2008/07/11(金)「タロットカード殺人事件」

 「世の中ウソばかりじゃない。ほとんどウソだけど」。

 ウディ・アレンのセリフの9割近くはジョークだった。まあ、死んだ記者が死に神の船の中で特ダネを知り、それを伝えるために現世へ逃げ出し、記者志望の女子大生(スカーレット・ヨハンソン)に伝えるという設定からしてジョークに近い。というか、アレンはその小説を読んでも分かるようにこうしたSFチックな奇想の系譜に属する作品がある。短編小説では名手と言って良い腕前ですからね。映画では「カメレオンマン」とか「ニューヨーク・ストーリー」の中の1本とか「ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう」とかが思い浮かぶ。

 もっともこの映画、出だしは奇想だが、その後の展開は殺人事件の容疑者に接近した女性が恋に落ちてしまうというよくあるもの。それを救っているのはアレンのジョークとヨハンソンのコケティッシュな魅力か。偽の親子に扮して容疑者の貴族(ヒュー・ジャックマン)に接近する2人のでこぼこコンビぶりが楽しい。「生まれた時はユダヤ教だったが、その後ナルシスト教に変わった」とかユダヤ関連のジョークも相変わらず多い。というわけで僕はまあまあ面白く見た。