2024/04/14(日)「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」ほか(4月第2週のレビュー)

 今田美桜主演のドラマ「花咲舞が黙ってない」(日テレ)は主人公が支店統括部臨店班に異動するところから始まり、キャストも一新されているので、杏が主演した同名作品(2014、2015年)に続くものではなく、リメイクあるいは仕切り直しです。

 新旧の第1話を見比べてみたら、旧作は15分長い拡大版なんですが、明らかに旧作の方が良い出来でした。これは今田美桜より杏の方が良いという理由ではなく、端的に脚本・演出の違いによるものです。予算的にも旧作の方がかかっていそうな感じ。2話以降に期待します。

 それにしても、池井戸潤原作のドラマを見ると、「銀行って、悪い奴だらけだな」と思ってしまいますね。

「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」

 シリーズ第27作。コナンシリーズは多彩なキャラのそれぞれにファンがいて、劇場版では毎回違ったキャラをフィーチャーしていますが、今回は怪盗キッドと服部平次が中心になってます。

 函館市にある斧江財閥に、怪盗キッド(山口勝平)から犯行予告が届く。キッドは幕末の新選組副長・土方歳三にまつわる日本刀を狙っていた。西の高校生探偵・服部平次(堀川りょう)とコナン(高山みなみ)たちは剣道大会のため函館に来ていた。変装を見破った平次はキッドを追い詰めるが、逃げられる。その頃、倉庫街で胸に十文字の切り傷がつけられた遺体が見つかり、日系アメリカ人の武器商人の男が捜査線上に浮かぶ。男は戦時中軍需産業に深く関わっていた斧江家初代当主が函館のどこかに隠したとされる宝を探していた。宝は日本の敗色濃厚だった戦況を一変させるほどの強力な兵器といわれ、キッドが狙った刀には宝の場所を示す手がかりがあるようだった。

 脚本は「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」(2022年)に続いてシリーズ4作目の担当となるミステリー作家の大倉崇裕。宝のありかを探すミステリー的展開の後にクライマックスの大がかりなアクションを見せる構成はこれまでの劇場版と同様です。序盤は悪くないんですが、宝探しの部分が長すぎる気がしました。クライマックスの飛行機上のアクションはまあ、現実にはありえないんですけど、アニメだから良いでしょう。

 個人的には灰原哀の出番が少なくて残念(前作「黒鉄の魚影」で十分見せてもらいましたが)。コナンシリーズのファンでなければ、特に劇場で見る必要はないと思えました。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)1時間51分。

「Here」

 ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門で最優秀作品賞と国際批評家連盟賞を受賞した作品。ベルギーのバス・ドゥヴォス監督の長編4作目で、ブリュッセルを舞台にルーマニアの移民労働者ステファン(シュテファン・ゴタ)と植物学者の女性シュシュ(リヨ・ゴン)の日常の断片をつづったドラマです。

 建設労働者のシュテファンはルーマニアに帰ろうとしていて、冷蔵庫の残り物の食品を使ってスープを作り、それを世話になった人たちに配っています。森を散歩している途中、以前レストランで会ったシュシュと再会し、彼女がコケ類の研究者である事を知ります。

 上映時間も短く、なんてことはないストーリー。評価の高さはその映像にあるようですが、僕は基本的に一にも二にも三にもスジ重視なので、ほぼ何の感慨もなく、評価のしようがありません。とりあえずドゥヴォス監督の前作「ゴースト・トロピック」(2019年)も見てみようと思います。
IMDb6.8、メタスコア96点、ロッテントマト96%。
▼観客5人(公開7日目の午後)1時間23分。

「PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」

 全国高校eスポーツ大会に参加した徳島の高専生3人を描く青春映画。ゲームにもeスポーツにもあまり興味はないので、古厩智之監督作品でなければ、スルーするところでした。古厩監督は「ロボコン」(2003年)や「のぼる小寺さん」(2020年)など高校の部活を題材にした作品を撮っていますが、この作品も基本的に同じ手法で、きっちり水準作に仕上げています。

 徳島の阿南高専で実際にあった話を基にした物語(脚本は朝ドラ「ブギウギ」で足立紳とともに脚本を担当した櫻井剛)。高専3年生の田中達郎(鈴鹿央士)は手首にけがをしてバスケットボールを断念。今はオンラインゲームに没頭している。全国高校eスポーツ大会があることを知った達郎はチラシを作り、参加者を募集。郡司翔太(奥平大兼)が応募し、残る一人は同じクラスの小西亘(小倉史也)に頼み込む。3人は徳島予選をなんとか勝ち進み、東京の本戦に出場を果たす。

 大会でプレーするのはロケットリーグというゲーム。Wikipediaによると、「ジャンプやロケット飛行ができる特殊な車を操作してサッカーを行う架空のスポーツを題材としたコンピュータゲーム」です。

 達郎と翔太の家庭はそれぞれに問題を抱えていますが、それと本筋とがあまり絡んできません。これは作劇上の弱さにつながっていて、もちろん簡単に解決できる問題ではないんですが、仲間を作り、目標に突き進んだ体験を経たことで、問題解決の何らかの道筋や意識の変化を示しても良かったのではないかと思いました。

 サブタイトルは全国大会のキャッチコピー。同時に、勝ち負けにこだわる翔太の父親へのアンチテーゼにもなっています。
▼観客2人(公開6日目の午後)2時間2分。

「その鼓動に耳をあてよ」

 東海テレビの劇場版ドキュメンタリー第15弾。令和4年度の文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門で優秀賞を受賞した「はだかのER 救命救急の砦 2021-22」を映画化したものだそうです。

 名古屋港から北へ3キロのところにある名古屋掖済会病院の救命救急センターを定点観測した作品。同病院は「救急患者を断らない方針」で年間1万台もの救急車を受け入れています。映画はそこで働く医師や看護師の姿と発言に焦点を当て、救急医療の現場の過酷さと問題点を浮き彫りにしていきます。

 鼻に入れたどんぐりが取れなくなったり、結婚指輪が指から抜けなくなったり、釘が刺さったり、飛び降り自殺未遂で大けがを負ったりなどさまざまな患者が運ばれてくるほか、経済的に困窮した患者など社会的な問題も描かれており、対応する医師たちの姿勢に時に胸が熱くなります。

 救急医を志した理由について医師の1人は「医療ドラマ、『コード・ブルー』などを見てかっこいいと思ったから」と答えます。医療ドラマに限らず、お仕事ドラマ、お仕事映画はその職業に進む人の背中を押す効果があるんだなと思います。この映画を見て救急医を志す人もきっといるでしょう。

 監督はこれが初監督となる足立拓郎。エンドクレジットに研修医の名前が100人以上(200人以上?)五十音順に出てきますが、映画の中心になるわけでもないので「研修医の皆さん」で良いんじゃないでしょうかね。なぜこれを長々と見せるのか疑問でした。
▼観客6人(公開5日目の午後)1時間35分。

「寄生獣 ザ・グレイ」

 岩明均原作コミックを、韓国を舞台に映像化したNetflixオリジナルドラマ(全6話)。主人公が女性に変わっているほか、原作をかなりアレンジしています。というか、原作と同じ時間軸に韓国では寄生生物による別の物語があった、という解釈で良いと思います。最終6話の驚きのラストでそれが明確になります。このラスト、ネットニュースでは盛大にネタバレしてますね。と思ったら、Wikipediaにも記述がありました。うーん、困ったもんだ。

 「グレイ」は寄生生物対策チームの名称。原作の寄生生物は主人公の右手に寄生したのでミギーと名づけられ、主人公とのバディ感がありましたが、韓国版は劇中で言及される「ジキル博士とハイド氏」や多重人格者のように一方が起きている間、他方は寝ているという関係になります(ミギーが長時間寝ているのは原作の後半にもありました)。VFXはそれなりによく出来ていますが、寄生生物がどれも同じような形態なのは残念。もう少しバリエーションを持たせでも良かったのでは。

 主演はチョン・ソニ。笑顔をほとんど見せないので、見終わってプロフィル見るまで韓国版「ソウルメイト」のハウン役の女優とは気づきませんでした。主人公を助ける刑事役で「小説家の映画」(2022年)や「逃げた女」(2020年)などホン・サンス監督の映画ではおなじみのクォン・ヘヒョ。監督は「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016年)、Netflixのドラマ「地獄が呼んでいる」(2021年)などのヨン・サンホ。
IMDb7.3、ロッテントマト100%。

 「寄生獣」や「ウルトラマン」第1話、映画「ヒドゥン」(1988年、ジャック・ショルダー監督)など多くの作品の基になり、影響を与えた古典SF「20億の針」(1950年、ハル・クレメント)は2016年に新訳で復刊されたんですが、また手に入りにくくなってます。こういう名作は電子書籍化してほしいものです。ちなみにこの小説、僕は小学生の時、「宇宙人デカ」のタイトルの子供向けリライト版を読みました。調べたら、表紙と挿絵は横尾忠則でした。