2005/03/18(金)「ロング・エンゲージメント」
1917年の西部戦線(もちろん、ドイツ側から見た場合の西部戦線であり、フランスではこうは呼ばない)、ビンゴ・クレピュスキュル。フランス軍の5人の兵士が処刑に引き立てられる。5人とも軍を抜けようとして自傷したことで軍法会議にかけられ、処刑命令が下った。5人は武器も持たずに中立地帯に追放される。そこはフランス軍とドイツ軍が対峙する中間地点にあり、双方からの激しい攻撃によって5人とも死亡したと思われた。その中にはブルターニュ地方に住むマチルド(オドレイ・トトゥ)の恋人マネク(ギャスパー・ウリネル)もいた。3年後、マチルドの元に手紙が届く。手紙の主は戦場でマネクに会ったという元伍長のエスペランザ(ジェン=ピエール・ベッケル)。エスペランザは戦場で見た5人の最後の様子を話し、遺品をマチルドに渡す。マネクの生存を信じるマチルドはパリへ出かけ、探偵に真相解明を依頼するとともに、自ら関係者を訪ねて歩くことにする。
マチルドは幼い頃、小児麻痺にかかり、左足が不自由な設定。マネクに何かあれば分かるという直感も持っている。ジュネらしいのはこのまるで「アメリ」のようなマチルドのキャラクターと周囲の人間たちのエピソードだ。親代わりの叔父夫婦や郵便配達、探偵などがユーモラスに描かれる。しかし、映画の基調は悲惨な戦場シーンをはじめ、重いものである。悲惨で理不尽な戦場の描写が映画に落とす影は大きいのだが、それが反戦への訴えになっているかというとそういう部分が強調されるわけでもない。部分的に優れたシーンがありながら、まとめ方は平凡な映画だと思う。
行方不明となった兵士の妻役で中盤にジョディ・フォスターが出てくる。短いシーンだが、印象は強く、さすがという演技を見せた。この役が最後に関係してくるのかと思ったが、それはなかった。もったいないような使い方ではある。音楽はデヴィッド・リンチ映画の常連であるアンジェロ・バダラメンティが担当し、リンチ映画とは異なった正統的なメロディを聴かせる。製作予算の35%がアメリカ資本とのことで、今年のアカデミー賞では美術、撮影の2部門にノミネートされた。