2021/10/13(水)9月後半に見た映画

「サマーフィルムにのって」

「サマーフィルムにのって」パンフレット
 時代劇オタクの女子高生ハダシ(伊藤万理華)が仲間と一緒に映画を撮ろうとする話。ハダシは映画部に所属しているが、部で年1本作る映画に自分の脚本「武士の青春」は採用されず、ラブコメの脚本が採用されて意気消沈。自分の脚本の主役にピッタリの凛太郎(金子大地)と出会ったことから、友人のビート板(河合優実)、ブルーハワイ(祷キララ)らとともに独自に時代劇映画の撮影を始める。しかし、凛太郎にはある秘密があった。

 ビート板はSFファンで筒井康隆「時をかける少女」やハインライン「夏への扉」の文庫本を読んでいて、この映画もタイムトラベルの要素を含んでいる。ただ、SF方面への発展はほぼない。映画作りとほのかなラブストーリーを組み合わせた青春映画で、元乃木坂46の伊藤万理華は頑張っているが、脚本の弱さをカバーするには至っていない。

 マニアックではないほどほどの脚本に、ほどほどの演出をした、ほどほどの映画というのが率直な感想。同じく女子高生を主人公にした横浜聡子「いとみち」の完成度にはとても及ばないが、映画愛や共同作業の連帯感は十分に表現されていて、高校生に受けるのは「いとみち」よりこっちの方かもしれない。

 監督は「青葉家のテーブル」、テレビドラマ「お耳に合いましたら。」(これも伊藤万理華主演)などの松本壮史。

「マスカレード・ナイト」

 「マスカレード・ホテル」(2019年)の続編。ホテル・コルテシア東京で大晦日のパーティーに殺人犯が現れるとの密告状が届き、警視庁捜査一課の刑事・新田浩介(木村拓哉)が今はコンシェルジェとなったホテルマンの山岸尚美(長澤まさみ)と再び組んで潜入捜査するというミステリー。

 悪くはないが、際立った部分もないフツーの出来。犯人の間抜けなところがトリック破綻の原因となっているのはどうかなと思う。朝ドラ「おかえりモネ」で「理想の上司」「頼れる上司」「かっこいい上司」として大きく株を上げた高岡早紀の扱いの小ささは少し残念。

 小日向文世と長澤まさみが同じ画面に出てくると、「コンフィデンスマンJP」のリチャードとダー子に見えてしまう。監督は前作と同じ鈴木雅之。

「MINAMATA ミナマタ」

「MINAMATA ミナマタ」パンフレット
 水俣病を描くというより、写真家ユージン・スミスを描いた力作だと思う。50年前の話なので熊本には当時の風景がないこともあって撮影は主にセルビアとモンテネグロで行われたそうだ。明らかに日本の風景とは異なる場面があったり、子役が日本人には見えない場面もあったりするが、大きな障害にはなっていない。

 プロデューサーも兼ねたジョニー・デップの役作りは「パイレーツ・オブ・カリビアン」などと大きくは変わらない。それが逆にアルコール依存で弱い面も持つユージンのキャラクターに厚みを持たせている。抗議運動のリーダーを演じる真田広之は米国生活が長いのでもちろだが、チッソの工場長役・國村隼と美波の英語もうまくてびっくり。この英語力があるから國村隼は東京舞台のアクション映画「ケイト」(Netflix)にも浅野忠信とともに出演しているのだろう。

 ユージン・スミスが大けがをしたのは「入浴する智子と母」を撮影した後だったのに映画では前になっているなど事実と異なる部分もあるようだが、日本の一地方の公害を世界に知らしめた出来事を堅苦しくなく、感動的にまとめたアンドリュー・レヴィタス監督の手腕は大したものだと思う。

「空白」

「空白」パンフレット
 いつもは笑いがあるのが当たり前の吉田恵輔監督が今回は笑いを封じたと言っているが、僕は特に寺島しのぶにおかしさを感じた。笑いはその人のキャラクターと密接だから、キャラを深く描くことが必要だが、寺島しのぶはかなり年下の店長を密かに好きなおばさんの役柄が実にぴったりでおかしかった。店長を慰めて抱きしめているうちに思わずキスしてしまうところなんか、「あるある」と思えた。

 映画は恣意的なマスコミ報道とネットの中傷を描きながら、誰もが被害者にも加害者にもなり得る今の社会を浮き彫りにしているが、本当のテーマは人の再起にある。突然起こった絶望的な出来事から人はどう立ち直っていくのかを描いているのがこの映画の最大の美点だろう。

 出てくる役者はすべてよくて、古田新太の下で働き、深く理解している藤原季節や少女をはねた車を運転していた女性の母親の片岡礼子、少女の母親の田畑智子、担任の先生役趣里まで良かった。

 古田新太の娘役の伊藤蒼は消え入りそうで存在感のない女の子で、ああいう悲劇的な死を遂げるのにぴったりだったが、NHK朝ドラ「おかえりモネ」ではしっかりした女子中学生を演じていた。

「クーリエ:最高機密の運び屋」

「クーリエ:最高機密の運び屋」パンフレット
 1960年代の冷戦、特にキューバ危機を背景にしたスパイの実話を基にした物語。ほとんど内容を知らずに見たので終盤の展開が意外だった。ここで主演のベネディクト・カンバーバッチはげっそり痩せた姿を見せ、悲運なソ連側スパイとの友情にも胸が熱くなる。十分に水準をクリアした出来だと思う。

 主人公のグレヴィル・ウィンは自伝も書いているが、自分を美化して嘘がまざっているという批判があるそうだ。そのため脚本のトム・オコナーはさまざまな資料に当たって脚本化したとのこと。だからこれは実話ではなく、実際の事件を基にしたフィクションと見た方が良いだろう。

 ドミニク・クック監督の演出は同じ時代のスパイを描いたスピルバーグ「ブリッジ・オブ・スパイ」という傑作があるので比較すると、分が悪くなる。アメリカでの評価がそれほど良くないのはそうした諸々の部分が影響しているのかもしれない。

 主演のカンバーバッチは3カ月で10キロ痩せたそうだ。10キロ減量にしては痩せすぎじゃないかと思えるが、減量すると極端に頬がこける人もいるし、一部CG処理とメーキャップの効果もあるのだろう。主人公にクーリエ(運び屋)となることを依頼するCIA職員役のレイチェル・ブロズナハンはamazonオリジナルドラマの「マーベラス・ミセス・メイゼル」の主演女優。コメディドラマとは打って変わった役柄だが、何でもできる女優なのだ。

2021/09/20(月)「ある用務員」とU-NEXT

 「ベイビーわるきゅーれ」の殺し屋女子2人組(高石あかり、伊澤彩織)のアイデアの元になった阪元裕吾監督「ある用務員」をU-NEXT(お試し会員登録中)で見た。

 元暴力団員だった父を持つ深見晃(福士誠治)は高校の用務員として働きながら、父の兄弟分である真島(山路和弘)の娘・唯(芋生悠)のボディーガードとして密かな人生を送っていた。ある日、暴力団の抗争が勃発し、唯が標的にされてしまう。学校を襲撃してきた9人の殺し屋たちに深見は単身立ち向かう、というストーリー。



 高石あかりと伊澤彩織は中盤に登場、派手なアクションを繰り広げる。アクション監督はクレジットされていないが、伊澤彩織の福士誠治との格闘シーンは「ベイビーわるきゅーれ」同様にスピード感があり、見応え十分。公開時に行われた舞台あいさつで伊澤彩織は「(福士誠治に首を絞められて絶命するシーンは)あと3秒続いていたら落ちていた」と話していた。どうりで顔が赤黒く、真に迫っていたわけだ。

 この映画、1月に「未体験ゾーンの映画たち」の1本として東京で公開されたが、九州では福岡のみの公開。10月25日のDVDリリースに先立ってU-NEXTで配信したのはU-NEXTが製作委員会に入っているからだろう。

 U-NEXTには以前から興味があったが、月額2189円(税込み)は他の配信サービスに比べて高く感じる。U-NEXT月額プランの料金詳細によると、「ビデオ見放題:1,089円 雑誌読み放題:550円 1,200ポイント:550円」という考え方だそうだ。毎月付与される1200ポイントは劇場公開から間もない新作などの観賞に必要で、399ポイントの作品が多いようなので3本は見られる計算。それが550円なのはお得と考えても良いが、強制的に550円使わせる仕組みとも言える。

 さらに不要なのは雑誌読み放題だ。「月額プラン1490」(税込み1639円)はこれを外して「1200ポイント」を入れてほしい。あるいは基本サービスを見放題の1089円だけにして、あとのサービスはトッピングで加えられる仕組みにした方がリーズナブルだし、理解を得やすいと思う。そうなると、雑誌読み放題が550円では楽天マガジンやdマガジンには対抗できないですけどね。

2021/09/19(日)9月前半に見た映画

「モンタナの目撃者」

 テイラー・シェリダン監督なので見た。見て正解、個人的に大好物ジャンルの作品だった。

 森林消防隊員の主人公ハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)が森の中で少年コナーと出会う。少年の父親は汚職事件を捜査する検事に協力していた会計士で、2人組の暗殺者に追われ、少年の目の前で殺された。ハンナは少年とともに街を目指すが、暗殺者たちは森に火を付け、2人に迫ってくる、というストーリー。

 私立探偵小説などの作家マイクル・コリータの原作「Those Who Wish Me Dead」(2014年、未訳)をコリータ自身とシェリダン、「白鯨との闘い」などのチャールズ・リーヴィットが脚色。

 ハンナは森林火災の際に風を読み違え、少年3人を助けられなかった過去がある、というのがこうした作品のお約束的設定だ。保安官の妊娠5カ月の妻(メディナ・センゴア)が暗殺者に襲われるが、意外で痛快な展開になる。シェリダンは脚本を担当した「ボーダーライン」、監督作「ウインド・リバー」でも女性を主人公にしていから、強い女性キャラクターが好きなのだろう。

 アメリカでの評価はIMDb6.0、メタスコア59、ロッテントマト62%と低いが、自分を含めて冒険小説などの愛好者にはアピールする内容だと思う。

「ももいろそらを カラー版」

 小林啓一監督の長編第1作で2011年に撮影し、2013年1月にモノクロ版が公開された。カラーで撮ったのにモノクロ処理したのは「未来から今を見つめるというコンセプトから」だったとのこと。主演の池田愛は撮影中、モノクロになるとは「1ミリも思っていなかった」そうだ。ピンク色の煙をパートカラーにするためのモノクロ化だったのではないかと想像したが、そんな「天国と地獄」の二番煎じ、三番煎じの意図はなく、全編モノクロだったわけだ。

 カラー版の公開はコロナ禍で暇ができた監督が自宅で映像資料の整理をしていた際にカラー素材を見つけたのがきっかけ。10年前の作品なので、LGBTQ的にちょっとまずいと思えるセリフがあったり、不要と思えるエピソードがあったりする。脚本もそんなにうまくなく、前半は冗長で自主映画レベル。後半、少し盛り返した感じ。

 池田愛は活発で男まさりな女子高生を演じて良いが、この映画の後、学業に専念するために芸能活動を休止。その後、復帰したそうだが、目立った活動はしてませんね。カラー版の公開記念で舞台あいさつをした際の動画がYouTubeにアップされている。

「いとみち」

「いとみち」パンフレット
 「ベイビーわるきゅーれ」と同じくメイドカフェが出てくるが、相当にウエルメイドに作られた青春映画。横浜聡子監督の「俳優 亀岡拓次」以来5年ぶりの作品で、故郷の青森を舞台にしている。エンドクレジットを見ると、地元の協力も多く得たようで、ご当地映画の趣もあり、津軽弁の響きがとても心地良い。

 主人公いとの祖母はいとが出かける時、「か、け」と言って、干し餅を渡す。「か、け」とはパンフレットによると、「ほら、食え」という意味だ。

 津軽弁のなまりが強い主人公を演じる駒井蓮は津軽三味線の演奏があまりに見事なので、これは三味線のうまい人を連れてきたんだなと思ったら、1年間練習したのだそう。この映画も主役の魅力に負うところが大きい作品になっている。

 いとの父親役を演じるのは「子供はわかってあげない」に続いて豊川悦司。原作では父親も青森出身の設定だそうだが、東京出身に変えてある。豊川悦司まで津軽弁だったら、意味の取りにくい部分が多くなったかもしれない。

「シャン・チー テン・リングスの伝説」

「シャン・チー テン・リングスの伝説」パンフレット
 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の1本で初めてアジア系のヒーローを主人公にした作品。主人公のシャン・チーを演じるのは主にテレビドラマに出演してきたシム・リウ。キレのあるアクションを披露していて、主役として不足はない。主人公の父親役にトニー・レオン、叔母役にミシェル・ヨーのベテランをそろえたほか、妹役は映画初出演のメンガー・チャン(アクションが素晴らしい)、同僚役に「フェアウェル」のオークワフィナ(コメディ演技が◎)とキャストはほとんどアジア系となっている。

 作品自体、アジアンテイストが横溢し、クライマックスには西洋のドラゴンではなく、東洋の竜が登場する。ただし、VFX満載のこのクライマックス、それまでのアクションの快調さに比べると、今一つ目新しさがないのが残念。監督のデスティン・ダニエル・クレットンは「ショートターム」「黒い司法 0%からの奇跡」と傑作を放っているが、こうしたアクションの演出は初めて(キャプテン・マーベル=ブリー・ラーソンが顔を見せるのは、この2作に出演している縁もあるのだろう)。

 11月公開予定の「エターナルズ」のクロエ・ジャオもそうだが、マーベルは監督を選ぶ際に題材に慣れていることよりも演出の力を重視しているようだ。

「RUN ラン」

「RUN ラン」パンフレット
 「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督によるスリラーの佳作。先天性の病気で車椅子生活を送るクロエは母親に不信感を抱き始める。人は服用不可の動物用の薬を母が自分に飲ませていたのだ。体が不自由なのは先天性のものではなく、薬のためらしい。主人公は母の隔離から何とか逃れようとする、というストーリー。

 クロエ役をオーディションで抜擢された新人キーラ・アレンが、娘に歪んだ愛情を注ぐ母親を「オーシャンズ8」のサラ・ポールソンが演じている。

 母親の意図によく分からない部分が残るなどの瑕疵はあるが、チャガンティ監督のサスペンス演出は破綻がなく楽しめた。このパンフレットの表紙は劇中、主人公が飲まされるカプセル薬の色をデザインしてある。

「シュシュシュの娘」

「シュシュシュの娘」パンフレット
 コロナ禍で苦境にある全国のミニシアター救済を目的に入江悠監督が自主制作した。移民排斥問題と公文書改ざん問題を折り込んだエンタテインメント。市役所に勤務する鴉丸未宇(福田沙紀)は職場の先輩・間野幸次(井浦新)を自殺に追い込んだ“文書改ざん”の証拠を手に入れようとする。

 こうした現在の問題を取り上げるのは取り上げないよりは良いことだろうが、例えば、外国人労働者の現状を真正面から描いた「海辺の彼女たち」などに比べると、分が悪くなる。公文書改ざんといっても市役所の話なので、映画のスケール感も小さいものになる。

 「シュシュシュ」の意味は予告編でも伏せているので書かないが、主演の福田沙紀はタイトルロールにふさわしい動きを見せている。もっと映画に出ても良いのではないか。

「岬のマヨイガ」

 東日本大震災をモチーフにしたファンタジー小説をアニメ映画化。居場所を失った17歳のユイ(芦田愛菜)と8歳のひより(粟野咲莉)は、避難所で出会ったキワ(大竹しのぶ)に連れられ、岬にある古民家マヨイガ(迷い家)で共同生活を始める。原作は岩手出身の児童文学作家・柏葉幸子。監督は川面真也。

 マヨイガの描写は「となりのトトロ」を思わせる。シリアスな序盤に身構えていると、河童が出てきて、後半は「妖怪大戦争」的展開になる。妖怪は原作の持ち味らしいが、序盤のムードで押し切っても良かったのではないか。大竹しのぶは「漁港の肉子ちゃん」に続いての声の出演。この映画の方が自然な感じだった。

2021/09/12(日)アクションを繰り返し見たい「ベイビーわるきゅーれ」

 十代の女殺し屋コンビのダラダラした日常と颯爽とした活躍を描くアクション。作りは非常に荒削りだが、同時に大きな可能性を感じさせる。「ベイビーわるきゅーれ」の感想はそんな感じになる。可能性というのは主演の一人、伊澤彩織がアクション女優として大成する可能性だ。クライマックスの伊澤彩織の格闘シーンは一見の価値どころか、100回ぐらい繰り返し見たくなる。動きがしなやかで柔らかく、めちゃくちゃ速い。女優が演じたアクションでこんなにレベルの高いものは初めて見た。

 冒頭、コンビニ内での男3人を相手にしたアクションよりもクライマックスが数段凄いのは敵役の三元雅芸(みもとまさのり)のアクションが凄いからだ。Wikipediaによれば、三元雅芸はアクション俳優として活躍するほか、「るろうに剣心」などのアクション監督谷垣健治の下でスタントマンを務めた経験があり、殺陣師でもあるという。伊澤彩織もスタントパフォーマー(男女を区別しないために伊澤彩織がこだわる言い方)出身で「るろうに剣心 最終章」2部作でもスタンドインを務めたそうだ。YouTubeで公開されている刀のアクションシーンを見ると、伊澤彩織、「るろうに剣心」で佐藤健のダブルも務めたのではないかと思えてくる。殺陣の動きがよく似ているのだ。

 そうした実力のある2人が激突するわけだから当然迫力のあるものになってくる。伊澤彩織はラストファイト撮影の1週間前、練習中に三元雅芸から自分のパンチを「フッ」と笑われ、「火が付いた」。だから本番では肘打ちも入れたという。アクション監督の園村健介はアクションシーンの設計で「女性が大勢の男の人を殺す説得力を持たせないといけないので、それなりにやっぱり、やられなきゃいけないし、素手になった時にはなるべくフィジカルの差をどう克服するかを考えた」と語っている(【ベイビーわるきゅーれ】主演 伊澤彩織&アクション監督 園村健介が語る制作舞台裏 - YouTube)。



 これは頷ける発言で、コンビニ内のアクションで伊澤彩織がナイフを振り回し、クライマックスで落とした拳銃を拾おうとするのはまったく正しい。例えば、シャーリーズ・セロンのように身長が男優に劣らない女優であっても、「アトミック・ブロンド」では周囲にあるものを手当たり次第に武器にした。身長159センチの伊澤彩織のアクションに説得力を持たせるにはハンディを克服するための銃とナイフを利用した方が良いのだ。それがリアリティーにつながる。
宮崎キネマ館に舞台あいさつで訪れた高石あかり(2021年9月11日)
宮崎キネマ館に舞台あいさつで訪れた高石あかり(2021年9月11日)

 もう一人の殺し屋役高石あかりはそうしたアクションはできないものの、ガンプレーの速さを見ると、相当に練習したことがうかがえた。コミュ障で社会不適合者で陰キャの役柄の伊澤彩織に対して明らかな陽キャ。この2人が高校卒業と同時に殺し屋の寮を出てアパートで一緒に暮らす、というのが映画の設定で、2人は仕事である男を殺したことからヤクザに付け狙われることなる。

 偏執的で凶暴なヤクザの親分を演じる本宮泰風の怖くておかしい味わいとか、その娘秋谷百音の弾けたキャラとか、息子役うえきやサトシのなんだかかわいそうなキャラとか、キャストはいずれも好演している。映画全体としては脚本も演出もまだ改善するところはあるのだろうが、阪元裕吾監督のまとめ方は悪くない。この設定の話ならシリーズ化も可能だ。荒削りな部分をなくし、アクションファン以外にもアピールする第2作、第3作を切望したい。

2021/09/06(月)8月後半に見た映画

「フリー・ガイ」

 ゲームのモブ(背景)キャラが自我に目覚めて、ゲーム消滅の危機を救うという話。なかなかSF的だが、いまいち説得力が足りない。ゲーム内の1キャラがAI化するのは無理筋だ。

 脚本はマット・リーバーマンとザック・ペン。ペンは「レディプレイヤー1」の脚本も書いていて、こうしたゲーム内の話には慣れているのだろう。ショーン・レヴィ監督の演出には相変わらず緩いところがあるが、気持ちの良いハッピーエンドに向かうのが好評の理由かなと思う。

 なぜかパンフレットもグッズも販売なし。版権の関係だろうか?

「プロミシング・ヤング・ウーマン」

 主人公のキャシー(キャリー・マリガン)はかつて医大生だったが、ある事件で大学を中退。今はコーヒーショップで働いていて、夜ごと、バーで酔ったふりをして男にお持ち帰りされ、男たちに裁きを下していた、という出だし。過去に何があったのかは徐々に明らかになる。
「プロミシング・ヤング・ウーマン」パンフレット
 事件をただ傍観していることは共犯と同じというメッセージをこめつつ、エンタメとして作っているのが優れたところだろう。監督・脚本のエメラルド・フェネルはテレビドラマ「キリング・イヴ」シーズン2で製作総指揮を務めていたそうだ。

 最近、「キリング・イヴ」関連でもう一人いたなと思って探したら、「フリー・ガイ」でヒロインを演じたジョディー・カマーだった。

 キャリー・マリガンに注目したのは「17歳の肖像」(2009年)の頃。当時、24歳で17歳の役を演じていた。今回は36歳で30歳の役(撮影時は34~35歳かも)だが、ケバい化粧をしていると、ぱっと見、40代に見えてしまう。でも演技のレベルは高いので、アカデミー主演女優賞ノミネートも納得できる。

「ドライブ・マイ・カー」

「ドライブ・マイ・カー」パンフレット
 村上春樹の短編集「女のいない男たち」から「ドライブ・マイ・カー」と「シェエラザード」「木野」の3作を組み合わせて脚色している。主人公の車は同じサーブ900でも原作では黄色のオープンカーですが、映画では15年乗りの赤いハッチバック。車が違うように話も原作とは大きく違う。

 原作は主人公が緑内障になったため東京で運転手を頼むだけで広島へは行かない。映画は広島での演劇祭がメインになっていて、そこで上演する演劇の本読みが大きなパートを占めている。濱口監督は映画を撮影する際には普段からこういうステップを踏むそうだ。脚本の理解を深めることで俳優の演技を引き出す効果があるらしく、この映画でも俳優たちの演技が充実している。

 映画が約3時間の上映時間にもかかわらず、飽きないのはそうした面があるからだろう。カンヌでの受賞にふさわしく純文学風の仕上がりだし、クライマックスの展開は現実的ではないと思えたが、高評価も納得できる作品だっだ。

「子供はわかってあげない」

「子供はわかってあげない」パンフレット
 田島列島の原作コミックを沖田修一監督が映画化。ゆったりまったりした展開の青春映画で、高校2年の主人公美波(上白石萌歌)が幼い頃に分かれた父親(豊川悦司)と夏休みに再会する話。

 クライマックス前の母親(斉藤由貴)との会話のシーンにジンと来た。撮影は2年前だったそうで、上白石萌歌の顔はまん丸。「ドラゴン桜」で一般的な人気を得た細田佳央太も好演している。

「孤狼の血 LEVEL2」

「孤狼の血 LEVEL2」パンフレット
 上林(鈴木亮平)はサイコパスだと思う。武闘派ヤクザじゃなくて、「キャラクター」のFukaseに近く、Fukaseのガタイをでかくして、凶暴にすると上林になる。

 普通の武闘派ヤクザ、例えば「仁義なき戦い 広島死闘編」で千葉真一が演じた大友勝利などは短気で乱暴ではあるけれど、異常者ではない。上林が異常なのは食欲や性欲、金銭欲、物欲などが感じられず、人への暴力と支配欲しかないように見えるからだ。毎回毎回、殺す相手の両目を両親指でつぶすなど異常者のやることだろう。最初につぶされるピアノ講師が美人だなと思ったら、筧美和子だった。よくこんな役を引き受けたなと思う。

 白石和彌監督は上林を敵も味方も破壊するゴジラに例えていたそうだが、それはゴジラに失礼というもので、ゴジラは破壊王ではあるが、異常ではない。「なんならぁ」とか「こんなは…」とかの広島弁を聞くと、「仁義なき戦い」を思い出すし、実録風の演出も少しあるが、これはヤクザ映画じゃなくホラー映画として見るのが正解だ。

「オールド」

「オールド」パンフレット
 リゾート地のビーチから出られなくなった3家族を描くサスペンス。このビーチ、人間の成長・老化が早く、30分で1年分の老化をしてしまう。1日だと48年の計算。人間だけでなく、生物全体の老化も早いはずだが、周囲は岩場と砂浜だけで植物はなく、海に魚もいない。3家族は逃げようとするが、海岸を出ようとすると気を失ってしまう。

 この場所がなぜこうであるのかの説明はあっさりしたもので説得力もないが、シャマランの狙いはなぜ3家族はここに案内されたのか、その目的は何かを描くことだったようだ。だから、これSFじゃなくてサスペンス。そっちの方の出来は悪くないと思った。

 出ようとして気を失うなら、入ろうとしても同じはずとか、ツッコミどころは多数あり、IMDbの評価は5.9と低い。シャマラン映画の好きな人はどうぞ。

「鳩の撃退法」

 佐藤正午の同名小説をタカハタ秀太監督が映画化。原作は文庫上下2冊で1000ページ以上ある。それを約2時間の映画にまとめるのは難しかったのか、筋を追うのにいっぱいいっぱいという感じがありあり。これをテンポ良く描いたと受け取る人もいるようで、日経夕刊では★4個を付けてた。

 Yahoo!のレビューで指摘している人がいるが、予告編では、書いたことが現実になるかのような紹介になっていた。本編はそうではなく、作家(藤原竜也)が現実の話をそのまま書いたんじゃないかと心配して編集者(土屋太鳳)が調べるという展開だった。

 「沼本」と書いて「ぬもと」と読むカフェの店員を演じるのは「孤狼の血 LEVEL2」では大根とも評された西野七瀬(個人的には前作の真木よう子に遜色ない演技と思う)。今回は年齢的に近い役柄なので、無理のない演技だった。どこか蓮っ葉なイメージが似合ってきた佐津川愛美も含めて女優陣は悪くなかった。

「白頭山大噴火」

 最初の地震のシーンは「すげえ」と思ったが、あとは新鮮味に乏しいアクション。日本でもアメリカでもこれはディザスター映画になる題材だと思うが、それをアクション映画としてまとめるのがいかにも韓国映画という感じ。

 最初の噴火が起こった後、最大規模の噴火を止めるため、地下のマグマだまりを爆破しようと韓国軍が作戦を展開。この作戦、600キロトンの爆破が必要なので北朝鮮の核兵器からウランを盗み、白頭山の炭鉱の地下坑道で原爆を爆発させるという乱暴なもの。南北関係に気を遣ったためか、北朝鮮軍との銃撃戦は最小限で、主な敵は中国と米軍になるというのも著しく説得力を欠く。

 ほとんどトンデモ映画の設定だが、それに目をつぶってアクションだけを眺めてれば、我慢できるかもしれない。IMDbの評価は6.2、ロッテントマト70%。アメリカでは限定公開だったためか、メタクリティックに評価はない。