2001/03/11(日)「ワンピース ねじまき島の冒険」

 ビデオクリップのような「ジャンゴのダンスカーニバル」、昨年春の劇場版の続編「デジモン・アドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲」との3本立て。もちろんメインは「ワンピース」で、東京でも興行収益1位となっている。

 「ワンピース」のストーリーというのは以前にも書いたが、正義、友情、義理、人情の世界である。積もり積もった怒りが最後に爆発し、悪を倒すというパターン。今回はトランプ兄弟という海賊に支配されたねじまき島でルフィ、サンジ、ゾロ、ナミ、ウソップらの面々がいつも通りの活躍をする。安心して見ていられる仕上がりで、作画もテレビより丁寧。映画だから、テレビより面白いものを作ろうという肩肘張った部分はなく、テレビの延長として素直に楽しむ映画だろう。

2001/03/01(木)「BROTHER」

 日英合作で、撮影はハリウッド。しかし、北野武の映画であることに変わりはない。アクション路線の集大成を目指したようで、いかにも北野武らしいショットが多数出てくる。デビュー作「その男、凶暴につき」(89年)とその後の数作を見て、どれも未完成な感じを受けた。だから僕は映画監督としての北野武をそれほど高く評価してはいない。唯一波長があったのが「あの夏、いちばん静かな海。」(91年)だけれど、これにも未完成な感じはつきまとった。

 その「あの夏…」に出ていた真木蔵人が10年ぶりに北野作品に出演している。日本を追われたヤクザ山本(ビートたけし)が単身渡米する。ロサンゼルスには弟のケン(真木蔵人)がおり、ヤクの売人をやっている。上部組織とのいざこざを山本が乱暴なやり方ですっきり解決。黒人らと組織を作り、次第にのし上がっていく。しかし、マフィアとの抗争で仲間は次々に死んでいく。

 ヤクザ映画の指を詰めるシーンが僕は生理的にダメなのだが、この映画にはそういうシーンが3回出てくる。「仁義なき戦い」を経た映画とは思えない古風なシーンも皮肉を込めて描かれている。ハリウッド方式の凄絶な銃撃シーンはジョン・ウーとは違った重さが感じられる。いや重さというと、少し違うかもしれない。熱いジョン・ウーの映画に比べて、北野武の映画はいつも冷たい感じがするのである。この冷たさはクールとも違う。決してかっこよくはない。僕が北野映画に感じてきた未完成な感じは、フィルムから受けるこの冷たさによるものなのだろう。それは恐らく、監督の死生観と切り離せないものである。

 今回、面白かったのは冷たい描写に挟まれる軽妙な描写で、デニー(オマー・エプス)と山本のやりとりや、山本の弟分である加藤(寺島進)のバスケットボールの場面などおかしい。クスクス笑える場面がほかにもいくつかあり、そうしたことが映画に膨らみを与えている。役者では加藤雅也の熱い乱暴なヤクザが良かった。

2001/02/21(水)「回路」

 黒沢清監督のホラー。ネットスリラーというコピーだが、破滅SFに近い。主人公の麻生久美子と加藤晴彦の身近で友人らが次々に不審な死を遂げる。加藤晴彦自身もインターネットで不気味な映像を見る。大学の先輩(武田真治)が言うには霊界の広さには限界があり、人間界と通じる回路ができたことで、そこから幽霊たちが人間界を侵食しているらしい。幽霊に触れた者は死んでしまう。

 基本のアイデアはファンタジーなのだが、終盤の展開は破滅SFそのもの。人通りの絶えた東京で主人公2人は宛てもなく逃走する。あかずの部屋、煙を吐きながら墜落する飛行機、薄暗い画面、漂う煙、ぼんやりした幽霊…。不気味な雰囲気を漂わせる風景や幽霊の描き方など黒沢清の絵作りには感心させられる。脚本には弱い部分もあるが、こういうアイデアは珍しい。

 怖がりの僕にはホラーとしての味付けは余計なものに思えるが、SFとしては幽霊の侵食にきちんとした理論がほしいところ。もちろん元々SFを作ろうというつもりはなく、ホラーの設定を突きつめていったら、SFに近くなったのだろう。凡百のホラーを超えたユニークな作品であることは間違いない。加藤晴彦は好演。麻生久美子、小雪も良かった。