2011/04/30(土)「カティンの森」

 第2次大戦中、ポーランド軍将校ら1万2000人が虐殺されたと言われるカティンの森事件をアンジェイ・ワイダ監督が映画化。ワイダ監督の父親も事件の犠牲者であるという。この映画を撮った時、ワイダ監督は80歳を超えていたが、硬質で緊張感あふれる画面構成は老いを感じさせない。機械的に淡々と行われるラストの処刑シーンには背筋が凍り付く。

 戦後、ソ連に支配されたポーランドで事件が封印されたことも怖い。ソ連は事件をドイツ軍の犯行として喧伝し、異を唱える者を迫害する。それでも自分に嘘をつくことを拒否する人々の姿が胸に迫る。ワイダ監督らしい人物像だ。ドイツ軍とソ連軍に支配され続けたポーランドの悲劇を描き、被支配者の怒りに満ちた傑作。