2024/03/17(日)「デューン 砂の惑星 PART2」ほか(3月第3週のレビュー)

「デューン 砂の惑星 PART2」

 3年ぶりの続編。前作はVFXが素晴らしかったですが、話はそんなに進まず、ハルコンネン家に襲われて父親を殺された主人公ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)と母レディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)がデューンと呼ばれる辺境の惑星アラキスに逃げてきたところで終わりました。

 続編では砂漠の民フレメンの救世主として台頭し、ハルコンネン家に復讐するポールの姿が描かれます。巨大なサンドワーム(砂虫)をはじめ、今回もVFXが高いレベルを達成していて、来年のアカデミー賞で視覚効果賞ノミネートは確実。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしい正攻法の重厚なタッチで2時間46分の長尺を飽きさせません。できるだけ音響の良い大きなスクリーンで見た方が良い映画になっています。前作の振り返りはないので、アラキスだけに存在し、争奪戦となっている香料(メランジ)の意味などこの映画だけでは分からない部分もあり、前作は見ておいた方が良いです。

 今回のメインの敵はクライマックスでポールと対決するハルコンネン家のフェイド=ラウサで、異常性と残虐性を備えたラウサを「エルヴィス」(2022年、バズ・ラーマン監督)のオースティン・バトラーが不気味に演じています(この役、デヴィッド・リンチ版ではスティングが演じました)。

 フランク・ハーバート原作の完璧な映像化、といいたいところですが、惜しむらくはエモーショナルな高まりが不足気味です。ポールは何を考えているのか分からないところがあり、感情を表に出すこともまれです(これはヴィルヌーヴの他の作品にも言えることです)。エモーショナルな部分を引き受けているのはポールと愛し合うことになるフレメンのチャニ(ゼンデイヤ)で、可哀想な立場に置かれたクライマックスのチャニの姿は悲しいです。

 当然のことながら、まだまだ話は終わらず、第3作も作ってもらわないと困ります。ヴィルヌーヴは第3作の脚本を執筆中だそうですが、製作が決定したわけではありません。この映画のヒットにかかっています。
IMDb8.9、メタスコア79点、ロッテントマト92%。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)2時間46分。

「DOGMAN ドッグマン」

 リュック・ベッソン監督が実話をヒントに作ったアクション。といっても、実話をヒントにしたのは主人公が犬の檻の中で育ったという部分だけ。一つではなくフランス、アメリカ、ルーマニアでの事例を参考にしたそうです。アニメの「狼少年ケン」(1963年)をはじめ、犬や狼に育てられた人間という設定の物語はたくさんありますが、ベッソンが作ると、当然のようにノワールなアクションになりますね。

 警察の検問で止められたトラックに多数の犬がいて、運転席にはけがをした女装の男がいた。男は警察で精神科医のデッカー(ジョージョー・T・ギッブス)にこれまでの半生を話す、という形で主人公ダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の物語が描かれます。

 ダグラスは犬の檻で父親から撃たれ、下半身不随となり、車椅子で生活しています。養護施設で憧れた女性への恋はかなわず、ドラアグクイーンとなり、犬を使った盗みがギャングに知られて襲われることになります。傑作「ニキータ」(1990年)や「レオン」(1994年)のレベルには達していませんが、クセのある主人公の設定などベッソンらしいアクションだと思います。
IMDb6.7、メタスコア40点、ロッテントマト61%。
▼観客7人(公開5日目の午後)1時間54分。

「あの夏のルカ」

 コロナ禍のため配信スルーだったピクサーの3作品(「私ときどきレッサーパンダ」「あの夏のルカ」「ソウルフル・ワールド」)が劇場公開されることになりましたが、これだけ見ていませんでした。「ローマの休日」風のポスターがあり、スクーターのヴェスパが登場するので恐らく1950年代が舞台。北イタリアの地中海沿岸の町で、海に住むシー・モンスターの少年ルカの冒険と成長を描いています。ルカは掟を破って陸に上がり、同じくシー・モンスターのアルベルトとともに正体を隠しながら人間の世界を冒険する、というストーリー。

 シー・モンスターは陸に上がって体が乾くと、人間の姿になりますが、濡れると元に戻るという設定です。見ているうちに、見覚えのあるシーンがたくさん。見ていなかったというのは勘違いで、見たことを記録していなかっただけのようです。というか、ボーっと見てたんでしょうね。人種差別の比喩も盛り込みつつ、しっかりと作られた少年少女向けの3DCGアニメでした。

 日本版のエンドクレジットで2曲目に流れるのは井上陽水の名曲「夏休み」。ヨルシカのボーカルsuisが歌ってます。監督は短編「月と少年」(2011年)のエンリコ・カサローザ。1時間36分。
IMDb7.4、メタスコア71点、ロッテントマト91%。

「映画 マイホームヒーロー」

 原作コミック(山川直輝原作、朝基まさし作画)のテレビドラマ版の7年後を描く劇場版。この原作は一昨年、アニメにもなりましたが、死体を溶かし、解体するなど陰惨な印象が強くて3話ぐらいで見るのをやめました。ドラマが見続けられたのは主人公を演じる佐々木蔵之介が明るいキャラだからでしょう。

 ドラマ版は娘の零花(齋藤飛鳥)に暴力を振るい、さらに殺そうとしていた半グレの麻取延人(内藤秀一郎)を主人公の鳥栖哲雄(佐々木蔵之介)が殺してしまったことから半グレ組織に狙われるというストーリーでした。ラストで延人の父親義辰(吉田栄作)は自殺して罪を哲雄に着せようとしますが、哲雄は義辰の死体を山中に埋め、逃げおおせました。

 ところが、その死体を埋めた場所で土砂崩れが発生し、死体が発見されてしまうというのが映画の発端。義辰となくなった10億円の行方を捜していた半グレ組織から再び哲雄が狙われることになります。今回初めて出てきた10億円の話など脚本に穴が多いのが残念ですが、刑事になった零花を演じる齋藤飛鳥はサンドバッグへのパンチや蹴りでキレのある動きを見せて感心しました。できれば、本格的な格闘シーンも欲しかったところ。人気アイドルなので、けがの恐れのあるシーンは無理なのでしょうね。
▼観客12人(公開7日目の午後)1時間57分。

「ダムゼル 運命を拓きし者」

 「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のミリー・ボビー・ブラウンが主演したNetflixオリジナル作品。主人公エロディはハンサムな王子と結婚することになるが、その結婚は王族が過去に交わしたドラゴンとの契約を守るため彼女をいけにえにするものだった。ドラゴンのいる洞窟に投げ込まれたエロディは必死に脱出を図る。

 ダムゼルは乙女の意味。テレビスケールの話ですが、ブラウンは頑張っていて、以前よりきれいになった印象も。共演はアンジェラ・バセット、レイ・ウインストーン、ロビン・ライトなど。監督は「28週後…」などのファン・カルロス・フレナディージョ。1時間50分。
IMDb6.2、メタスコア46点、ロッテントマト58%。

2024/03/11(月)第96回アカデミー賞受賞結果

 第96回アカデミー賞の授賞式が11日あり、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」が作品・監督など7部門を受賞しました。結果は次の通りです(★が受賞作)。
【作品賞】
★「オッペンハイマー」
「アメリカン・フィクション」
「落下の解剖学」
「バービー」
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
「マエストロ その音楽と愛と」
「パスト ライブス 再会」
「哀れなるものたち」
「関心領域」

【監督賞】
★クリストファー・ノーラン「オッペンハイマー」
ジュスティーヌ・トリエ「落下の解剖学」
マーティン・スコセッシ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
ヨルゴス・ランティモス「哀れなるものたち」
ジョナサン・グレイザー「関心領域」

【主演男優賞】
★キリアン・マーフィー「オッペンハイマー」
ブラッドリークーパー「マエストロ その音楽と愛と」
コールドマン・ドミンゴ「ラスティン ワシントンの『あの日』を作った男」
ポール・ジアマッティ「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」
ジェフリー・ライト「アメリカン・フィクション」

【主演女優賞】
★エマ・ストーン「哀れなるものたち」
アネット・ベニング「ナイアド その決意は海を越える」
リリー・グラッドストーン「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
ザンドラ・ヒュラー「落下の解剖学」
キャリー・マリガン「マエストロ その音楽と愛と」

【助演男優賞】
★ロバート・ダウニー・ジュニア「オッペンハイマー」
スターリング・K・ブラウン「アメリカン・フィクション」
ライアン・ゴズリング「バービー」
ロバート・デ・ニーロ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
マーク・ラファロ「哀れなるものたち」

【助演女優賞】
★デヴァイン・ジョイ・ランドルフ「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」
アメリカ・フェレーラ「バービー」
ダニエル・ブルックス「カラーパープル」
ジョディ・フォスター「ナイアド その決意は海を越える」
エミリー・ブラント「オッペンハイマー」

【国際長編映画賞】
★「関心領域」(イギリス)
「Io Capitano(原題)」(イタリア)
「PERFECT DAYS」(日本)
「雪山の絆」(スペイン)
「ありふれた教室」(ドイツ)

【脚本賞】
★ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ「落下の解剖学」
デビッド・ヘミングソン「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」
ブラッドリー・クーパー「マエストロ その音楽と愛と」
サミー・バーチ、アレックス・メヒャニク「May December(原題)」
セリーヌ・ソン「パストライブス 再会」

【脚色賞】
★コード・ジェファーソン「アメリカン・フィクション」
グレタ・ガーウィグ、ノア・バームバック「バービー」
クリストファー・ノーラン「オッペンハイマー」
トニー・マクナマラ「哀れなるものたち」
ジョナサン・グレイザー「関心領域」

【撮影賞】
★ホテ・ヴァン・ホイテマ「オッペンハイマー」
エドワード・ラックマン「伯爵」
ロドリゴ・プリエト「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
マシュー・リバティーク「マエストロ その音楽と愛と」
ロビー・ライアン「哀れなるものたち」

【編集賞】
★「オッペンハイマー」
「落下の解剖学」
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
「哀れなるものたち」

【美術賞】
★「哀れなるものたち」
「バービー」
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
「ナポレオン」
「オッペンハイマー」

【衣装デザイン賞】
★「哀れなるものたち」
「バービー」
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
「ナポレオン」
「オッペンハイマー」

【メイクアップ・ヘアスタイリング賞】
★「哀れなるものたち」
「Golda(原題)」
「マエストロ その音楽と愛と」
「オッペンハイマー」
「雪山の絆」

【作曲賞】
★ルドウィグ・ゴランソン「オッペンハイマー」
ローラ・カープマン「アメリカン・フィクション」
ジョン・ウィリアムズ「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」
ロビー・ロバートソン「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
イェルスキン・フェンドリックス「哀れなるものたち」

【歌曲賞(主題歌賞)】
★ビリー・アイリッシュ フィニアス・オコネル“What Was I Made for?”「バービー」
“The Fire Inside”「フレーミングホット!チートス物語」
“I’m Just Ken”「バービー」
“It Never Went Away”「ジョン・バティステ アメリカン・シンフォニー」
“Wahzhazhe (A Song For My People)”「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

【音響賞】
★「関心領域」
「ザ・クリエイター 創造者」
「マエストロ その音楽と愛と」
「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」
「オッペンハイマー」

【視覚効果賞】
★「ゴジラ-1.0」
「ザ・クリエイター 創造者」
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3」
「ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE」
「ナポレオン」

【長編アニメ映画賞】
★「君たちはどう生きるか」
「マイ・エレメント」
「ニモーナ」
「ロボット・ドリームズ」
「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」

【長編ドキュメンタリー賞】
★「実録 マリウポリの20日間」
「ボビ・ワイン:ゲットー・プレジデント」
「The Eternal Memory(原題)」
「Four Daughters(原題)」
「To Kill a Tiger(原題)」

【短編ドキュメンタリー賞】
★「ラスト・リペア・ショップ」
「禁書のイロハ」
「The Barber of Little Rock(原題)」
「Island in Between(原題)」
「世界の人々:ふたりのおばあちゃん」

【短編アニメ映画賞】
★「War Is Over! Inspired by the Music of John & Yoko(原題)」
「Letter to a Pig(原題)」
「Ninety-Five Senses(原題)」
「Our Uniform(原題)」
「Pachyderme(原題)」

【短編実写映画賞】
★「ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語」
「彼方に」
「Invincible(原題)」
「Knight of Fortune(原題)」
「Red, White and Blue(原題)」

2024/03/10(日)「ゴールド・ボーイ」ほか(3月第2週のレビュー)

「ゴールド・ボーイ」

 中国の東野圭吾といわれる紫金陳(ズー・ジンチェン)の小説「悪童たち」を金子修介監督が映画化。これは事前情報をまったく入れずに見た方が良いミステリー&サスペンスです。沖縄を舞台にした翻案と脚色(港岳彦)がとてもうまく行っていて、少年少女を演じる3人も良く、特に羽村仁成と星乃あんなの幼いロマンス描写が映画に魅力を加えています。最近の日本のミステリー映画では出色の出来で、金子監督としても会心の作品なんじゃないでしょうか。

 沖縄の事業家の婿養子、東昇(岡田将生)は富と地位を手に入れるため、写真撮影中に義父母を崖から突き落とす。事故に見せかけた完全犯罪のはずだったが、その決定的な場面を13歳の少年、安室朝陽(羽村仁成)たちのカメラが動画で捉えていた。貧困や家族の問題を抱えた朝陽や浩(前出燿志)と夏月(星乃あんな)の兄妹は東を脅迫して6000万円を手に入れようとする。

 成績優秀な朝陽は両親が離婚して、母親(黒木華)と二人暮らし。父親(北村一輝)は別の女と再婚し、その娘は朝陽と同じクラスでしたが、最近自殺し、その母親は朝陽が殺したと思い込んでいます。昇は妻(松井玲奈)と離婚寸前で、そうなったら遺産は手に入らなくなる立場にあります。映画はそうした背景を描きながら、血みどろの殺人が連続し、意外な展開(容赦ないです)が続きます。岡田将生はサイコ味のある役柄にぴったり。刑事役の江口洋介も良いです。

 中国で社会現象を起こしたというドラマ化作品「バッド・キッズ 隠秘之罪」はU-NEXT、amazonプライムビデオなどで配信中です(全12話)。

 なぜ同じ話で12話もかかるのかと思いながら第1話を見ました。義父母を崖から突き落とす冒頭は映画と同じ。偶然それを動画撮影していた3人の境遇を描きながら、その場面が映っていることに気づくまでを第1話の76分かけて描いています。金子修介監督によると、ドラマ版は「殆ど参考にしなかった」そうです。「途中から原作を外れて納得出来ない展開になって長いので、脚本の港氏にも見てもらっていない」。そういうわけなので無理に見る必要はないのでしょう。原作は読みたいと思いました(ポチりました)。

 映画は続編の構想もあるようですが、どうやって続けるんでしょう、これ。
▼観客11人(公開初日の午前)2時間9分。

「52ヘルツのクジラたち」

 本屋大賞を受賞した町田そのこの原作を成島出監督が映画化。東京から海辺の街の一軒家に移り住んできた貴瑚(杉咲花)は母親から虐待を受ける少年(桑名桃李)と出会う。自分も実の母親から虐待を受けて育った貴瑚は過去を振り返り、悲惨な境遇から救ってくれた親友美晴(小野花梨)と安吾(志尊淳)との交流、結婚を約束した新名(宮沢氷魚)との日々を回想する。

 短いページ数の中にさまざまな不幸と不運を盛り込みすぎとの批判は原作にもあるようですが、映画にも同じことが言えます。それが描写不足、説得力不足につながっていて、特に志尊淳の選択には違和感を覚えました。少年のひどい母親を演じる西野七瀬がリアルにうまいです。
▼観客13人(公開4日目の午後)2時間16分。

「瞳をとじて」

 83歳のビクトル・エリセ監督が「エル・スール」(1983年、キネ旬ベストテン14位)以来40年ぶりに撮った長編劇映画。と聞くと、なぜそんなに長期間撮れなかったんだと思いますが、オムニバスの短編は「ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区」(2012年)、「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」(2002年)など5本撮っていますし、「マルメロの陽光」(1992年、キネ旬ベストテン5位)などのドキュメンタリーもあります。長編劇映画がなかっただけです。

 映画「別れのまなざし」の撮影中、主演俳優のフリオ・アレナス(ホセ・コロナド)が失踪した。警察は海沿いの崖にフリオの靴があったことから自殺と判断するが、死体は見つからなかった。22年後、テレビが失踪事件を取り上げ、元映画監督でフリオの親友だった作家のミゲル(マノロ・ソロ)が出演依頼を受ける。ミゲルはフリオと過ごした青春時代や自らの半生を回想。番組終了後、フリオによく似た男が海辺の高齢者施設にいるという情報が寄せられる。

 前半は面白みに欠けるんですが、フリオが見つかってから大きく盛り返した印象。「映画1本で奇跡を起こせると思うのか?」というセリフが終盤にあり、映画に関する映画でもあります。また、「ミツバチのささやき」のアナ・トレントが50年ぶりに同じ役名のアナを演じていることもあって、時の流れを強く感じさせる映画にもなってます。
IMDb7.3、メタスコア86点、ロッテントマト94%。
▼観客14人(公開2日目の午後)2時間49分。

「ミツバチのささやき」

 というわけで、1973年のビクトル・エリセ監督作品(日本公開は「エル・スール」と同じ1985年)を事前に見ておきました。昨年の「午前十時の映画祭13」のラインナップに入っていましたし、ソフト化もされていますが、劇場で見たのはたぶん37年ぶり。

 1940年、内戦終結直後のスペインが舞台。小さな村にやってきた映画の巡回上映で、6才の少女アナ(アナ・トレント)は「フランケンシュタイン」(1931年、ジェームズ・ホエール監督)を見て心奪われる。アナは姉のイサベルからフランケンシュタインは怪物ではなく精霊で、村はずれの一軒家に隠れていると聞かされる。ある夜、脱走兵らしい男が列車から飛び降り、荒野の中の小屋に逃げ込んだ。翌日、小屋にやってきたアナはその男と出会う。

 脱走兵とアナの出会いはフランケンシュタインの怪物と盲目の少女の出会いに重ねられていて、怪物が村人から殺されたように脱走兵もそうなります。当時のスペインの国情を知らないと、理解しにくい面がありますが、アナ・トレントの可憐さとフランケンシュタインの怪物は心に残りますね。
IMDb7.8、メタスコア87点、ロッテントマト96%。キネ旬ベストテン4位。
▼観客5人(公開5日目の午後)1時間39分。

「ARGYLLE アーガイル」

 冒頭のデュア・リパ、ヘンリー・カヴィル、ジョン・シナによるダンスシーン、アクションシーン、チェイスシーンはスピード感たっぷりで見応えがあり、期待が高まりましたが、その後は残念な出来に終わっています。この理由は主に主演のブライス・ダラス・ハワードがまったくアクションに向いていない体型だからです。

 いや、太ったアクション俳優もいますけど、ハワードは元がスリムなだけに現状の体型には悲しさしかありませんし、アクションにリアリティがありません。オバさん化(43歳)が進行しているのかと思ったら、元々、太りやすい体質なんだそうで、過去にも「激太り」を批判されてますね。

 スパイアクション小説シリーズ「アーガイル」の作者エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード)はある日、謎の男たちに命を狙われ、エイダン(サム・ロックウェル)と名乗るスパイに助けられる。エリーが狙われたのは「アーガイル」シリーズが現実のスパイ組織の行動と偶然に一致していたためだった。エリーはエイダンとともに世界を駆け巡ることになる。

 作家が書いたことが偶然すべて本当のことだったというシチュエーションの映画や小説は過去にもあったと思いますが、具体的なタイトルが思い出せません。そんなにオリジナリティーのある設定でないことは確かです。

 監督は「キングスマン」シリーズのマシュー・ヴォーン。毎回、アクションがスローモーション演出なので鼻についてきた面はあるものの、アクション自体は悪くありません。ラストを見ると、「キングスマン」同様にシリーズ化の意向があるのかもしれませんね。

 映画初出演のデュア・リパは今年のグラミー賞オープニングのセクシーなパフォーマンスが素晴らしかったです。ビジュアル的には満点なので、もっと映画に出てほしいところです。この映画も冒頭のまま、デュア・リパ主演だったら、不満はなかったんですが、演技力は未知数なので無理だったんでしょうね。
IMDb6.0、メタスコア35点、ロッテントマト33%。
▼観客11人(公開7日目の午前)2時間19分。

「パレード」

 藤井道人脚本・監督のNetflixオリジナル作品。この世に思いを残した死者たちを描くファンタジーです。海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)は離ればなれになった息子・良を捜すうち、自分が津波に流されて死んだことを知る。美奈子は同じような境遇の仲間と出会い、共同生活を送ることになる。死者たちにはそれぞれに諦めきれないことを抱えていた。

 藤井監督の資質はこういう心優しい作品にあると思える佳作。主演の長澤まさみをはじめ坂口健太郎、横浜流星、森七菜、黒島結菜、中島歩、深川麻衣、リリー・フランキー、寺島しのぶ、舘ひろしといったキャスティングの豪華さとエキストラの多さを見ると、その辺の日本の劇場用映画より予算は潤沢だなと感じました。
映画.com3.3、Filmarks3.7、IMDb6.7。

2024/03/03(日)「マダム・ウェブ」ほか(3月第1週のレビュー)

 コロナ禍で配信スルーになっていたディズニー&ピクサーのアニメーション3本が来月にかけて劇場公開されます。「私ときどきレッサーパンダ」(15日公開)「あの夏のルカ」(29日公開)「ソウルフル・ワールド」(4月12日公開)で、いずれもアカデミー長編アニメ映画賞の候補になり、「ソウルフル…」は受賞しました。劇場公開を見越していたためか、ディズニープラス以外の配信サイトでは見放題・レンタルはなく、購入(2000円ぐらい)だけのようです。数人で見るなら、購入した方が安いですけどね。というか、ディズニープラスに加入して見るのが一番安いです。

「マダム・ウェブ」

 アメリカでの評価はIMDb3.8、メタスコア26点、ロッテントマト12%。さんざんな酷評を聞いていたので期待値0で見たら、意外に悪くありませんでした。という意見は多く、ネットニュースにもなってました。

 2003年のニューヨーク。救命士のカサンドラ(キャシー)・ウェブ(ダコタ・ジョンソン)は活動中に生死を彷徨う事故に遭ったことがきっかけで予知能力を発現する。ある日、キャシーは偶然出会った3人の少女が黒いマスクとスーツに身を包んだ謎の男エゼキエル(タハール・ラヒム)に殺害される未来を見て、少女たちの命を救う。少女たちは将来、スパイダーウーマン、スパイダーガールになる存在だった。蜘蛛の研究者でキャシーを妊娠中だったキャシーの母親は1973年、ペルーで重傷を負い、現地人から蜘蛛の能力を授けられていた。母親は死ぬが、能力はキャシーに受け継がれていたらしい。エゼキエルは母親に同行していた男だった。

 原作のマダム・ウェブはスパイダーマンを補佐する盲目の老婦人で、生まれつきの重症筋無力症だそうです。映画とは設定が異なりますが、映画のキャシーもラストで同じような境遇となります。「X-MEN」で言えば、エグザヴィア教授のような存在であり、マダム・ウェブが主人公としてシリーズ化されるとは考えにくいです。というか、アメリカでは興行的にも惨敗なのでシリーズ化はないでしょう。

 「ヴェノム」(2018年、ルーベン・フライシャー監督)に始まる「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」(SSU)の1本ですが、どうもSSUは質的に信頼のおけない作品が多くて残念です。
▼観客8人(公開6日目の午後)1時間56分。

「犯罪都市 NO WAY OUT」

 マ・ドンソク主演のアクションシリーズ第3作。マ・ソクト刑事(マ・ドンソク)はソウル広域捜査隊に異動し、転落死事件の捜査を担当する。事件の背後に新種の合成麻薬と日本のヤクザが関わっているらしい。ヤクザのボス一条(國村隼)は麻薬を盗んだ組織員たちを処理するため極悪非道なリキ(青木崇高)を密かにソウルに送り込む。消えた麻薬を奪おうと目論む刑事チュ・ソンチョル(イ・ジュニョク)も加わり、事件は三つ巴の様相を呈する。

 マ・ドンソクの腕力だけを頼りにしたアクション映画で、面白いんですけど、さすがにほかのパターンも見たくなりました。前作はベトナム、今回は日本ですが、この調子でアジアのいろいろな国が絡む事件を解決していくんでしょうかね。
IMDb6.6、ロッテントマト100%(アメリカでは限定公開)。
▼観客13人(公開5日目の午後)1時間45分。

「コットンテール」

 日英合作映画で、キネマ旬報の分類では外国映画になってます。主人公の兼三郎(リリー・フランキー)は死んだ妻・明子(木村多江)が「遺骨をイギリスのウィンダミア湖に撒いてほしい」という遺言を残していたことを知る。疎遠となっていた一人息子慧(トシ)(錦戸亮)の家族とともに英国へ行くが、些細なことで息子と喧嘩した兼三郎は一人でウィンダミア湖に向かうことになる。その過程で兼三郎は若い頃の自分たち夫婦のことを回想する。

 演出も演技も悪くありませんが、話が今一つ響いてきません。リリー・フランキーが独り善がりに見えてしまう場面があるのは脚本の仕上げに少し難があるためでしょう。若い時の木村多江を演じる恒松祐里が良いです。

 監督のパトリック・ディキンソンはオックスフォード大と早稲田大で日本映画を学び、故ドナルド・リチーに師事。脚本家兼監督として短編映画を撮った後、BBCやNetflixでプロデューサーを務めたそうです。これが長編映画デビュー作。リリー・フランキーと木村多江が夫婦を演じた「ぐるりのこと。」(2008年、橋口亮輔監督)も当然見ているそうです。
▼観客2人(公開初日の午前)1時間34分。

「アメリカン・フィクション」

 アカデミー作品、主演男優、助演男優、脚色賞など5部門にノミネートされた作品。アメリカでは劇場公開されましたが、日本を含む多くの国ではamazonプライムビデオで配信されています

 講義中の差別用語を批判されて休職した大学講師で作家のモンク(ジェフリー・ライト)は母親が認知症となり、施設に入れる費用に困っていた。作品に「黒人らしさが足りない」と評されて自棄になってペンネームで書いたギャング主人公の黒人エンタメ小説は皮肉なことにベストセラーとなる。文学賞も受賞して世間の関心が高まり、匿名のままではいられなくなる。というストーリーで、出版業界や黒人作家の作品の扱われ方を風刺的に描いたコメディです。

 監督はテレビシリーズ「ウォッチメン」などの脚本を書き、これが監督デビューのコード・ジェファーソン。原作はパーシバル・エベレット。中絶医の妹の病院に行った主人公が入り口で金属探知機で検査される場面があり、意味が分からなかったんですが、町山智浩さんの解説によると、アメリカでは中絶医は保守派から命を狙われることがあるんだそうです。

IMDb7.6、メタスコア81点、ロッテントマト94%。1時間58分。

「禁書のイロハ」

 アカデミー短編ドキュメンタリー賞候補。子供向けの本が排除されたり、制限されたりする現状を追った内容。そういう扱いを受けているのは人種差別やLGBTQを扱った本で、「アンネの日記」やカート・ヴォネガット「スローターハウス5」まで排除されていることに驚きます。シエラ・ネヴィンス、トリッシュ・アドレジック、Nazenet Habtezghi監督。27分。IMDb6.3。WOWOWオンデマンドで配信中。

「ラスト・リペア・ショップ」

 これもアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞候補。ロサンゼルス市が提供している公立学校対象の楽器無償修理サービスを行う職人たちを取り上げた内容。職人の一人はゲイ、もう一人はメキシコ移民のシングルマザーで、それぞれに差別や貧困の体験を語り、同時に楽器が生徒たちにもたらす夢や希望を描いています。胸を打つ場面がある深い内容で、これは受賞してもおかしくないと思えました。ベン・プラウドフット、クリス・パワーズ監督。40分。IMDb7.3。ディズニープラスで配信中。

2024/02/25(日)「コヴェナント 約束の救出」ほか(2月第4週のレビュー)

 中国映画「少年の君」(2019年)のデレク・ツァン監督のデビュー作「ソウルメイト 七月と安生」(2016年)が韓国映画「ソウルメイト」(ミン・ヨングン監督)としてリメイクされ、全国的に公開が始まってます。オリジナルの方を見ていなかったのでU-NEXTで見ました。

 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)の女性二人の友情物語。裕福な優等生である七月(マー・スーチュン)と貧しい家の安生(「少年の君」のチョウ・ドンユイ)は13歳の時に知り合い、友情を深めますが、七月と相思相愛だった家明=ジアミン=(トビー・リー)を巡って三角関係のような様相を呈し、時に憎しみ合うことになります。

 と書くと、容易に予想できそうな内容かと思いますが、物語は観客の予想をことごとく外してきます。これはこういうことだなと思える描写が決してそうはならず、まったく反対の意味だったりします。デビュー作だけに脚本に力を入れたのでしょう。感心しました。

 描写にリリシズムやロマンティシズムがあるのも美点で、岩井俊二の映画のようだと思ったら、エンドクレジットに岩井俊二への謝辞がありました。「花とアリス」(2004年)などに影響を受けているようです。しかし、脚本の凝りようは岩井俊二以上ですね。

 評価はオリジナルがIMDb7.3、ロッテントマト100%。リメイクはIMDb7.4、ロッテントマト95%(観客のスコア)。
 「ソウルメイト 七月と安生」はamazonプライムビデオとHuluでも配信されています。

「コヴェナント 約束の救出」

 アフガニスタンに従軍した米軍の曹長と、その危機を救った現地人通訳をめぐるガイ・リッチー監督作品。演出も演技も申し分なく、これが実話でなかったら、褒めるところですが、その気になれないのは主人公がよく知る通訳だけを助けることに複雑な思いが残るからです。

 2018年、アフガニスタンでタリバンの兵器工場を捜索する部隊を率いる米軍のジョン・キンリー曹長(ジェイク・ギレンホール)は通訳としてアーメッド(ダール・サリム)を雇う。通訳にはアメリカへの移住ビザが約束されていた。部隊は爆発物製造工場を突き止めるが、タリバンの攻撃を受けて壊滅。生き延びたキンリーとアーメッドは100キロ離れた米軍基地を目指すが、途中でキンリーが銃撃を受けて重傷を負う。アーメッドはキンリーを手押し車に乗せ、タリバンの追撃をかわしながら、険しい山道を踏破する。回復したキンリーはアメリカへ帰るが、アーメッドと家族の渡米は叶わず、行方不明となった。キンリーはアーメッドとの約束を果たすため、アフガニスタンへ向かう。

 映画のラストに、アフガニスタンから米軍が撤退してタリバンが政権を取った後、米軍に協力した300人以上の通訳とその家族が殺され、数千人が身を隠している、という字幕が出ます。なぜ米軍はそういう人たちを見捨てて撤退したのか、助けるべきではなかったのかとの思いを強くします。一人の通訳とその家族を助けたところで、他を見捨てた免罪符にはならないでしょう。

 クライマックス、主人公たちが危機一髪のところに米軍の飛行機とヘリが来て、タリバン兵たちをバタバタ撃ち殺す場面も気分がよくはありません。ベトナム戦争関連映画でもベトナム兵はこういう風に、非人間的な描き方をされていました。

 アメリカ人と現地人通訳を描いた作品としてはカンボジアを舞台にした「キリング・フィールド」(1985年、ローランド・ジョフィ監督)がありますが、現地の人の扱いに関してアメリカ映画はあの頃からほとんど変わっていないようです。
IMDb7.5、メタスコア63点、ロッテントマト83%。
▼観客14人(公開初日の午前)2時間3分。

「スイッチ 人生最高の贈り物」

 韓国のトップスターが売れない役者兼マネージャーと立場が入れ替わってしまうファンタジー。

 富と名声を手にしているパク・ガン(クォン・サンウ)は数年前に恋人スヒョン(イ・ミンジョン)と別れ、高級マンションに一人暮らし。クリスマスイブの夜、不思議なタクシーに乗ったガンは翌朝目覚めると、スヒョンが隣に寝ていて、2人の子供もいた。しかも自分は小劇場の売れない役者で、マネージャーのチョ・ユン(オ・ジョンセ)が大スターになっていた。

 よくあるクリスマス・ストーリーと同様のプロットで、「素晴らしき哉、人生!」(1946年、フランク・キャプラ監督)や「大逆転」 (1983年、ジョン・ランディス監督)を思わせます。主人公が家庭の温かさを知って、普通の平凡な生活を大事にしたいと思うようになるという展開は予想がつきます。ただ、そうした当たり前のことを改めて考えさせるのはクリスマス・ストーリーとしての役目を十分に果たしているということでもあるでしょう。監督はマ・デユン。監督作が日本で公開されるのは初めてのようです。

 IMDbによると、この映画、「天使のくれた時間」(2000年、ブレット・ラトナー監督)のリメイクとのこと。見ていなかったのでU-NEXTで見ました。ニコラス・ケイジとティア・レオーニ主演。IMDb6.8、メタスコア42点、ロッテントマト53%と評価は振るわず、そのためもあってこれまで見ていなかったんですが、いやあ、これも悪くないと思いました。ティア・レオーニがとても美しくて優しくて、主人公がレオーニとともに生きる人生を選ぶことに納得できました。
「スイッチ 人生最高の贈り物」の評価はIMDb6.8(アメリカでは未公開)。
▼観客2人(公開19日目の午後)1時間52分。

「梟 フクロウ」

 朝鮮王朝時代に実際にあった怪死事件を基にしたサスペンス。盲目の天才鍼医ギョンス(リュ・ジュンヨル)はその腕を買われ宮廷で働くことになる。ある夜、ギョンスは世子(せいし=王の子)が王医の治療の末に死ぬのを目撃する。死因は感染症とされたが、ギョンスは王医が毒殺したのでは、との疑いを持つ。証拠を探したギョンスは逃げる途中を王医に目撃される。ギョンスは保身と世子の死の真相を暴くために奔走することになる。

 予告編ではミステリーなのかなと思ってましたが、実行犯は分かっており、王宮の陰謀を巡るサスペンスになってました。前半にギョンスと世子が心を通わせる場面を描いているのがうまく、後半の展開に効果を上げています。タイトルの「フクロウ」の意味は世子との関係の中で明らかになります。監督はアン・テジン。これが初監督作品だそうですが、上々の出来だと思います。
IMDb6.7、ロッテントマト80%(観客スコア)アメリカでは未公開。
▼観客多数(公開11日目の午前)1時間58分。

「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

 サッカーの2002ワールドカップ・オセアニア予選でオーストラリアに史上最悪0-31で惨敗したアメリカ領サモアがオランダ人の新監督を迎えて奇跡的な1勝を果たすまでを描いた実話ベースの作品。チームを導いたトーマス・ロンゲン監督を演じるのはマイケル・ファスビンダー。

 ポンコツチームの勝利を描いた作品は「がんばれ!ベアーズ」(1976年、マイケル・リッチー監督)など多数あり、どれも同じようなパターンとなっています。この作品もそのパターンに沿っただけの平凡な出来。出演もしているタイカ・ワイティティ監督(「ジョジョ・ラビット」)はサッカーに詳しくないか(興味がないか)、手を抜いたとしか思えません。

 映画の基になったドキュメンタリー「ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦」(2014年、マイク・ブレット、スティーブ・ジェイミソン監督)はU-NEXT(見放題)やamazonプライムビデオ(100円)で配信されています。

 劇映画版がIMDb6.5、メタスコア44点、ロッテントマト45%と低評価なのに対して、ドキュメンタリーの評価は高く、IMDb7.8、メタスコア71点、ロッテントマト100%となっています。

 で、見ました。傑作です。しっかりスポーツ・ドキュメンタリーです。驚いたのはワールドカップ予選で勝ったトンガ戦の試合展開が劇映画とは異なること。劇映画では1-1の後、決勝点を奪って勝ちますが、実際には2点を先制した後、1点差に迫られ、なんとか逃げ切って勝つ展開でした。いくら劇映画であろうと、試合展開に嘘を入れるのはどうかと思います。何やってんだ、ワイティティ。
▼観客8人(公開初日の午前)1時間44分。