2004/05/17(月)「グッバイ、レーニン!」

 ドイツアカデミー賞(ドイツ連邦映画賞)9部門受賞作。「ビッグ・フィッシュ」とは対照的に、こちらは母と息子の話が中心である。東ドイツに強い忠誠心を持っていた母親が心臓発作で昏睡状態となる。その原因は改革要求のデモに参加した息子の姿を見たことだった。母親の昏睡の間にベルリンの壁が崩壊し、東ドイツは消滅する。8カ月後に目を覚ました母親にショックを与えないように息子は懸命に東ドイツの崩壊を隠し通す。わずかなショックでも命取りになると、医者から宣告されたからだ。

 設定はコメディで実際、前半は息子が映画好きの友人の協力を得てニュース番組まで創作するなど笑える場面が多いのだが、映画は終盤、東西分断時代の悲劇を前面に描き出す。10年前に家族を捨てて西側に亡命した父親と母親の本当の関係、その父親との再会シーンなど胸に迫るものがある。社会の大きな変動が家族に及ぼした影響を描きつつ、笑いと涙のエンタテインメントに仕立てたウォルフガング・ベッカー監督の手腕は大したものだと思う。

 病気が一時的に回復し、外出した母親は、解体され、飛行機で運ばれるレーニン像を見る。このシーンは撮り方からしてとてもシュールだ。創作するニュース番組が徐々に実際の東ドイツではなく、息子の理想の東ドイツに変わっていくのも面白い。思想的に右も左もなく、翻弄される家族の話に絞ったのが成功の要因と思う。

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