2005/12/06(火)「Mr. & Mrs. スミス」

 「Mr. & Mrs. スミス」写真危険な職業を持ち、敵対する組織にいる男女の結婚と言えば、「スパイキッズ」の両親もそうだったが、こちらは凄腕の殺し屋であることをお互いに隠して結婚した夫婦の話。結婚して5、6年目、やや熱が冷めた段階でお互いの秘密が分かり、所属する組織からそれぞれ48時間以内に相手を殺すよう命じられる。ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリーの魅力で見せる映画で、その点に関しては十分満足したが、話は簡単なものだし、アクション場面にもオリジナリティが乏しい。カーチェイス場面などは「アイランド」「マトリックス リローデッド」には到底及ばない。ユーモアが絡むとアクション場面は単なる見せ物に落ちてしまうものだが、この映画も例外ではなかった。以前よくあった破壊に次ぐ破壊で笑いを取るB級コメディを思い出してしまった。監督は「ボーン・アイデンティティー」のダグ・リーマン。この人は大がかりなアクションよりも格闘場面などの方が得意なのではないか。リーマンが「ボーン・スプレマシー」の監督をポール・グリーングラスに譲ったのはこの作品に入っていたためという。こっちよりも「スプレマシー」を監督した方が良かったと思う。

 ジョンとジェーンのスミス夫妻はコロンビアで知り合い、お互いに殺し屋であることを秘密にしたまま結婚した。それから5、6年(結婚カウンセラーに対してピットが5年と言うと、ジョリーが6年と訂正する)、同じ標的を狙ったことから秘密が明らかになってしまう。元々、2人が所属する組織はライバル関係にあり、それぞれの組織は相手を48時間以内に抹殺するよう命令する。そして2人は壮絶な戦いに突入することになる。

 プロットとしてはこれだけのものである。脚本を書いたサイモン・キンバーグ(なんと上に書いた「X-MEN3」の脚本にも参加している。大丈夫か)はアクションを柱に物語を組み立てていったというが、組み立てるほどの話ではない。キンバーグは「トリプルX」の続編「トリプルX ネクスト・レベル」(2005年、リー・タマホリ監督、未公開)で脚本家デビューしてこれが2作目。この脚本、元々はコロンビア大学修士課程で書いたものという。習作レベルの脚本で、細部に工夫がないのはそのためのようだ。プロダクションノートを読むと、キンバーグはこう語っている。「ミュージカルでは、登場人物の愛情や葛藤、興奮が高まると、通常の台詞での表現を超えて、その高まりが歌と合わさることで感情が爆発する。ジョンとジェーンの場合は、銃撃で感情が爆発し、そのことでふたりの関係性が明らかになっていくんだ」。ミュージカルの部分に関してはまったく正しい。それをアクション映画に置き換える際にうまくいかなかったようだ。頭で分かっていても実力が伴わずに失敗することはよくある。

 リーマンの演出も標準的なもので、アクション映画として特に新しい部分はない。それでもそこそこに楽しめるのはアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットのお陰だろう。特にアンジェリーナ・ジョリーの色っぽさが良い。ジョリーは自分の魅力がどういう部分にあるのかをよく知っているのだと思う。