2015/11/12(木)「ラスト・タウン 神の怒り」

 「パインズ 美しい地獄」「ウェイワード 背反者たち」に続く完結編。ミステリマガジン11月号に絶賛のレビューがあったので、あわてて読んだ。3冊とも退屈はしなかったが、B級3部作という印象が抜けきれない。中身が薄いのだ。簡単なプロットに肉付けして作った感じ。キャラクターと描写にもっと書き込みがほしい。展開が単調に感じるのはアイデアが足りないからだ。

 希望が見えないラストなので取って付けたような笑ってしまうエピローグがある。エピローグの続きを期待する人もいるようだが、SFの知識とアイデアに乏しいこの作者には書けないだろう。このエピローグ、ほとんどジョーク、あるいははったりみたいなものだ。まさかまじめに書いてはいないだろうな、ブレイク・クラウチ。

 「駄作」や「プリムローズ・レーンの男」と同様にSFとミステリを組み合わせた作品で、そういうのがアメリカのエンタテインメント小説では受けているのだろう。

2015/10/15(木)「イルカは笑う」

 ショートショート「まごころを君に」のオチに笑った。いかにも落語のオチで、とぼけた感じがいい。言うまでもなく、「まごころを君に」は「アルジャーノンに花束を」の映画化で、クリフ・ロバートソンがアカデミー主演男優賞を受賞した作品の邦題。

 シリアスな「あの言葉」とホラーの「歌姫のくちびる」も良い。バラエティに富んだ短編集だが、ショートショートのおかしさが個人的には好み。ショートショートだけの作品集も出してください。

2015/08/30(日)「カワサキ・キッド」

 東山紀之の自伝的エッセイ。昨年11月、本と雑誌のニュースサイト「リテラ」が「反ヘイト本」として紹介して大きな反響を呼んだ( http://lite-ra.com/2014/11/post-665.html )。それが単行本出版から5年を経ての文庫化を後押ししたのは間違いないだろう。5年前にはヘイトスピーチなんて言葉は一般的ではなかったから、もちろん反ヘイトを意図して書かれた本ではない。

 この本を貫いているのは素直で真っ当なものの見方と考え方だ。だから読んでいてとても気持ちよい。そして何より面白い。タレント本の先入観を捨てて読むべき良書で、読み終わる頃にはヒガシのファンになっていること請け合いだ。