2001/07/31(火)「初恋のきた道」

 こんなに胸をときめかせ、心を揺さぶられた映画も最近珍しい。キネマ旬報ベストテン4位、ベルリン映画祭銀熊賞受賞だけのことはある。「グリーン・デスティニー」のチャン・ツィイー(章子怡)のデビュー作。チャン・イーモウ監督の映画だが、そんなことはどうでもよく、純で一途なツィイーがひたすら良い。出てくるだけで画面が輝く。誤解を招くかもしれないが、正統的アイドル映画である。

 父親が心臓病で急死したとの知らせを受けた息子が故郷の村に帰ってくる。母親は町の病院から村まで父親を担いで帰りたいと話す。父と母の愛は村の語りぐさになるほどのものだった。息子は両親から聞かされたその愛の強さを振り返る。というわけで映画は前後の現在の場面に40年前の時代を挟み、回想形式で描かれる。

 1958年、18歳のディ(チャン・ツィイー)は村に赴任してきた教師チャンユー(チョン・ハオ)を見て、一目で恋をする。校舎建設のために村の男たちとともに働くチャンユーに食べてもらいたいと毎日弁当を作り(しかし誰が食べるか分からない)、チャンユーの声を聞くために毎日学校のそばを通って水くみに行く。家が遠い子どもをチャンユーが送ると聞いたディは山道で遠くからチャンユーを見つめるようになる。ある日道ですれ違ったことで、その美しさに目をとめたチャンユーもディに思いを寄せるようになる。と、ストーリーを書いても、この映画の場合は何も伝わらない。チャン・イーモウ監督は丹念に丹念に2人の恋の過程を描いていく。これは描写の映画であり、映画の原初的感動が映像そのものにあることを強く思い起こさせてくれる。

 チャン・ツィイーの笑顔を見せはにかむ姿、思いが通じたうれしさに走る姿、雪の中でじっとチャンユーの帰りを待つ姿、どれもそれだけで感動的なのである。ツィイーでなければ成立しない映画。チャン・イーモウはどういう意図でこの映画を撮ったのか知らないが、ツィイーを見つけた時点で映画の内容そのものも変わったのではないか。でなければ、こんなにツィイーのクロースアップが多いわけがない。

 この映画の唯一の欠点は現在の母親を演じる女優があまりにもおばあさんであること。可憐でかわいいツィイーが40年後とはいってもあんな風に年を取るわけない。これはむしろ父親よりも母親を死なせてしまった方が説得力はあったのではないかと思うが、そうなるとツィイーの視点で物語を語れなくなる。難しいところではある。

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