2024/03/31(日)「ヴェルクマイスター・ハーモニー」ほか(3月第5週のレビュー)

 WOWOWで長年続いた映画情報番組の「ハリウッド・エクスプレス」と「映画工房」が3月で終わりました。これ、どう考えてもコスト削減が理由でしょ? WOWOWは加入件数が減少傾向(2月現在250万件を割って245万件余り)にあり、動画配信サービスとの競争激化で将来性に疑問があるためか株価も下がってます。WOWOWの経営陣は、他にない貴重なコンテンツをなくすことが競争力をさらに落とすことにつながる、ということを分かっていないようですね。

「ヴェルクマイスター・ハーモニー」

 ハンガリーのタル・ベーラ監督が7時間18分の「サタンタンゴ」(1994年)の次に撮った2000年の作品。日本での初公開は2002年6月で、この年のキネ旬ベストテン39位でした。

 荒廃した田舎町が舞台。ヴァルシュカ・ヤーノシュ(ラルス・ルドルフ)は郵便配達で、仕事と家の往復の中、老音楽家エステル(ペーター・フィッツ)の世話をしている。エステルは18世紀の音楽家ヴェルクマイスターへの批判をテープに口述記録していた。エステル夫人(ハンナ・シグラ)が風紀を正す運動に協力するようエステルを説得して欲しいとヤーノシュを訪ねてくる。ヤノーシュは広場に何かが来ているという噂を耳にし、広場に向かうと、トラックを取り囲む多くの人たちがいた。トラックに乗り込んだ彼が目にしたのは巨大なクジラだった。ヤノーシュは不気味に光るクジラの目に魅了される。やがて街では次々と暴動が起こる。暴動に参加した群衆は病院に向かい、患者を次々と襲っていく。

 予備知識ゼロで見たので、クライマックスの暴動はハンガリーの史実に基づいているのかと思いましたが、そうではありませでした。「これは、永遠の衝突について――本能的な未開と文明化を巡る数百年の争い――全東欧のこの2世紀を決定付けた歴史的経緯に関する作品です」とタル・ベーラは語っています。具体的な事件を参照したものではないわけです。

 しかし、弱い立場にある病院の入院患者に暴力を振るう理由がよく分かりません。タル・ベーラはこう説明しています。
「暴動に参加した人たちは、文明にかかわるもの全てを破壊しようと思っている。弱者の代表である病院を襲うというのは、究極の襲撃なのだ。病院まで襲ってしまったらその先はない」

 いや、だから病院を襲う前に政治家であったり、権力者であったり、庶民を虐げて美味い汁をすすっている奴らを襲う描写が必要でしょう。病院の襲撃描写だけでは単なる弱い者いじめにしか見えません。権力者専門の病院だったとか、病院を権力者側に置く設定が必要だったと思います。こういう暴動は革命にはつながらず、迷惑なだけです。

 全編がわずか37カットで長回しが多く、描写に力がこもっているのは「サタンタンゴ」や「ニーチェの馬」(2011年)など他の作品と同様です。パンフレットによると、「世界に衝撃を与えた記念碑的作品」とのことですが、技術的にはともかく、話の作りには疑問を感じました。
IMDb8.0、メタスコア92点、ロッテントマト98%。
▼観客4人(公開7日目の午後)2時間25分。

「オッペンハイマー」

 原爆の父と呼ばれるJ・ロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督作品。アカデミー賞で作品・監督・主演男優(キリアン・マーフィー)・助演男優(ロバート・ダウニー・ジュニア)など7部門を受賞しました。

 3時間の大作ですが、日本人として興味を引くのは、やはり、始まって1時間半あたりからの広島・長崎への原爆投下に関する部分。具体的な原爆被害の惨状を描いていないとして批判する向きもありますが、オッペンハイマーの生涯を描く作品として必須のものではなかったと僕は思います。

 原爆投下の報告会で上映される映像からオッペンハイマーが目を背けるシーンがあります。被害が想像以上だったからこそ、オッペンハイマーは戦後、より大きな破壊力を持つ水爆の開発には反対したのでしょう。「大きすぎる火は何も生まない」(「風の谷のナウシカ」)ことを認識し、水爆を使う場所なんてないことをオッペンハイマーは強く主張していきます。このために「原爆の父」の栄誉から一転して、共産主義者(ソ連のスパイ)の疑いをかけられ、非難され、公職追放処分を受けることになります。

 この映画を5回見たという町山智浩さんは「3回ぐらい見ないと分からない」とラジオで話していました。登場人物の説明がほとんどなく、中には名前さえ呼ばれない人物もいるため、話の細部が分かりにくくなった側面はあります。一般の観客は劇場で2回も3回も同じ映画を見ることは少ないですから、その意味で映画の作りにはもう少し配慮があっても良かったでしょう。それでもオッペンハイマーの栄光と没落については十分に伝わってきます。

 池のほとりでオッペンハイマーがアインシュタイン(トム・コンティ)と言葉を交わすシーンが印象的です。相対性理論で革命的な業績を上げたアインシュタインは量子物理学では間違えました(この映画にも出てくるボーア(ケネス・ブラナー)が量子物理学では大きな功績を残しました)。序盤、人生の上り坂にあったオッペンハイマーは下り坂のアインシュタインと話すわけですが、映画はラスト、もう一度この場面を描いています。

 クリストファー・ノーランは短いカットとエピソードをテンポ良く並べて語っていきます。情緒に偏らない理知的な作風は「デューン 砂の惑星」のドゥニ・ヴィルヌーヴと共通するところもありますが、総合的な演出力ではノーランが一歩リードしていると感じました。
▼観客30人ぐらい(公開初日の午前)3時間。

「落下の解剖学」

 第76回カンヌ国際映画祭パルムドール、アカデミー脚本賞受賞。人里離れた山荘の3階の窓から落下して死亡しているのが見つかった夫(スワン・アルロー)の妻(ザンドラ・ヒュラー)に殺人の疑いがかけられるサスペンスです。

 ミステリーのような構成ですが、自殺か他殺かの謎があるだけで一般的なミステリーではありません。普通のミステリーなら裁判が終わった後にもう一度話をひっくり返すところでしょう。

 妻には女性と不倫した過去があり、死の前日に夫と激しく言い争った時の録音も発見されて夫婦仲が良くなかったことが分かります。2人の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は夫の運転する車で事故に遭ったことで視覚障害を負い、それが夫婦仲に影響したことも分かります。「落下の解剖学」というより夫婦の解剖学といった内容です。

 監督はジュスティーヌ・トリエ。脚本はトリエのパートナーであるアルチュール・アラリ(「ONODA 一万夜を越えて」監督)との共同。

 “Anatomy of a Fall”のタイトルはオットー・プレミンジャー監督の「或る殺人」(Anatomy of a Murder、1959年)を意識しているようです。
▼観客20人ぐらい(公開5日目の午後)2時間32分。

2024/03/24(日)「コット、はじまりの夏」ほか(3月第4週のレビュー)

「コット、はじまりの夏」

 夏休みに親戚夫婦に預けられた9歳の孤独な少女コットを描くアイルランド映画。「珠玉」という表現がぴったりの傑作で、昨年のアカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされました。受賞した「西部戦線異状なし」(2022年、ドイツ、エドワード・ベルガー監督)も重厚な力作でしたが、ほとんど差はないレベルだと思います。監督はこれが第1作のコルム・バレード。

 1981年、アイルランドの田舎町が舞台。コット(キャサリン・クリンチ)の家は父親が賭けに熱中して金に困窮し、母親は子だくさんのためコットに手が回らない状態。学校でも阻害されているコットは夜尿症が治らず、無口な少女になっており、明らかに親の愛情が足りていないと思わせます。遠い親戚の家に預けられるのは、父親が「いつまでいてもいい」と言うほどなので口減らしの意味が大きいでしょう。

 コットを喜んで迎え入れるのは酪農を営むショーン(アンドリュー・ベネット)とアイリン(キャリー・クロウリー)のキンセラ夫妻。当初、戸惑っていたコットはアイリンに髪を梳かしてもらったり、ショーンと一緒に子牛の世話をすることで自分の居場所をみつけていきます。

 コットは心に傷を負っていますが、この夫婦もまた過去の悲劇的な事故から立ち直っていません。バレード監督はそうした3人が絆を深めていく過程を日常の小さな描写を積み重ねることで描いていきます。この演出方法はオーソドックスかつ普遍的なもので、だからこそ何度も胸を打たれるのは必至。まったく、感心するほどうまい描き方です。

 コットとショーンがゆっくりと心を通わせていくのを見て、ハイジとアルムおんじのようだと思っていたら、2人で「アルプスの少女ハイジ」を読む場面がありました。クレア・キーガンの原作にこの描写があるのかどうか分かりませんが、映画はそれをイメージしていたのかもしれません。

 公式サイトに「ベルリン国際映画祭グランプリ 国際ジェネレーション部門(Kplus)」とあります。これは金熊賞のような全体のグランプリではなく、11人の子供審査員が選んだ最優秀賞のようです。むしろ大人の方に大きくアピールする映画でしょう。
IMDb7.7、メタスコア89点、ロッテントマト97%。
▼観客20人ぐらい(公開2日目の午後)1時間35分。

「ビヨンド・ユートピア 脱北」

 北朝鮮の恐ろしさを描いたこういうドキュメンタリーを見ると、ブームになった「愛の不時着」なんて「何を能天気なことを」と思ってしまいますが、脱北の支援活動を行っている韓国のキム・ソンウン牧師の奥さんは北朝鮮出身。奥さんのひと目ぼれだったそうです。その理由がおかしく、「北朝鮮の男性はやせた人ばかり。牧師を見て金正日さまと同じ体型だったため」好きになったんだとか。

 映画が描くのは2つの家族の脱北の過程。幼い子供2人と80代の祖母を含む5人家族は中国からベトナム、ラオスを経てタイに至る危険で困難な道を進むことになります。韓国と北朝鮮の国境には200万個の地雷が埋められ、警戒も厳重なため突破は難しく、だからこんなに遠回りをしなくてはいけないわけですが、ベトナムとラオスも北朝鮮の友好国なのでタイに着くまでは気が抜けません。この過程が脱北ブローカーによって撮影されていて、フィクションのようなサスペンスに満ちています(ベトナムとラオスでの撮影は映画のスタッフによるもの)。

 もう一つの家族は北朝鮮にいる息子と、韓国で息子を待つ脱北した母親。こちらは母親とブローカーとの電話で経過が描かれます。

 具体的な脱北の過程を撮影できたのが大きく、空前の映像と言って良いでしょう。外部からの情報が遮断された北朝鮮の国民には自分たちがいかにひどい状態に置かれているか知るすべがなく、それが独裁体制が終わらない原因だと思います。これを何とかしてほしいところ。

 マドレーヌ・ギャビン監督は編集者出身で、監督作には戦争で荒廃したコンゴで性暴力を受けた女性のために設立された組織を描くドキュメンタリー「シティ・オブ・ジョイ 世界を変える真実の声」(2016年、Netflix)があります。
IMDb8.0、メタスコア84点、ロッテントマト100%。
▼観客20人ぐらい(公開5日目の午後)1時間55分。

「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章」

 浅野いにお原作コミック(全12巻)のアニメ化。後章は当初、4月19日公開予定でしたが、5月24日に延期されました。前章で提示された謎が宙ぶらりんの状態で2カ月は長すぎます。

 東京上空に巨大な宇宙船が現れて3年。自衛隊は時折、侵略者たちを駆逐している。「地球がくそヤバい」非日常的な光景の下では高校生の小山門出(幾田りら)と“おんたん”こと中川凰蘭(あの)たちが普通に暮らしていた。

 幾田りらとあのちゃんが主人公2人の声優を務めているのが話題で、あのちゃんは「ぼく」を自称するいつものしゃべり方ですし(といっても、原作のおんたんも「ぼく」です。だから、あのちゃんをキャスティングしたんでしょうかね)、普通に考えれば、幾田りらの方が中心になるはず。しかし、中盤の過去のシーンであのちゃんは「わたし」を使い、ストーリーの流れから見ても中心なのはあのちゃんの方でした。これは大きく意外。この過去の場面が物語のポイントなのでしょう。SF設定の中にいじめや引きこもり、恋愛などさまざまな要素を無理なく詰め込んだ作劇は面白く、後章への期待が大きくなります。

 監督は「ぼくらのよあけ」(2022年)の黒川智之、脚本は「若おかみは小学生!」(2018年)「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」(2020年)などの吉田玲子。一つ一つのエピソードは原作に忠実ですが、構成を大きく変えているようです。

 原作はamazonとU-NEXTで期間限定無料だったので4巻まで読みました。残りを読むか、2カ月待つか、悩むところです。
▼観客7人(公開初日の午前)2時間。

「違う惑星の変な恋人」

 思いのベクトルが一方通行で交わらない4人の男女を描く恋愛群像コメディ。

 同じ美容室で働くむっちゃん(莉子)とグリコ(筧美和子)。その美容室にグリコの元カレのモー(綱啓永)がやってくる。モーはグリコに復縁を迫っていた。グリコはシンガーソングライター・ナカヤマシューコ(みらん)のライブで、旧知のベンジー(中島歩)と再会。同行していたムッちゃんはベンジーに一目惚れする。ベンジーはナカヤマシューコと関係を持っていて、むっちゃんからの恋心も知っていたが、グリコに惹かれていた。恋の矢印を整理するために、4人は一堂に会する。

 セリフがいちいちおかしくて、4人が集まって話し合う場面は爆笑です。木村聡志監督の演出も的確。タイトルは終盤にあるモーがむっちゃんに言うセリフ「それなら、俺は空なんか簡単に飛び越えて、一緒にいて楽しい気持ちだけで、その燃料だけで違う惑星にだって連れてってやるよ」から来ているようです。
▼観客2人(公開初日の午後)1時間56分。

「FLY! フライ!」

 安全で住み慣れた池を離れて初めての渡りをすることにしたカモ一家を描くアニメーション。ジャマイカを目指す旅の途中でさまざまな危険な目に遭いますが、何とか切り抜け、たくましくなっていきます。

 傑作の多いイルミネーション製作ですが、物語が予想の範囲にとどまり、平凡な出来でした。バンジャマン・レネール監督はアカデミー長編アニメ映画賞候補となった「くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ」(2012年、フランス)の監督の1人。
IMDb6.7、メタスコア56点、ロッテントマト73%。
▼観客20人足らず(公開7日目の午後)1時間23分。

2024/03/17(日)「デューン 砂の惑星 PART2」ほか(3月第3週のレビュー)

「デューン 砂の惑星 PART2」

 3年ぶりの続編。前作はVFXが素晴らしかったですが、話はそんなに進まず、ハルコンネン家に襲われて父親を殺された主人公ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)と母レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)がデューンと呼ばれる辺境の惑星アラキスに逃げてきたところで終わりました。

 続編では砂漠の民フレメンの救世主として台頭し、ハルコンネン家に復讐するポールの姿が描かれます。巨大なサンドワーム(砂虫)をはじめ、今回もVFXが高いレベルを達成していて、来年のアカデミー賞で視覚効果賞ノミネートは確実。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしい正攻法の重厚なタッチで2時間46分の長尺を飽きさせません。できるだけ音響の良い大きなスクリーンで見た方が良い映画になっています。前作の振り返りはないので、アラキスだけに存在し、争奪戦となっている香料(メランジ)の意味などこの映画だけでは分からない部分もあり、前作は見ておいた方が良いです。

 今回のメインの敵はクライマックスでポールと対決するハルコンネン家のフェイド=ラウサで、異常性と残虐性を備えたラウサを「エルヴィス」(2022年、バズ・ラーマン監督)のオースティン・バトラーが不気味に演じています(この役、デヴィッド・リンチ版ではスティングが演じました)。

 フランク・ハーバート原作の完璧な映像化、といいたいところですが、惜しむらくはエモーショナルな高まりが不足気味です。ポールは何を考えているのか分からないところがあり、感情を表に出すこともまれです(これはヴィルヌーヴの他の作品にも言えることです)。エモーショナルな部分を引き受けているのはポールと愛し合うことになるフレメンのチャニ(ゼンデイヤ)で、可哀想な立場に置かれたクライマックスのチャニの姿は悲しいです。

 当然のことながら、まだまだ話は終わらず、第3作も作ってもらわないと困ります。ヴィルヌーヴは第3作の脚本を執筆中だそうですが、製作が決定したわけではありません。この映画のヒットにかかっています。
IMDb8.9、メタスコア79点、ロッテントマト92%。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)2時間46分。

「DOGMAN ドッグマン」

 リュック・ベッソン監督が実話をヒントに作ったアクション。といっても、実話をヒントにしたのは主人公が犬の檻の中で育ったという部分だけ。一つではなくフランス、アメリカ、ルーマニアでの事例を参考にしたそうです。アニメの「狼少年ケン」(1963年)をはじめ、犬や狼に育てられた人間という設定の物語はたくさんありますが、ベッソンが作ると、当然のようにノワールなアクションになりますね。

 警察の検問で止められたトラックに多数の犬がいて、運転席にはけがをした女装の男がいた。男は警察で精神科医のデッカー(ジョージョー・T・ギッブス)にこれまでの半生を話す、という形で主人公ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の物語が描かれます。

 ダグラスは犬の檻で父親から撃たれ、下半身不随となり、車椅子で生活しています。養護施設で憧れた女性への恋はかなわず、ドラアグクイーンとなり、犬を使った盗みがギャングに知られて襲われることになります。傑作「ニキータ」(1990年)や「レオン」(1994年)のレベルには達していませんが、クセのある主人公の設定などベッソンらしいアクションだと思います。
IMDb6.7、メタスコア40点、ロッテントマト61%。
▼観客7人(公開5日目の午後)1時間54分。

「あの夏のルカ」

 コロナ禍のため配信スルーだったピクサーの3作品(「私ときどきレッサーパンダ」「あの夏のルカ」「ソウルフル・ワールド」)が劇場公開されることになりましたが、これだけ見ていませんでした。「ローマの休日」風のポスターがあり、スクーターのヴェスパが登場するので恐らく1950年代が舞台。北イタリアの地中海沿岸の町で、海に住むシー・モンスターの少年ルカの冒険と成長を描いています。ルカは掟を破って陸に上がり、同じくシー・モンスターのアルベルトとともに正体を隠しながら人間の世界を冒険する、というストーリー。

 シー・モンスターは陸に上がって体が乾くと、人間の姿になりますが、濡れると元に戻るという設定です。見ているうちに、見覚えのあるシーンがたくさん。見ていなかったというのは勘違いで、見たことを記録していなかっただけのようです。というか、ボーっと見てたんでしょうね。人種差別の比喩も盛り込みつつ、しっかりと作られた少年少女向けの3DCGアニメでした。

 日本版のエンドクレジットで2曲目に流れるのは井上陽水の名曲「夏休み」。ヨルシカのボーカルsuisが歌ってます。監督は短編「月と少年」(2011年)のエンリコ・カサローザ。1時間36分。
IMDb7.4、メタスコア71点、ロッテントマト91%。

「映画 マイホームヒーロー」

 原作コミック(山川直輝原作、朝基まさし作画)のテレビドラマ版の7年後を描く劇場版。この原作は一昨年、アニメにもなりましたが、死体を溶かし、解体するなど陰惨な印象が強くて3話ぐらいで見るのをやめました。ドラマが見続けられたのは主人公を演じる佐々木蔵之介が明るいキャラだからでしょう。

 ドラマ版は娘の零花(齋藤飛鳥)に暴力を振るい、さらに殺そうとしていた半グレの麻取延人(内藤秀一郎)を主人公の鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)が殺してしまったことから半グレ組織に狙われるというストーリーでした。ラストで延人の父親義辰(吉田栄作)は自殺して罪を哲雄に着せようとしますが、哲雄は義辰の死体を山中に埋め、逃げおおせました。

 ところが、その死体を埋めた場所で土砂崩れが発生し、死体が発見されてしまうというのが映画の発端。義辰となくなった10億円の行方を捜していた半グレ組織から再び哲雄が狙われることになります。今回初めて出てきた10億円の話など脚本に穴が多いのが残念ですが、刑事になった零花を演じる齋藤飛鳥はサンドバッグへのパンチや蹴りでキレのある動きを見せて感心しました。できれば、本格的な格闘シーンも欲しかったところ。人気アイドルなので、けがの恐れのあるシーンは無理なのでしょうね。
▼観客12人(公開7日目の午後)1時間57分。

「ダムゼル 運命を拓きし者」

 「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のミリー・ボビー・ブラウンが主演したNetflixオリジナル作品。主人公エロディはハンサムな王子と結婚することになるが、その結婚は王族が過去に交わしたドラゴンとの契約を守るため彼女をいけにえにするものだった。ドラゴンのいる洞窟に投げ込まれたエロディは必死に脱出を図る。

 ダムゼルは乙女の意味。テレビスケールの話ですが、ブラウンは頑張っていて、以前よりきれいになった印象も。共演はアンジェラ・バセット、レイ・ウインストーン、ロビン・ライトなど。監督は「28週後…」などのファン・カルロス・フレナディージョ。1時間50分。
IMDb6.2、メタスコア46点、ロッテントマト58%。

2024/03/10(日)「ゴールド・ボーイ」ほか(3月第2週のレビュー)

「ゴールド・ボーイ」

 中国の東野圭吾といわれる紫金陳(ズー・ジンチェン)の小説「悪童たち」を金子修介監督が映画化。これは事前情報をまったく入れずに見た方が良いミステリー&サスペンスです。沖縄を舞台にした翻案と脚色(港岳彦)がとてもうまく行っていて、少年少女を演じる3人も良く、特に羽村仁成と星乃あんなの幼いロマンス描写が映画に魅力を加えています。最近の日本のミステリー映画では出色の出来で、金子監督としても会心の作品なんじゃないでしょうか。

 沖縄の事業家の婿養子、東昇(岡田将生)は富と地位を手に入れるため、写真撮影中に義父母を崖から突き落とす。事故に見せかけた完全犯罪のはずだったが、その決定的な場面を13歳の少年、安室朝陽(羽村仁成)たちのカメラが動画で捉えていた。貧困や家族の問題を抱えた朝陽や浩(前出燿志)と夏月(星乃あんな)の兄妹は東を脅迫して6000万円を手に入れようとする。

 成績優秀な朝陽は両親が離婚して、母親(黒木華)と二人暮らし。父親(北村一輝)は別の女と再婚し、その娘は朝陽と同じクラスでしたが、最近自殺し、その母親は朝陽が殺したと思い込んでいます。昇は妻(松井玲奈)と離婚寸前で、そうなったら遺産は手に入らなくなる立場にあります。映画はそうした背景を描きながら、血みどろの殺人が連続し、意外な展開(容赦ないです)が続きます。岡田将生はサイコ味のある役柄にぴったり。刑事役の江口洋介も良いです。

 中国で社会現象を起こしたというドラマ化作品「バッド・キッズ 隠秘之罪」はU-NEXT、amazonプライムビデオなどで配信中です(全12話)。

 なぜ同じ話で12話もかかるのかと思いながら第1話を見ました。義父母を崖から突き落とす冒頭は映画と同じ。偶然それを動画撮影していた3人の境遇を描きながら、その場面が映っていることに気づくまでを第1話の76分かけて描いています。金子修介監督によると、ドラマ版は「殆ど参考にしなかった」そうです。「途中から原作を外れて納得出来ない展開になって長いので、脚本の港氏にも見てもらっていない」。そういうわけなので無理に見る必要はないのでしょう。原作は読みたいと思いました(ポチりました)。

 映画は続編の構想もあるようですが、どうやって続けるんでしょう、これ。
▼観客11人(公開初日の午前)2時間9分。

「52ヘルツのクジラたち」

 本屋大賞を受賞した町田そのこの原作を成島出監督が映画化。東京から海辺の街の一軒家に移り住んできた貴瑚(杉咲花)は母親から虐待を受ける少年(桑名桃李)と出会う。自分も実の母親から虐待を受けて育った貴瑚は過去を振り返り、悲惨な境遇から救ってくれた親友美晴(小野花梨)と安吾(志尊淳)との交流、結婚を約束した新名(宮沢氷魚)との日々を回想する。

 短いページ数の中にさまざまな不幸と不運を盛り込みすぎとの批判は原作にもあるようですが、映画にも同じことが言えます。それが描写不足、説得力不足につながっていて、特に志尊淳の選択には違和感を覚えました。少年のひどい母親を演じる西野七瀬がリアルにうまいです。
▼観客13人(公開4日目の午後)2時間16分。

「瞳をとじて」

 83歳のビクトル・エリセ監督が「エル・スール」(1983年、キネ旬ベストテン14位)以来40年ぶりに撮った長編劇映画。と聞くと、なぜそんなに長期間撮れなかったんだと思いますが、オムニバスの短編は「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」(2012年)、「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」(2002年)など5本撮っていますし、「マルメロの陽光」(1992年、キネ旬ベストテン5位)などのドキュメンタリーもあります。長編劇映画がなかっただけです。

 映画「別れのまなざし」の撮影中、主演俳優のフリオ・アレナス(ホセ・コロナド)が失踪した。警察は海沿いの崖にフリオの靴があったことから自殺と判断するが、死体は見つからなかった。22年後、テレビが失踪事件を取り上げ、元映画監督でフリオの親友だった作家のミゲル(マノロ・ソロ)が出演依頼を受ける。ミゲルはフリオと過ごした青春時代や自らの半生を回想。番組終了後、フリオによく似た男が海辺の高齢者施設にいるという情報が寄せられる。

 前半は面白みに欠けるんですが、フリオが見つかってから大きく盛り返した印象。「映画1本で奇跡を起こせると思うのか?」というセリフが終盤にあり、映画に関する映画でもあります。また、「ミツバチのささやき」のアナ・トレントが50年ぶりに同じ役名のアナを演じていることもあって、時の流れを強く感じさせる映画にもなってます。
IMDb7.3、メタスコア86点、ロッテントマト94%。
▼観客14人(公開2日目の午後)2時間49分。

「ミツバチのささやき」

 というわけで、1973年のビクトル・エリセ監督作品(日本公開は「エル・スール」と同じ1985年)を事前に見ておきました。昨年の「午前十時の映画祭13」のラインナップに入っていましたし、ソフト化もされていますが、劇場で見たのはたぶん37年ぶり。

 1940年、内戦終結直後のスペインが舞台。小さな村にやってきた映画の巡回上映で、6才の少女アナ(アナ・トレント)は「フランケンシュタイン」(1931年、ジェームズ・ホエール監督)を見て心奪われる。アナは姉のイサベルからフランケンシュタインは怪物ではなく精霊で、村はずれの一軒家に隠れていると聞かされる。ある夜、脱走兵らしい男が列車から飛び降り、荒野の中の小屋に逃げ込んだ。翌日、小屋にやってきたアナはその男と出会う。

 脱走兵とアナの出会いはフランケンシュタインの怪物と盲目の少女の出会いに重ねられていて、怪物が村人から殺されたように脱走兵もそうなります。当時のスペインの国情を知らないと、理解しにくい面がありますが、アナ・トレントの可憐さとフランケンシュタインの怪物は心に残りますね。
IMDb7.8、メタスコア87点、ロッテントマト96%。キネ旬ベストテン4位。
▼観客5人(公開5日目の午後)1時間39分。

「ARGYLLE アーガイル」

 冒頭のデュア・リパ、ヘンリー・カヴィル、ジョン・シナによるダンスシーン、アクションシーン、チェイスシーンはスピード感たっぷりで見応えがあり、期待が高まりましたが、その後は残念な出来に終わっています。この理由は主に主演のブライス・ダラス・ハワードがまったくアクションに向いていない体型だからです。

 いや、太ったアクション俳優もいますけど、ハワードは元がスリムなだけに現状の体型には悲しさしかありませんし、アクションにリアリティがありません。オバさん化(43歳)が進行しているのかと思ったら、元々、太りやすい体質なんだそうで、過去にも「激太り」を批判されてますね。

 スパイアクション小説シリーズ「アーガイル」の作者エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード)はある日、謎の男たちに命を狙われ、エイダン(サム・ロックウェル)と名乗るスパイに助けられる。エリーが狙われたのは「アーガイル」シリーズが現実のスパイ組織の行動と偶然に一致していたためだった。エリーはエイダンとともに世界を駆け巡ることになる。

 作家が書いたことが偶然すべて本当のことだったというシチュエーションの映画や小説は過去にもあったと思いますが、具体的なタイトルが思い出せません。そんなにオリジナリティーのある設定でないことは確かです。

 監督は「キングスマン」シリーズのマシュー・ヴォーン。毎回、アクションがスローモーション演出なので鼻についてきた面はあるものの、アクション自体は悪くありません。ラストを見ると、「キングスマン」同様にシリーズ化の意向があるのかもしれませんね。

 映画初出演のデュア・リパは今年のグラミー賞オープニングのセクシーなパフォーマンスが素晴らしかったです。ビジュアル的には満点なので、もっと映画に出てほしいところです。この映画も冒頭のまま、デュア・リパ主演だったら、不満はなかったんですが、演技力は未知数なので無理だったんでしょうね。
IMDb6.0、メタスコア35点、ロッテントマト33%。
▼観客11人(公開7日目の午前)2時間19分。

「パレード」

 藤井道人脚本・監督のNetflixオリジナル作品。この世に思いを残した死者たちを描くファンタジーです。海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)は離ればなれになった息子・良を捜すうち、自分が津波に流されて死んだことを知る。美奈子は同じような境遇の仲間と出会い、共同生活を送ることになる。死者たちにはそれぞれに諦めきれないことを抱えていた。

 藤井監督の資質はこういう心優しい作品にあると思える佳作。主演の長澤まさみをはじめ坂口健太郎、横浜流星、森七菜、黒島結菜、中島歩、深川麻衣、リリー・フランキー、寺島しのぶ、舘ひろしといったキャスティングの豪華さとエキストラの多さを見ると、その辺の日本の劇場用映画より予算は潤沢だなと感じました。
映画.com3.3、Filmarks3.7、IMDb6.7。

2024/03/03(日)「マダム・ウェブ」ほか(3月第1週のレビュー)

 コロナ禍で配信スルーになっていたディズニー&ピクサーのアニメーション3本が来月にかけて劇場公開されます。「私ときどきレッサーパンダ」(15日公開)「あの夏のルカ」(29日公開)「ソウルフル・ワールド」(4月12日公開)で、いずれもアカデミー長編アニメ映画賞の候補になり、「ソウルフル…」は受賞しました。劇場公開を見越していたためか、ディズニープラス以外の配信サイトでは見放題・レンタルはなく、購入(2000円ぐらい)だけのようです。数人で見るなら、購入した方が安いですけどね。というか、ディズニープラスに加入して見るのが一番安いです。

「マダム・ウェブ」

 アメリカでの評価はIMDb3.8、メタスコア26点、ロッテントマト12%。さんざんな酷評を聞いていたので期待値0で見たら、意外に悪くありませんでした。という意見は多く、ネットニュースにもなってました。

 2003年のニューヨーク。救命士のカサンドラ(キャシー)・ウェブ(ダコタ・ジョンソン)は活動中に生死を彷徨う事故に遭ったことがきっかけで予知能力を発現する。ある日、キャシーは偶然出会った3人の少女が黒いマスクとスーツに身を包んだ謎の男エゼキエル(タハール・ラヒム)に殺害される未来を見て、少女たちの命を救う。少女たちは将来、スパイダーウーマン、スパイダーガールになる存在だった。蜘蛛の研究者でキャシーを妊娠中だったキャシーの母親は1973年、ペルーで重傷を負い、現地人から蜘蛛の能力を授けられていた。母親は死ぬが、能力はキャシーに受け継がれていたらしい。エゼキエルは母親に同行していた男だった。

 原作のマダム・ウェブはスパイダーマンを補佐する盲目の老婦人で、生まれつきの重症筋無力症だそうです。映画とは設定が異なりますが、映画のキャシーもラストで同じような境遇となります。「X-MEN」で言えば、エグザヴィア教授のような存在であり、マダム・ウェブが主人公としてシリーズ化されるとは考えにくいです。というか、アメリカでは興行的にも惨敗なのでシリーズ化はないでしょう。

 「ヴェノム」(2018年、ルーベン・フライシャー監督)に始まる「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」(SSU)の1本ですが、どうもSSUは質的に信頼のおけない作品が多くて残念です。
▼観客8人(公開6日目の午後)1時間56分。

「犯罪都市 NO WAY OUT」

 マ・ドンソク主演のアクションシリーズ第3作。マ・ソクト刑事(マ・ドンソク)はソウル広域捜査隊に異動し、転落死事件の捜査を担当する。事件の背後に新種の合成麻薬と日本のヤクザが関わっているらしい。ヤクザのボス一条(國村隼)は麻薬を盗んだ組織員たちを処理するため極悪非道なリキ(青木崇高)を密かにソウルに送り込む。消えた麻薬を奪おうと目論む刑事チュ・ソンチョル(イ・ジュニョク)も加わり、事件は三つ巴の様相を呈する。

 マ・ドンソクの腕力だけを頼りにしたアクション映画で、面白いんですけど、さすがにほかのパターンも見たくなりました。前作はベトナム、今回は日本ですが、この調子でアジアのいろいろな国が絡む事件を解決していくんでしょうかね。
IMDb6.6、ロッテントマト100%(アメリカでは限定公開)。
▼観客13人(公開5日目の午後)1時間45分。

「コットンテール」

 日英合作映画で、キネマ旬報の分類では外国映画になってます。主人公の兼三郎(リリー・フランキー)は死んだ妻・明子(木村多江)が「遺骨をイギリスのウィンダミア湖に撒いてほしい」という遺言を残していたことを知る。疎遠となっていた一人息子慧(トシ)(錦戸亮)の家族とともに英国へ行くが、些細なことで息子と喧嘩した兼三郎は一人でウィンダミア湖に向かうことになる。その過程で兼三郎は若い頃の自分たち夫婦のことを回想する。

 演出も演技も悪くありませんが、話が今一つ響いてきません。リリー・フランキーが独り善がりに見えてしまう場面があるのは脚本の仕上げに少し難があるためでしょう。若い時の木村多江を演じる恒松祐里が良いです。

 監督のパトリック・ディキンソンはオックスフォード大と早稲田大で日本映画を学び、故ドナルド・リチーに師事。脚本家兼監督として短編映画を撮った後、BBCやNetflixでプロデューサーを務めたそうです。これが長編映画デビュー作。リリー・フランキーと木村多江が夫婦を演じた「ぐるりのこと。」(2008年、橋口亮輔監督)も当然見ているそうです。
▼観客2人(公開初日の午前)1時間34分。

「アメリカン・フィクション」

 アカデミー作品、主演男優、助演男優、脚色賞など5部門にノミネートされた作品。アメリカでは劇場公開されましたが、日本を含む多くの国ではamazonプライムビデオで配信されています

 講義中の差別用語を批判されて休職した大学講師で作家のモンク(ジェフリー・ライト)は母親が認知症となり、施設に入れる費用に困っていた。作品に「黒人らしさが足りない」と評されて自棄になってペンネームで書いたギャング主人公の黒人エンタメ小説は皮肉なことにベストセラーとなる。文学賞も受賞して世間の関心が高まり、匿名のままではいられなくなる。というストーリーで、出版業界や黒人作家の作品の扱われ方を風刺的に描いたコメディです。

 監督はテレビシリーズ「ウォッチメン」などの脚本を書き、これが監督デビューのコード・ジェファーソン。原作はパーシバル・エベレット。中絶医の妹の病院に行った主人公が入り口で金属探知機で検査される場面があり、意味が分からなかったんですが、町山智浩さんの解説によると、アメリカでは中絶医は保守派から命を狙われることがあるんだそうです。

IMDb7.6、メタスコア81点、ロッテントマト94%。1時間58分。

「禁書のイロハ」

 アカデミー短編ドキュメンタリー賞候補。子供向けの本が排除されたり、制限されたりする現状を追った内容。そういう扱いを受けているのは人種差別やLGBTQを扱った本で、「アンネの日記」やカート・ヴォネガット「スローターハウス5」まで排除されていることに驚きます。シエラ・ネヴィンス、トリッシュ・アドレジック、Nazenet Habtezghi監督。27分。IMDb6.3。WOWOWオンデマンドで配信中。

「ラスト・リペア・ショップ」

 これもアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞候補。ロサンゼルス市が提供している公立学校対象の楽器無償修理サービスを行う職人たちを取り上げた内容。職人の一人はゲイ、もう一人はメキシコ移民のシングルマザーで、それぞれに差別や貧困の体験を語り、同時に楽器が生徒たちにもたらす夢や希望を描いています。胸を打つ場面がある深い内容で、これは受賞してもおかしくないと思えました。ベン・プラウドフット、クリス・パワーズ監督。40分。IMDb7.3。ディズニープラスで配信中。