メッセージ

2001年09月18日の記事

2001/09/18(火)「ウォーターボーイズ」

 男子校の唯一の水泳部員がひょんなことからシンクロナイズド・スイミングを始める青春映画。発端はなんだか「リトル・ダンサー」に似ているが、感動的な展開だったあの映画とは異なり、こちらはゲラゲラ笑って見終わる。下品な笑いはなく、実にさわやか。気持ちがいい。矢口史靖監督の演出はスピーディーかつ的確で、しみじみなどという湿った世界とは無縁のカラリとした世界。あれよあれよと言う間の1時間31分である。シンクロの専門家に教わらず、上達するのは現実的ではないし、ちょっと気にはなるが、大会に出るわけでもなく、文化祭での発表が目的なのだからこれでいいのかもしれない。

 大会で主人公の鈴木智(妻夫木聡)が100メートルを泳ぎ終わると、コースの左右に他の選手がいない。まだ他の選手はゴールしていないのか? 「え、まさか」とつぶやく智に「速く上がれよ」との声。何のことはない、他の選手はとっくにプールから上がっていたのだった。というオープニングから快調そのもの。智は唯野高校の唯一の水泳部員。3年生最後の大会も終わり、部は廃部寸前だった。そこにスタイル抜群の若い佐久間先生(真鍋かおり)が赴任してくる。水泳部の顧問になった佐久間先生を目当てに部員は28人に増える。しかし、佐久間先生、実は水泳ではなくシンクロの先生だったことが分かり、一挙に5人にまで減ってしまう。男子のシンクロに意欲を燃やす先生は文化祭で披露することを勝手に決めるが、なんと妊娠8カ月であることが判明。出産準備のため実家に帰ってしまう。もうこのあたりのつるべ打ちのギャグが最高である。智たち同様、観客もあっけにとられるほかない展開。

 5人はこれ幸いと文化祭での発表は取りやめにする。しかし、周囲からバカにされたのに腹を立て、やはり文化祭を目指すことになる。ところが、プールは既にバスケットボール部が釣り堀にするため、魚を放流していた。魚をすべてすくい上げたら、プールを使わせてやるとのバスケット部の言葉にカチンと来ながらも5人は魚をかき集めようとする。水を抜いて捕まえようとしたのはいいが、途中でガードマンに見つかり、魚はすべて死んでしまう。こうなったら、文化祭で入場料を取って弁償するしかない。という風に追いつめられた設定を用意しているのが非常にうまい。

 落ちこぼれの生徒が困難を克服しながら目標に突っ走るというのはスポーツ映画の常道で、「がんばれベアーズ」や「シコふんじゃった。」、近くは「タイタンズを忘れない」まで必ずこういう設定を用意している。矢口監督はそうしたスポ根映画になるのを嫌ったそうで、確かにスポ根とは一線を画した笑い満載の青春映画になっている(文化祭の最大の目標が近くの桜木女子高の生徒をいかに多く集めるか、という点で実行委が一致するのがおかしい)。しかし、成功の要因はやはり落ちこぼれがヒーローになるというスポ根映画の快感にある。矢口監督はその過程に細かいギャグをたくさん詰め込んでいるので、スポ根には見えないが、路線としては同じなのである。だからシンクロの専門家に教わるシーンを少し入れれば、説得力は増

したと思う。

 主人公をはじめ高校生を演じる役者たちは決して演技がうまいわけではないが、実に好感が持てるキャラクターばかり。主人公のガールフレンドで空手の達人を演じる平山綾もいいし、水族館のイルカの調教師役で5人に(いいかげんな)合宿特訓をする竹中直人も「Red Shadow 赤影」よりおかしい。シンクロシーンに関しては世評ほど僕はすごいとは思わなかったが、映画を締め括るクライマックスとして申し分ない仕上がりである。

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