2001/05/25(金)「スーパートイズ」

 映画「A.I.」の原作。著者はブライアン・オールディス。長編かと思ったら、短編集だった。しかも「A.I.」の元になったという「スーパートイズ いつまでも続く夏」は15ページしかない。いや正確に言うと、スタンリー・キューブリックが映画化しようとした「A.I.」がこれに当たり、スティーブン・スピルバーグはその後オールディスが書いた続編「スーパートイズ 冬きたりなば」「スーパートイズ 季節がめぐりて」も合わせて映画化権を買ったそうだ。しかし、この2つを合わせても60ページに満たない物語である。

 物語というよりはスケッチというべきか。「いつまでも続く夏」は自分をアンドロイドと知らない少年の母親に愛されない悩みをスケッチしている。キューブリックはこれを長い映画の導入部分になると考えたようだ。それをオールディスと脚本化する際に行き詰まり、映画化は果たせなかった。「ジュラシックパーク」を見たキューブリックが「A.I.」を映画化できると考えた、というのは有名な話だけれど、これはたぶん、「いつまでも続く夏」に“恐竜のミニチュア”という言葉が出てくるためではないかと思う。完全主義者のキューブリックは点景にいたる部分も完全に映像化しないと気が済まなかったのだろう。

 オールディスとキューブリックの作業の過程は巻末に「スタンリーの異常な愛情 または私はスタンリーと如何にして『スーパートイズ』を『A.I』に脚色しようとしたか」という文章で紹介されている。これはキューブリックの人となりを知る上でも興味深い。