2005/02/17(木)「ボーン・スプレマシー」

 「ボーン・スプレマシー」パンフレットロバート・ラドラムのベストセラーを映画化した「ボーン・アイデンティティー」の2年ぶりの続編。記憶喪失の元CIAエージェント、ジェイソン・ボーンをマット・デイモンが再び演じる。監督はダグ・リーマンからポール・グリーングラスに替わったが、スピーディーな展開と切れ味のあるアクションは継承している。感心したというか、目立っているのは編集で、同じカットを3秒以上見せないとでも意図したのか、カットが細かく切り替わる。これがスピーディーな印象を与える要因でもあるのだが、目まぐるしすぎてアクション場面などでは逆にダイナミズムを欠く結果になっている。どこがどうなったのかよく見えないし、細かくカットを割りすぎると、重みを欠くものなのである。

 その目まぐるしさが落ち着くのが、クライマックスの後のエピローグ的な場面。ここが全体の締めに当たる部分なのに、それまでの物語で主人公のこういう意図を見せていないのであまり効果を上げていない。前作に続いて脚本を書いたテリー・ギルロイは「ジェイソン・ボーンは元暗殺者なので復讐劇にはできなかった」として、今回の映画を「償いの旅」とまとめているが、償いの部分がこの場面に唐突に出てくる印象にしかなっていない。水準をクリアしたスパイ・アクションだけれど、話の作りはうまくないと思う。スピーディーさばかりでは結局、一本調子になってしまう。緩急を付けた演出と伏線を十分張った物語が望まれるところなのである。

 前作から2年。ジェイソン・ボーンはマリー(フランカ・ポテンテ)とインドで暮らしている。記憶は完全には戻らず、悪夢にうなされる日々だ。そのころ、ベルリンでCIAの女性諜報員パメラ・ランディ(ジョアン・アレン)は組織の不祥事に関する調査に当たっていた。公金横領の資料を手に入れようとしたが、何者かが取引現場を襲撃し、2人が殺されてしまう。現場にはボーンの指紋が残っていた。インドではボーンが襲撃され、逃走中にマリーを殺されてしまう。ボーンは事件の真相を探るため、ヨーロッパに向かう。CIAもボーンを事件の犯人として、追跡を開始する。事件の背景にはトレッドストーンという計画があるらしい。パメラは計画の責任者だったアボット(ブライアン・コックス)を問いただす。

 ボーンにとっては巻き込まれ型の展開だが、最愛のマリーを殺されたのだから、復讐劇にしてしまった方がすっきりしたと思う。それが「償い」の話になるのはボーンが途中で記憶を取り戻し、過去の仕事を後悔するからだ。このあたりをもっと深く描けば、映画はアクションだけが目立つような出来にはならなかっただろう。それには記憶を取り戻す場面をもっとドラマティックに描く必要があったし、ボーンの苦悩も深く描いた方が良かっただろう。前作を僕は底が浅いと思ったが、今回も同じような感想を持った。

 マット・デイモンは前作同様、アクション場面も無難にこなして凄腕のエージェントを好演している。ただ、こういうハードな映画の主人公としてどうかというと、ハードさが足りない部分はあると思う。映画全体もハードな部分が意外に希薄なのは演出がスピーディーではあっても、重みに欠けるからではないか。

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