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「ナポリタン」「とろろご飯」「カレーライス」の3編からなるオムニバス、というより短編連作の趣だ。素朴な料理と素朴な人情が実にマッチしていて心地よい。都会の片隅の深夜食堂こと「めしや」に常連が集うのは素朴な家庭料理があるからだろうし、そこには素朴な人情が生まれる。店のたたずまいと出てくる料理の素朴さのためか、時代は東日本大震災後の今なのに1960年代あたりの雰囲気が感じられる。一種ノスタルジックな味わいがあるのだ。そこがこのドラマの魅力であり、人情長屋を舞台にした落語の世界に通じるものを感じた。時代は変わっても、人と人とのかかわりはそんなに変わらないのだと、松岡錠司監督は控えめに主張しているのかもしれない。
3つのエピソードをつなぐのは店に忘れられた骨壺のエピソードだが、これはそれほど太い幹ではない。食堂主人の小林薫のように、控えめに各エピソードをつないでいる。ただし、このエピソードを締める田中裕子の演技は絶妙のおかしみが漂っていて良い。
映画だからといって気を張らず、テレビドラマの雰囲気を壊さずに無理なく映画化している点に好感が持てた。同じシーンには出てこないが、高岡早紀と筒井道隆の「バタ足金魚」コンビが出ているのもうれしい。「とろろご飯」編をしっかり支える多部未華子が良くてうまくて感心した。