2020/12/07(月)新型レヴォーグのインパネは…

 北海道テレビ放送(HTB)の「水曜どうでしょう」を見ていて「あれっ」と思った。ヨーロッパで大泉洋ら4人が乗る車のインパネが新型レヴォーグのものに似ているのだ。ディスプレイの両側に縦型のエアコン吹き出し口があるデザインが共通している。録画ファイルを巻き戻して車種を確かめてみたら、ボルボV90だった(V60のインパネも同じデザインだ)。同じワゴンで安全性重視のメーカーの車なのでスバルのデザイン担当者が参考にしたのかもしれない。

 その新型レヴォーグの購入契約をしたのは9月初旬。まだ試乗車も何もない頃だったが、次のクルマを検討していた8月下旬にYouTubeや自動車雑誌のサイトで「レヴォーグ祭り」ともいわれた絶賛評の嵐が吹き荒れるのを見て購入を決めた。グレードはアイサイトX付きのGT-H EX。僕は高速ではACCをセットして巡航するだけという運転の仕方なので、スポーツやコンフォートなどモード変更機能がある電制ダンパー付きのSTIスポーツは不要と判断した。

 それから3カ月。ようやく今日、試乗してきた。試乗車にアイサイトXは付いていなかったが、同じGT-Hなので乗り心地は同じだろう。車幅は今乗っているゴルフ7とほぼ同じ(5ミリ小さい)で、違和感はない。発進も加速もスムーズ。CVTは車好きには何かと評判が良くないが、レヴォーグの場合は悪くなかった。何度もリコールしたゴルフ7のDSGより良いのではないか。

 GT-HはダンパーがKYB製だが、ゴルフ7に比べて乗り心地は同等以上と思える。ロードノイズも気にならない。シートはゴルフ7よりホールド感があり、座り心地も良かった。荷室のサブトランクはYouTubeなどで見るより実物は相当大きく感じる。先行車発進お知らせのアナウンス(信号待ちで先行車が発進して4メートル以上離れても自車が発進しない場合にブザーか音声で知らせる)がうるさく感じたが、これはOFFにできる。総じて好印象を持った。いや、今さら悪い印象を持っても、どうしようもないんですがね。

 納車は28日ごろとのこと。ここまで待たされると、もう年明けでも良いかと思う。

 で、午後5時からYouTubeで「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終選考会を見ていた。たぶん時間を持たせるためだろうが、自動車ジャーナリストなど60人の選考委員の投票内容を1人ずつ動画で発表するというスタイル。さっさと結果を発表した方がスマートだが、経過が分かるのは選挙速報みたいでそれなりに面白い。予想通りレヴォーグとヤリス3兄弟の一騎打ちの様相で始まり、徐々にレヴォーグが点差を広げた。大賞は見事、レヴォーグへ(点数は437点)。意外にもフィットが得票を伸ばし、終わってみれば、ヤリスを抜いて2位に食い込んだ(フィット320点、ヤリス300点)。4位のプジョー208/e208はインポートカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。これも意外だった。

 ライブ配信を見ていたのは3000人ぐらい。カー・オブ・ザ・イヤーって自動車マニア以外にはあまりアピールしないのか。

2020/09/21(月)「怪獣映画の夜明け」

 Hulu上で開催の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020」で上映された1本。映画「ゴジラ」誕生の過程と意義を中心にゴジラ映画の変遷を関係者のインタビューを通じて探る。監督はスペインのジョナサン・ベレス。上映時間51分。

 ゴジラ映画のドキュメンタリーとして特に優れているわけではないが、入門編としてはまずまずだし、関係者の多くにインタビューしていることに好感が持てる。登場するのは宝田明、中島春雄(ゴジラ第1作のスーツアクター、2017年死去)、薩摩剣八郎(1984年版「ゴジラ」以降のスーツアクター)、監督の大森一樹、金子修介、手塚昌明、特技監督の川北紘一(2014年死去)などなど。俳優の小泉博(2015年死去)、久保明の姿が見られたのは懐かしかった。既に亡くなっている3人の死去した年を見ると、数年がかりでインタビューしたのだろう。この3人に対する献辞が最後に出る。

 IMDbのデータThe Dawn of Kaiju Eiga (2019)によると、日本で2019年4月2日公開とある。セルバンテス文化センター(インスティトゥト・セルバンテス東京)が特別試写会を行ったらしい。IMDbの採点は8人が投稿して8.6。これは高すぎる。僕は7点を投稿した。

 さて、Huluで初開催の「ゆうばりファンタ」の評価はどうなのだろう。普通の映画祭同様にタイムテーブルに沿って上映(配信)されているのだが、Huluのような配信サービスの特性を生かすなら、上映時間を定めずに期間中何度も見られるようにした方が良かったのではないか。その方がより多くの視聴者の目に届くだろう。せっかくの試みなのにもったいないと思う。

2020/07/09(木)マネーフォワードMEの失敗

 マネーフォワードMEは家計簿・資産管理ソフト。僕は2016年から有料版を使っている(といってもauスマートパス版なので無料)。そのマネーフォワードが事前予告をした上で7月7日にWeb版のリニューアルをした。アプリ版と同じようなインターフェイスにするのが狙いだったらしい。これに苦情が殺到したそうで、2日後の9日に元に戻った。

 実際、僕も7日にアクセスしてみて頭を抱えた。今まであった重要な機能が消えていたのだ。それはデータのCSVダウンロードができなくなっていたこと。マネーフォワードには検索機能がないので、過去のデータを検索するにはCSVデータをダウンロードする必要があるのだ。ダウンロードをできなくする代わりに検索機能を付ければ、まだ良かったのだが、それもなかった。資産の推移もグラフで見るしかなくなり、分かりにくくなった。機能向上がほとんどなく、機能を減らしただけのリニューアル。本気でマネーツリーなどへの乗り換えを考えた。

 ベータ版テストもやっていたそうだが、サンプル数が少なかった(多様性に欠けていた)のではないか。『マネーフォワード ME』Web版リニューアルに関する今後の方針についてによると、「特に資産管理を目的としたユーザーの方々にとって、一部使いにくい変更となってしまいました」とある。マネーフォワードのメリットは銀行や証券会社など資産データのアグリゲーションが容易なことで、家計管理の便利さなどではない。そんなこと事前に分からなかったのだろうか。

 とりあえず元に戻ったので良いのだが、マネーフォワード for auスマートパスは今月末で提供終了となり、来月末までしか使えない。先月初め、メールで連絡があった。これはauがやめるのかと思ったら、マネーフォワード側の決定だった。仕方がないので普通の有料版に移行するが、こうなるとauスマートパスプレミアムににこだわる必要はなくなる。というかauにこだわる必要もなくなるのだった。携帯キャリアの乗り換えも検討しよう。

2020/06/22(月)「ウエスタン」と「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」

 NHK-BSプレミアムが19日に「ウエスタン」を放映した。ところが、これ上映時間は2時間45分あった。ご存じのようにセルジオ・レオーネ監督の「ウエスタン」は1969年の日本公開時に2時間21分の短縮版が上映された。興行上の理由だろう。そして昨年9月、2時間45分のオリジナル版が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト」のタイトルで「日本初公開」と銘打って劇場公開された。

 だから「ウエスタン」というタイトルならば、短縮版だろうと思い込んでいたのだ。考えてみれば、劇場公開時の短縮版にすぎないわけだから、テレビ放映やソフト化の際に短縮版を使う必要はないのだ。ちなみにアメリカの劇場公開版は日本版より4分長いそうだ。こういう時、配給会社が勝手にフィルムを切って良いのだろうか。それとも監督やプロデシューサーに短くするよう依頼するのだろうか。気になるところだ。

 映画はベルナルド・ベルトリッチとダリオ・アルジェントがストーリーの原案を書いていることと、ヘンリー・フォンダが珍しく悪役を演じているという注目点がある。ハーモニカを吹く謎のガンマン(チャールズ・ブロンソン)がフォンダ演じる極悪ガンマンのフランクを倒すのが本筋。これに鉄道工事を巡り、フランクに家族を殺されたジル(クラウディア・カルディナーレ)と、その冤罪を着せられたガンマンのシャイアン(ジェーソン・ロバーズ)が絡んでくる。はっきり言って、2時間ぐらいに収まりそうなストーリーなのだが、悠揚迫らぬタッチというのもレオーネ映画の魅力ではあるのだろう。

 映画を見始めて、タイトルが出ないことに気づいた。これはもしかして、と思ったら、やはり最後にタイトルが出た。クエンティン・タランティーノ監督は「この映画を見て映画監督になろうと思った」そうだから、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のタイトルがこの映画の影響を受けているように、タイトルの出し方も影響されたのだろう。もっとも、タランティーノの映画でタイトルが最後に出たのはとても効果的だった。シャロン・テート事件をまるでおとぎ話のような結末にした後に見せるこのタイトルは絶妙なのである。

 amazonでは「ウエスタン」のブルーレイが980円で販売されている。上映時間は166分で1分長いが、誤差の範囲内でしょう。


 それにしても、去年の劇場公開時の「日本初公開」はいかがなものか。あくまで「日本の劇場で初公開」でしょう。DVDやブルーレイ、動画配信サービスでは何年も前から完全版を見ることができていたのだから。

2020/06/08(月)「陽のあたる坂道」再見

 30年ほど前、NHK-BSで放送された石原裕次郎主演の「陽のあたる坂道」(1958年、田坂具隆監督)を見てとても感動した思い出がある。同じ原作の連続テレビドラマ(1965年、TBS)を断片的に見たことはあったが、ちゃんとした内容は知らず、映画で初めてどういう話か知ったのだった。近年、この映画のDVDは手に入りにくくなっていて、もう一度見るのは難しいかと思っていたら、Huluで配信されていた。ネットの評価を見ると、酷評している人もいる。僕の当時の見方が甘かったのかと思って再見してみた。個人的にはやはり胸を打たれる内容だった。

 二部構成で3時間29分の大作。女子大生の倉本たか子(北原三枝)が、坂道にある裕福な田代家の末っ子くみ子(芦川いずみ)の家庭教師になるところから始まる。田代家はくみ子と、優秀な長男で医大生の雄吉(小高雄二)、自由奔放な次男の信次(石原裕次郎)、出版社社長の父親(千田是也)、母親(轟夕起子)の5人家族だ。このうち信次だけ母親が違うことが分かってくる。雄吉もくみ子もそれを知っているが、表面上は皆、このことを話さない。たか子は青森出身で、アパートに一人暮らし。同じアパートに住む高木トミ子(山根寿子)、民夫(川地民夫)親子と家族のような付き合いだ。そしてトミ子が実は信次の母親であることが分かる。

 石坂洋次郎の原作は青春小説に分類されるらしいが、映画は家族の問題を中心に据えたホームドラマの側面が強い。監督の田坂具隆はそういう題材を得意にした人だから、これは当然の結果だろう。

 くみ子は足に障害があるが、それは子どもの頃にはしごから落ちた事故のためだった。その事故は雄吉の不注意に原因があったのだが、信次は兄をかばい、事故を自分のせいにしている。これに呼応する形で信次は、ファッションモデルの女を2度堕胎させたことをヤクザに脅されている雄吉の身代わりになる。信次は自分のこととして母親に告げるが、母親はそれが雄吉のしたことであることを見抜いている。長いが、2人の対話を引用する。

「私は頭の中で雄吉とお前をちゃんと入れ替えにして聞いてたのよ。あたしがどんなにみじめな気持ちで聞いてたか、お前には想像がつくと思うけど。お前がこんな割りの悪い役を引き受けたのは、また私たち親子に対する優越感に浸りたいためからだったんじゃないの?」
「ひどいよ、ママ。第一、そんな話は兄貴のいる時にしてくださいよ」
「雄吉はきっとどこかで飲んでますよ。いくら良心のない人間だって、あんなしらじらしいことを私にしゃべった後では、お酒でも飲まないとじっとしてられないでしょうからね」
「ねえ、ママ。ママはどうして僕と兄貴が嘘をついてるって感じたんです?」
「私の方こそ聞きたいくらいよ。どうしてお前たちはくみ子のけがの時と同じ型の嘘を思いついたのかしらね」
「そう言えば、ママだって同じじゃないか。嘘だと思ったら、なぜ兄貴のいる前ですぐあばいてあげなかった?」
「分かりましたよ、信次。お前はそれを私に教えてたのね。二度も同じ嘘芝居をしてみせたのは、私の立場を昔のくみ子の折と同じにしておいて、私から雄吉の嘘を暴かせようとしたのね、それがお前の意図だったのね」
「僕は何もそんな難しいこと考えちゃいないよ。ただ、ママは知ってたんだから、小さい時からその嘘を暴いていれば、兄貴はもっと違った人間になってたかもしれないって、ただそう思っただけだよ」
「そう、お前は私の一番痛いところを突いたわね。そうなのよ、信次。私にはそれができないの。……雄吉がああいう性格に育ったのは私がそうしたんだとも言えるんですからね。雄吉を暴いて批判することは、まるで自分で自分を暴くような気がするの。もしも仮に私が思いきって、あるいはお前にそそのかされて、雄吉を暴いたとしたら、雄吉はどうなるでしょう。雄吉は死ぬほど恥ずかしい思いをするんじゃないか、雄吉は生きていけるだろうか、そう思うと雄吉がかわいそうで、あの子が我慢して、すましたポーズでいるほどかわいそうで、私にはとても…」
「ママ、分かるよ」
「ねえ、信次、パパと私はお前たちが結婚しても2人だけで暮らすつもりだけど、もしパパが先にお亡くなりになったとして私一人で暮らして行けなくなったら、私はくみ子の家か、そうでなかったらお前の家で世話になろうと考えてるのよ。その時お前は私を入れてくれますか?」
「ああ、いいよ。ママもあんまり幸せじゃないんだな」
「お前、ほろりとした気分に騙されちゃダメよ。私、いつお前にひどいことをするか分からないんだからね。油断してると、酷い目に遭うよ」
「僕、油断しないよ、ママ」

 上映時間が長いだけに人物描写が細やかだ。石原裕次郎はアクション映画のイメージが強いのだが、こうした作品でもうまい俳優だったなと思う。貧しい暮らしを送ってきた実の母親と弟の描写にも胸に迫るものがある。北原三枝、芦川いずみも好演している。1958年度のキネマ旬報ベストテン11位。この年は1位「楢山節考」(木下恵介監督)、2位「隠し砦の三悪人」(黒澤明監督)、7位にはヴェネツィア国際映画祭金獅子賞の「無法松の一生」(稲垣浩監督、三船敏郎主演)と傑作が目白押しの年だった。

 「陽のあたる坂道」のDVDを探していて、「石原裕次郎シアター DVDコレクション」というシリーズがあるのを知った。朝日新聞出版が2017年7月から刊行を始めたもので、全93冊となるDVD付きムック。「陽のあたる坂道」は第3号に収録されていたが、既に古本しかない。