2017/02/12(日)「虎狼」

 モー・ヘイダーのジャック・キャフェリー警部シリーズ第7作。原題はWOLF。トラは登場しないから、この邦題には難がある。「喪失」「人形」(ひとがた)と2文字の邦題が続いているので、こうなったのだろう。4年前に読んだ「喪失」はそれほど面白いとは思わなかった。今回は疑いようのない傑作で、中盤のツイストが見事に決まっている。

 MWA賞最優秀長編賞(エドガー賞)をスティーブン・キング「ミスター・メルセデス」と争って敗れたが、こちらが取っても不思議ではなかった。というか、個人的にはこちらの方が面白かった。ヘイダーは「喪失」で既に受賞していることもあって、巨匠キングの初受賞ということになったのだろう。

 裏表紙からあらすじを引いておく。村から離れて住む一家の邸宅にとつぜん二人の男が侵入し、両親とその娘を邸宅内に拘禁する。男たちはその目的を明らかにしないまま、自由を奪った家族をじわじわといたぶってゆく。恐怖と絶望に支配される一家に救いの手はないのか? だが逃げ出した一家の飼い犬が、偶然にもキャフェリー警部のもとへ行き着いた。ウォーキングマンの示唆を受けたキャフェリーは手がかりもないまま飼い主を探しはじめる。

 ウォーキングマンとはシリーズに登場するホームレスで、行方不明となった(そして恐らく死んだ)キャフェリーの兄の手がかりを持っている男。キャフェリーは兄の情報をもらう交換条件として犬の飼い主を探すことになる。

 一家がいたぶられる場面はサスペンスフルだが、それ以上にミステリとしての骨格がしっかりしているのが評価された点か。昨年11月発売なので「このミステリーがすごい!2017年版」の対象にはならなかった。本来ならベストテン上位に入っておかしくない作品だ。

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