値はそれ以上だと思います。
オープニングの「春に涙」↓

「ゴールデンカムイ」

 野田サトルのコミックの映画化。全31巻の原作のうち、今回映画化されたのは4巻の途中まで。このペースでいくと、あと7、8本作らないと終わりませんね。

 かなり忠実な映像化で、原作通り日露戦争の二〇三高地の苛烈な戦闘場面から幕を開け、北海道でアイヌの金塊をめぐる争奪戦を描いていきます。全体的にもう少し描写を引き締め、構成を緊密化した方が良いですが、悪くない映画化だと思いました。

 主人公の“不死身の杉元”(山崎賢人)は日露戦争後、北海道で砂金採りをしていた時に網走監獄の元囚人(マキタスポーツ)から金塊の話を聞きます。金塊はアイヌが密かに貯めた20貫(約80億円)で、その地図は脱走した囚人24人の体に暗号の刺青で彫られているとのこと。杉元は地図を求め、金塊に絡んで父親を殺されたアイヌの娘アシリパ(山田杏奈)とともに行動を開始します。これに鶴見中尉(玉木宏)配下の帝国陸軍第七師団、戊辰戦争で戦死したはずの新撰組の“鬼の副長”土方歳三(舘ひろし)の一味も加わり、三つ巴の争奪戦となります。

 原作のアシリパは13~14歳ぐらいに見える少女なので、山田杏奈では10歳ぐらい年長ですが、イメージを損なってはいません。玉木宏や舘ひろしの面構えも原作以上の貫録と凶悪さを感じさせて良いです。

 脚本の構成で原作と異なるのは杉元が金塊を狙う理由を最後に持って来たこと。これはうまいアレンジだと思いました。残念なのはCG(実写?)を組み合わせたにしても着ぐるみ感が目立つヒグマとの戦いで、「レヴェナント 蘇りし者」(2015年、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)ぐらいの迫力が欲しかったところです。

 監督は「HiGH & LOW」シリーズの久保茂昭(「ハイロー」シリーズは2作目がアクションに見応えのある傑作でした)。アクション監督は「キングダム」シリーズなどの下村勇二。冒頭の二〇三高地の場面をはじめ、アクションシーンは原作より膨らませています。脚本は「キングダム」シリーズやドラマ「東京MER」などの黒岩勉。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)2時間8分。

「カラオケ行こ!」

 中学3年生の合唱部部長・岡聡実(齋藤潤)はヤクザの成田狂児(綾野剛)から歌のレッスンを頼まれる。狂児の所属する暴力団・祭林組ではカラオケ大会で最下位になると、組長(北村一輝)から“恐ろしい”罰を与えられるため、上達してビリを回避する必要があったのだ。狂児の持ち歌はX JAPANの「紅」。ビビっていた聡実はカラオケを通じて狂児と少しずつ交流を深めていく。

 和山やまのコミックを山下敦弘監督、野木亜紀子脚本で映画化。おかしくて何度も笑いましたし、よくまとまった映画と思います。ただ、終盤に意外にドラマティックな展開があるにしても、なんとなく物足りない思いが残りました。綾野剛は「花腐し」のボソボソしゃべる話し方より、こういう役柄の方が似合った感じがします。合唱部顧問の教師役・芳根京子はホントにピアノ弾いているのに感心。ピアノは特技とのこと。

 エンディングに流れるリトグリの合唱コラボの「紅」がとっても良くて、繰り返し聴いてます。「くーれなーいーに染ーまーった、こーのおーれーをー…」

▼観客10人(公開4日目の午後)1時間47分。

「ポトフ 美食家と料理人」

 「青いパパイヤの香り」(1993年)「第三夫人と髪飾り」(2018年)のトラン・アン・ユン監督作品。

 美食家ドダン(ブノワ・マジメル)と料理人ウージェニー(ジュリエット・ビノシュ)は愛し合っていたが、自由を尊ぶウージェニーはドダンの求婚を断り続けていた。ユーラシア皇太子から晩餐会に招待されたドダンは豪華なだけでテーマもない大量の料理にうんざりする。食の真髄を示すべく、最もシンプルな料理ポトフで皇太子をもてなすとウージェニーに打ち明けるが、ウージェニーは病に倒れてしまう。

 序盤はずーっと、料理を作っているシーンで、ああこうやって料理人が作って美食家が食べて終わりの映画かと思いそうになりましたが、上記のようなストーリーがあります。映像の叙情性は良いんですが、個人的にはあまり興味を持てない内容でした。ビノシュは何歳なんだろうと思わず調べてしまうようなシーンあり(59歳でした)。
IMDb7.5、メタスコア83点、ロッテントマト99%(観客スコアは27%)。カンヌ国際映画祭監督賞。
▼観客11人(公開5日目の午後)2時間16分。

「コンクリート・ユートピア」

 大地震で壊滅したソウルで唯一崩落を逃れたマンションを舞台にしたドラマ。マンションには周辺の生存者たちが押し寄せ、殺傷、放火が起こり始める。住人たちはリーダーを決め、住人以外を遮断することにする。リーダーに選ばれたのは902号室のヨンタク(イ・ビョンホン)。マンションが安全で平和な“ユートピア”と化していくにつれ、ヨンタクは権勢を振るうようになる。

 ユートピアと言いつつ、ディストピア化するのは容易に予想できます。大災害に見舞われたのに行政の救出活動が一切ないのは不自然で、災害の規模も明確ではありません。狭い範囲での災害シミュレーションなのでしょうが、従来のドラマや映画で描かれた人間の醜さが繰り返されるだけで新味がないのがつらいところです。オム・テファ監督。
IMDb6.7、メタスコア73点、ロッテントマト100%。
▼観客10人(公開14日目の午後)2時間10分。

2023/12/24(日)「PERFECT DAYS」ほか(12月第4週のレビュー)

 ザック・スナイダー監督のNetflixオリジナル映画「レベルムーン パート1 炎の子」の配信が始まりましたが、評価メタメタです。IMDb6.1、メタスコア30点、ロッテントマト22%。ソフィア・ブテラ主演のSF大作で期待していたんですが、見る気が失せました。見ますけど。

「PERFECT DAYS」

 役所広司がカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したヴィム・ヴェンダース監督作品。最近では「SISU シス 不死身の男」の主人公が最後まで意味のある言葉を発しませんでしたが、この映画の役所広司もほとんどセリフがなく、寡黙な男です。

 主人公の平山は渋谷区の公共トイレを巡回して掃除するのが仕事。スカイツリー近くの古いアパートに1人で住む平山はまだ薄暗いうちに起き、鉢植えに水をやり、自販機で缶コーヒーを買って飲み、軽自動車でトイレ掃除に向かいます。テキパキと手際よく掃除し、昼食は神社の境内でサンドイッチ。木漏れ日を小型のフィルムカメラで撮影。仕事を終え、銭湯に自転車で向かい、銀座線浅草駅の地下商店街にある酒場で夕食。アパートに荷物は少なく、1冊100円の文庫本を読みながら寝る毎日。休みの日はコインランドリーで洗濯、写真の現像を頼み、美人ママ(石川さゆり)のいる居酒屋で一杯。それを繰り返しています。

 映画は同僚のタカシ(柄本時生)の恋のゴタゴタを描きつつ、そうした平山の日常を淡々と描いていきます。ストーリーが動くのは後半、家出してきた姪のニコ(中野有紗)がアパートを訪れてから。2、3日、一緒に暮らした平山は妹(麻生祐未)にそれを知らせます。高級車に運転手付きで迎えに来た妹は平山に「本当にトイレ掃除しているの?」と聞きます。平山の身の上について映画は詳しく描いていませんが、妹との会話から平山が以前、別の仕事に就いていたこと、父親との確執があったらしいことが分かります。

 分からなかったのは妹と別れた平山が慟哭するシーン。妹に会ったことで、以前の生活と今の生活の落差を改めて実感したために泣いたのかと思ったんですが、シンプルで質素な今の生活に充足しているように見えた平山が泣くのは少し違うかなと思えました。

 パンフレットのインタビューで役所広司はこう語っています。
 「人は悲しいから泣くだけではない、嬉しいから泣くこともある。名状しがたい思いを抱き泣くこともある。あの涙の曖昧さは、監督が観客に向けて平山を好きに解釈してほしいということでもある。僕は笑いながら泣いているのはどうだろうかと思った。平山さんは自分の過去を知っている親族と再会したことで心が大きく揺れ動いた気がします。そうした人との関係を全て断って、穏やかな生活を送ろうと努めていたにもかかわらず」
 心が大きく揺れ動いたという役所広司の解釈が正しいのでしょう。落差を実感したという一種類の感情ではなかったということです。

 アニマルズ「朝日のあたる家」からニーナ・シモン「フィーリング・グッド」まで。平山がカセットテープで聴く音楽はヴェンダースが聴いていたオールディーズなのでしょうか? と、能天気に考えていたんですが、パンフレットによると、ヴェンダースは「フィーリング・グッド」の歌詞と平山の生活の共通点に驚いたのだそうです。

 映画の個人的な評価は、タカシ風に言えば、「10のうち8ぐらい」(正確には7.8)と思いました。「パリ、テキサス」(1984年)よりも「ベルリン・天使の詩」(1987年)よりも日本人にはよく分かる映画だと思います。
IMDb7.9、メタスコア72点、ロッテントマト92%。
▼観客多数(公開初日の午前)2時間4分。

「私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?」

 実話を基にした社会派サスペンス。この実際の事件自体は興味深いんですが、映画は話の構成がまるでうまくありません。

 フランス最大の総合原子力企業アレバの労働組合代表モーリーン・カーニー(イザベル・ユペール)は従業員5万人の雇用を守るため、会社が計画した中国への技術移転契約のリスクを告発する。そこからモーリーンへの脅迫が始まる。モーリーンは自宅で何者かに襲われ、手足を椅子に縛られ、腹にAの文字を刻まれ、膣にナイフの柄を挿入される。警察が捜査するが、現場に容疑者の痕跡は一切なかった、自作自演を疑い、モーリーンを虚偽告発で逮捕・拘留する。強引な取り調べで追い詰められたモーリーンは自作自演を認めてしまう。一審でモーリーンは有罪判決を受けるが、控訴を決意する。

 後半は面白いんですが、前半がモタモタした印象で、ここをもっとコンパクトにまとめた方が良かったでしょう。イザベル・ユペールが追い詰められて嘘の自白をしてしまうほど弱い女性には見えないことも誤算です。主人公は裁判に勝ちますが、事件の犯人は不明のまま。初動を含めた警察の捜査の在り方に大きな問題があったのではないかと思いました。監督はジャン・ポール・サロメ。
▼観客2人(公開5日目の午後)2時間1分。

「屋根裏のラジャー」

 A・F・ハロルド「ぼくが消えないうちに」をアニメ化したスタジオ・ポノック作品。ポノックはスタジオジブリを退社した後、プロデューサーの西村義明が立ち上げたアニメーション映画スタジオ。監督の百瀬義行もジブリで多数の作品に携わった人なので、絵柄が似てくるのは仕方ないでしょう。アニメの技術的にも何ら問題はないんですが、いまいち盛り上がりに欠けます。

 ジブリ作品、特に宮崎駿の作品は熱い思いを抱いた少年少女が主人公でしたが、「屋根裏のラジャー」に欠けているのはそうした熱さのように思えました。別にジブリと同じことをする必要はありませんが、それならば、似ている絵からの脱却を図った方が良いです。ジブリのと似ているポノックの会社ロゴから変えた方が良いです。
▼観客9人(公開4日目の午後)1時間48分。

「ウィッシュ」

 エンドクレジットの後に「星に願いを」が流れます。発想の基になったのがこの名曲であることは明らかですが、出来は芳しくありません。といってもアメリカでの酷評ほどひどいとは思えませんでした。個人的には「屋根裏のラジャー」より面白く見ました。

 どんな願いもかなうと言われるロサス王国で暮らす17歳のアーシャは、ある出来事をきっかけに王国の真実を知り、国民の願いを取り上げているマグニフィコ王に立ち向かう、というストーリー。ディズニーのアニメは吹き替え版で見ることが多いんですが(出来が良いのです)、今回は間違って字幕版を見ました。たぶん来年2月ごろに配信が始まるはずのディズニープラスでは吹き替え版を見たいと思います。
IMDb5.8、メタスコア47点、ロッテントマト49%。
▼観客2人(公開7日目の午後)1時間35分。

「ワンス・アポン・ア・スタジオ 100年の思い出」

 「ウィッシュ」の併映で、ディズニーのこれまでのキャラクター(543のキャラだそうです)がそろって記念写真を撮るまでの騒動を描いた9分の短編。なんてことはない内容ですが、お馴染みのキャラがたくさん出てきて楽しいです。ディズニープラスで10月から字幕版を配信済み。劇場では特別吹き替え版が上映されています。なぜか日本語字幕が付いていました。脚本・監督はダン・アブラハム、トレント・コリー。IMDb8.5。

「カンダハル 突破せよ」

 amazonプライムビデオで配信が始まりました。イランの核開発施設を爆破したCIAの工作員トム(ジェラルド・バトラー)がCIAの内部告発で正体を明かされ、アフガニスタン南部カンダハルへの脱出を図るアクション。

 よその国の施設を破壊したら追われるのは当たり前の話。イランの精鋭集団・コッズ部隊のほか、パキスタンとアフガニスタンで活動するテロ集団ISIS-K(イスラム国ホラサン州)などがそれぞれの目的でトムに襲いかかりますが、トムの方に絶対の正義があるわけでもないのが微妙なところです。バトラーの「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013年)シリーズのようにテロリストを撃退する話とは違って、自分がテロリストみたいなものですからね。

 監督は「グリーンランド 地球最後の2日間」(2020年)のリック・ローマン・ウォー。1時間59分。
IMDb6.1、メタスコア52点、ロッテントマト45%。

2023/12/17(日)「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」ほか(12月第3週のレビュ-)

 U-NEXTで「ほつれる」(加藤拓也監督)を399ポイント払って見た2日後にamazonプライムビデオを見たら、既に見放題に入ってました。劇場公開が9月8日だったので3カ月。配信が始まってもおかしくはないですが、見放題とは。同時にガイ・リッチー監督「オペレーション・フォーチュン」も見放題に。こちらは劇場公開が10月8日。約2カ月での配信は少し早く感じます。下に感想を書いた同時期公開の「シアター・キャンプ」もディズニープラスで見放題に入りました。ディズニーの「ウィッシュ」はアメリカでは「どうせすぐにディズニープラスでやるだろう」と思われたことがヒットしなかった一因とか。そういう時代なのです。

「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」

 太平洋戦争末期にタイムスリップした女子高生・百合(福原遥)が特攻隊の隊員たち、特にその中の1人の彰(水上恒司)と心を通わせる話。貶す気満々で見に行ったら、意外にも悪くない出来でした。

 成田洋一監督はCMディレクター出身。劇場用映画は2作目ですが、60代のベテランだけに浮ついた演出はありません。正攻法な画面作りできっちりとまとめた作品になっています。

 気になるのは原作由来のことなんでしょうが、物語の場所が不明確なこと。特攻隊基地の近くの町で、原作者の汐見夏衛は鹿児島出身なので知覧にするのが自然なんですが、町の人たちの言葉は標準語。特攻基地が多かった九州ではなく、関東地方、筑波海軍航空隊のあった茨城あたりの設定なのではないかと思います。映画のロケも茨城と千葉だったようです。

 百合は幼い頃に父親が事故死し、母親(中嶋朋子)と二人暮らし。母親は夜中まで働いていますが、家は裕福ではありません。懸命に働く母親のことを理解せず、スーパーで魚をさばいていることで「魚くさい」と恥ずかしい思いを抱いています。それが戦争中の過酷な運命を目の当たりにして変わる、というのが分かりやす過ぎる展開ではあります。

 特攻基地の近くで食堂を切り盛りして特攻兵たちに食事を提供する松坂慶子と、シングルマザー家庭の現実を反映した中嶋朋子の存在が映画を引き締めていました。
▼観客多数(公開7日目の午後)2時間7分。

「窓ぎわのトットちゃん」

 ご存じ黒柳徹子の大ベストセラーのアニメ化。この本、800万部以上売れて国内トップ級のベストセラーだそうですが、未読でした。いい機会なので文庫本を買って読み始めました。

 戦前から戦中にかけての物語。落ち着きがなく、授業中に騒ぐため小学校を退学となったトットちゃんが私立のトモエ学園に入学、小児麻痺で手足が不自由な泰明ちゃんらクラスメートと伸び伸びと育っていくエピソードで構成しています。

 トモエ学園は自由な校風ですが、世の中は息苦しさを増し、トットちゃんの家庭にも波及していきます。この対比をもっと強調した方が良かったかなと思います。トットちゃんの元気の良さと奔放さは「となりのトトロ」のメイに重なりました。声を演じたのは7歳の大野りりあな。校長先生は役所広司、お父さんが小栗旬、おかあさんが杏。八鍬新之介監督。
▼観客16人(公開5日目の午後)1時間54分。

「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」

 精神的に不安定なことなどが原因となる思春期症候群(架空の症状です)をテーマにした略称「青ブタ」シリーズの劇場版第3弾。

 高校2年生の梓川咲太の1学年上の恋人で女優の桜島麻衣は卒業を迎える。咲太が海岸で麻衣を待っていると、子役時代の麻衣と瓜二つの小学生が現れる。父から電話が入り、長く入院していた母が、妹の花楓に会いたいと言っていることを告げる。咲太は花楓と共に母親と会うことにするが、咲太の身体に謎の傷跡が現れる。

 6月に公開された前作「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」よりは面白く見ました。ただ、「窓ぎわのトットちゃん」が幅広い世代に受け入れられる内容なのに対して、これは主に10代、20代の男子限定でしょう。この世代に受けるのは桜島麻衣先輩が理想の彼女だからですね。次は大学生編だそうです。増井壮一監督。
▼観客8人(公開13日目の午後)1時間15分。

「SISU シス 不死身の男」

 1944年、第二次大戦末期のフィンランドを舞台にしたアクション。川で砂金を探す主人公アアタミ((ヨルマ・トンミラ)が金鉱を掘り当て、荒野を馬で移動中にナチスに遭遇。金塊を狙ったドイツ兵から執拗に追跡され、死闘を繰り広げることになります。アアタミは老人ですが、特殊部隊出身で過去に300人のロシア兵を殺したと言われています。「ランボー」のように“1人だけの軍隊”なわけです。

 画面に出るのは明らかに西部劇風のフォント。といってもマカロニウエスタンに近い描写の仕方で、これにクエンティン・タランティーノ風のタッチを加えて出来上がった作品と言えるでしょう。

 主人公のアアタミは死なないにもほどがあるほど死にません。ここまで不死身だと、その理由が必要になると思いますが、映画はそれには触れません。

 ヤルマリ・ヘランダー監督は1976年生まれ。「ランボー」など1980年代のアクション映画が好きなのだそうです。
IMDb6.9、メタスコア70点、ロッテントマト94%。
▼観客10人(公開初日の午後)1時間31分。

「シアター・キャンプ」

 ニック・リーバーマン監督の短編「Theater Camp」(2020年)をリーバーマンと「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」(2019年)の女優モリー・ゴードンが共同監督を務めて長編化したコメディ。

 ニューヨーク州北部の演劇スクール「アディロンド・アクト」はミュージカルスターを夢見る子どもたちを指導してきた。今夏のキャンプ開校を前にジョーン校長(エイミー・セダリス)が昏睡状態となり、演劇に無関心な息子トロイ(ジミー・タトロ)が跡を継ぐ。経営は破綻寸前。スクール存続のためには3週間後のキャンプ終了までに出資者に新作ミュージカルを披露する必要がある。教師たちと子どもたちは舞台を完成させようと奮闘する。

 落ちこぼれチームが栄光をつかむという、よくあるパターンのプロット。序盤のドキュメントタッチがどうも乗り切れない要因のようで、これは普通に映画化した方が良かったと思います。完成したミュージカル「ジョーンのままで」(Still Joan)を披露するクライマックスがそれなりに盛り上がるだけに序盤がもったいなかったです。1時間35分。
 IMDb7.0、メタスコア70点、ロッテントマト85%。

2023/12/10(日)「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」ほか(12月第2週のレビュー)

 「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」はロアルド・ダール原作「チャーリーとチョコレート工場」(2005年、ティム・バートン監督)の工場主ウィリー・ウォンカの若き日を描く前日談。ミュージカルタッチのファミリー映画として、「パディントン」シリーズのポール・キング監督は手堅くまとめています。

 発明の天才でチョコレート職人のウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ。)は亡き母(サリー・ホーキンス)との約束を果たすため、一流のチョコレート職人が集まる町にやってくる。ところが、その町はチョコレート店の新規開店ができず、夢見ることも禁じられていた。しかも、ウォンカが泊まった宿はあくどい商売をしていて、文字を読めないウォンカは多額の借金を背負い、無理矢理働かされる羽目に。宿の地下には少女ヌードル(ケイラ・レーン)をはじめ同じ目に遭った人たちがいた。ある夜、ウォンカはチョコレートを盗む小さな紳士ウンパルンパ(ヒュー・グラント)と出会い、仲間たちとともにチョコレートの製造にとりかかる。

 ヒュー・グラントはウンパルンパをユーモラスに演じていて子供たちの人気を集めそうです。ダール作品に特徴的なダークさは宿の意地悪な女主人(オリヴィア・コールマン)やウォンカを迫害するチョコレート組合のメンバーたちに残っていますが、総じて控えめ。大人もそこそこ楽しめる仕上がりにはなっていて、年末年始のファミリームービーには最適でしょう。
 IMDb7.5、メタスコア68点、ロッテントマト83%。
▼観客9人(公開2日目の午前)1時間56分。

「ヨーロッパ新世紀」

 タイトルから近未来の話かと想像してましたが、現在の話でした。トランシルバニア地方の小さな村での外国人労働者排斥を描くルーマニア映画。村のパン工場がスリランカからの労働者を受け入れる。よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。それが村全体を揺るがす激しい対立へと発展していくというストーリー。

 パンフレットのクリスティアン・ムンジウ監督の解説によると、トランシルバニア地方にはルーマニア人、ハンガリー人、ドイツ人とロマ(ジプシー)が住んでいて、それぞれの言葉を話すほか、共用語として英語が使われ、映画の中にはフランス語を話す人も出てきます。観客がすべての言語に詳しいわけではありませんから、字幕は白、ピンク、黄色などで区別されています。

 さまざまな言葉と文化が混在しているにもかかわらず、村人の多くはアジア人に対して差別意識を隠しません。「パン工場でスリランカ人がこねたパンは食べたくない」「どんな病気を持っているか分からない」といった理由からですが、要するに理解が及ばない対象に対して人は恐怖心もあって差別・迫害してしまうのでしょう。

 映画は出稼ぎ先のドイツで暴力事件を起こして帰国したマティアス(マリン・グリゴーレ)とパン工場の責任者で元恋人のシーラ(ユディット・スターテ)を中心に描いています。ルーマニアはEU加盟国の中でブルガリアに次いで貧しい国で、海外への出稼ぎが多いそうです。国内の賃金は安く人手が集まらず、映画でスリランカから労働者を招くのもそれを反映しています。原題“R.M.N.”はMRI(核磁気共鳴画像療法)のこと。
IMDb7.2、メタスコア81点、ロッテントマト96%。
▼観客5人(公開初日の午前)2時間7分。

「まなみ100%」

 高校の体操部で一緒だったまなみちゃん(中村守里)を10年間思い続けたボク(青木柚)を描いた青春映画。10年間思い続けるといっても、ボクはかなりいい加減な男で、たくさんの女の子と付き合うし、その女の子たちに対してひどいこともします。要するにクズキャラに近いんですが、憎めないヤツです。映画は憎めないどころか、好感度たっぷりでおかしくてちょっと切ない作品に仕上がってます。

 川北ゆめき監督の自伝的な話をいまおかしんじが脚本化。ボクはまなみちゃんに何度か求婚しますが、まるで相手にされません。まなみちゃんはボクの言葉を本気と受け取っていないからで、そこをなんとかうまく伝えられれば、恋が成就することもあったんじゃないかなと思えます。

 体操の先生役でYouTubeの「エガちゃんねる」ではお馴染み、佐賀県人会NO.3のオラキオ。いつも体操服着てる芸人さんですが、ホントに体操できるんだと感心しました。このほか、ボクの憧れの先輩役に伊藤万理華、ボクをめぐる女の子たちに新谷姫加、宮崎優、菊池姫奈ら。
▼観客3人(公開7日目の午後)1時間40分。

「理想郷」

 スペインで実際にあった事件を元にしたロドリゴ・ソロゴイェン監督作品。「ヨーロッパ新世紀」同様に異邦人への差別意識に加えて隣人戦争の様相も強く、緊迫した内容になっています。

 フランス人夫婦のアントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)とオルガ(マリナ・フォイス)はスペイン・ガリシア地方の小さな村に移住した。村は貧しく、隣人のシャン(ルイス・サエラ)とロレンソ(ディアゴ・アニード)兄弟は夫婦に嫌がらせをするようになる。そんな中、村に風力発電の計画がもたらされ、誘致に積極的な村人と反対する夫婦が対立、亀裂は大きくなっていく。

 対立がエスカレートしてある事件が起きるんですが、その後の終盤が長いです。いくらなんでも長すぎるのではないか、もっと簡潔に結論を描いた方が良いのではないかと思ってパンフレットを読んだら、二部構成と書いてありました。いや、これは二部構成じゃないでしょ。そうする必要もないと思います。実際の事件は2010年に発覚し、裁判が終わったのは2018年だったそうで、その時間の長さを意識したのかもしれません。

 こうした事件は日本でもどこでも起こりそうで、田舎を勝手に理想郷なんて思わない方が良いです。原題“As bestas”は「野獣」の意味。
 IMDb7.5、メタスコア85点、ロッテントマト98%。昨年の東京国際映画祭グランプリ。
▼観客10人(公開6日目の午後)2時間18分。

「怪物の木こり」

 倉井眉介の原作を三池崇史監督が映画化。評判良くないですが、僕はそんなに悪くないと思いました。怪物とはサイコパスのことで、それを狩る覆面の連続殺人鬼(=木こり)とサイコパスな弁護士(亀梨和也)を巡る話。以前、「アップグレード」(2019年、リー・ワネル監督)を見た時に「頭にチップを入れたぐらいで超人的な能力を得られる訳がない」と思いましたが、この映画もそんな設定。超人ではなく、サイコパスを作るわけです(いや、無理だから)。それを受け入れられれば、まずまず楽しめるんじゃないでしょうか。

 三池崇史監督にしては過激な描写がないのがやや物足りないところではあります。刑事役に菜々緒、弁護士の恋人役に吉岡里帆。脚本はエグゼクティブプロデューサーを兼ねた小岩井宏悦。
▼観客9人(公開5日目の午後)1時間58分。

「ロスト・フライト」

 雷の直撃で故障した飛行機がフィリピンの孤島に不時着。そこは反政府勢力が支配する無法地帯だった。機長ブロディー・トランス(ジェラルド・バトラー)を含む乗客17名はどうサバイバルするのか、というアクション。1980年代にチャック・ノリスが主演した「地獄のヒーロー」(1984年、ジョセフ・ジトー監督)のような映画を思い出す内容でした。つまり、よその国に行って悪人をバタバタ殺しまくる映画です。このためフィリピンでは公開を自主規制しているとのこと。こういうことがあるから、架空の国の島にしておいた方が無難なんです。

 乗客の中には殺人を犯してフランスの傭兵部隊に逃れ、逮捕・移送中のガスパール(マイク・コルター)がいて、トランスとともに助けを呼ぶため飛行機を離れますが、その間に乗客たちは反政府勢力に捕まります。トランスとガスパールは協力して乗客たちを救助しようとする、という展開。飛行機が不時着するまでの序盤がモタモタしているためか、反政府勢力との戦いに割とあっさり片が付く印象を受けました。

 原題は“Plane”とシンプル。ガスパールをフィーチャーしたスピンオフ“Ship”の企画があるそうです。ジャン・フランソワ・リシェ監督。
IMDb6.5、メタスコア62点、ロッテントマト78%。
▼観客12人(公開12日目の午後)1時間47分。