2007/09/20(木)「ユナイテッド93」

 全敗の中の1勝。を見て感じたのはそういうことだ。同時テロで2機の飛行機が貿易センタービルに突っ込み、1機がペンタゴンに墜落した。ハイジャックされた4機目、ユナイテッド93は乗客たちがハイジャック犯たちに反撃し、目標のホワイトハウスに到着させず、墜落したという話。乗客は全員死んでしまったけれども、ホワイトハウスへの攻撃はさせなかった。これが勝利でなくて何だろう。だからこの映画はアメリカ国民からは支持されたのだ。もう単純にカタルシスがあるのである。テロリストたちに一矢を報いた悲劇の中のカタルシスが。

 映画としてもすこぶる良い出来で、前半、管制官たちから見た同時テロの進行の緊張感が凄い。飛行機と連絡がつかなくなって、何が何だか分からないうちに1機が貿易センタービルに突っ込む。CNNはすぐに中継を開始する。間もなく2機目も突っ込み、ようやく事故ではなく、テロではないかとの疑問が芽生え、3機目で決定的になる。

 ユナイテッド93が目標に到達しなかったのは朝の混雑のために離陸が30分遅れたからで、テロリストにハイジャックされた乗客たちは携帯電話で家族からテロの進行を知り、反撃を決意する。乗客の中にパイロット経験者がおり、操縦桿を奪い返そうという計画だった。それがうまくいかなかったのは残念だが、この過程はスリリングで悲壮感があり、観客を引きつける力がある。

 監督のポール・グリーングラスをはじめ映画の製作者たちは遺族から当時の状況を聞き、同意を取った上で映画化したという。ただ、状況を知る材料は携帯電話での通話とボイスレコーダーしかないわけで、細部はフィクションにならざるを得ない。乗客たちが操縦室までたどりつけたかどうかも実際には分からないようだ。

 僕は同時テロの際、墜落した4機目は軍が撃墜したのだろうと思った。そう推測する人は少なくはない。実際に撃墜したパイロットまで特定されているとの説もある。だいたい、同時テロ自体がアメリカ政府の陰謀とのトンデモ説もあるくらいなのだ。だから、この映画の内容をすべて信じてしまうことには少し抵抗がある。最後の字幕で軍がユナイテッド93のハイジャックを知ったのは墜落した後だったと出る。おまけに軍は大統領から撃墜許可を受けていたが、間違いを恐れて実行しなかった、とまでだめ押しされると、本当かと疑問を感じてしまう。プロパガンダ映画に近い作りではないかとの思いが頭をもたげてくるのだ。

 作りは一流、描かれる内容には疑問という映画の典型。ただ、悲劇的な話であるにもかかわらず、カタルシスがあるという希有な映画であることは間違いない。

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