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黒沢清監督のホラー。ネットスリラーというコピーだが、破滅SFに近い。主人公の麻生久美子と加藤晴彦の身近で友人らが次々に不審な死を遂げる。加藤晴彦自身もインターネットで不気味な映像を見る。大学の先輩(武田真治)が言うには霊界の広さには限界があり、人間界と通じる回路ができたことで、そこから幽霊たちが人間界を侵食しているらしい。幽霊に触れた者は死んでしまう。
基本のアイデアはファンタジーなのだが、終盤の展開は破滅SFそのもの。人通りの絶えた東京で主人公2人は宛てもなく逃走する。あかずの部屋、煙を吐きながら墜落する飛行機、薄暗い画面、漂う煙、ぼんやりした幽霊…。不気味な雰囲気を漂わせる風景や幽霊の描き方など黒沢清の絵作りには感心させられる。脚本には弱い部分もあるが、こういうアイデアは珍しい。
怖がりの僕にはホラーとしての味付けは余計なものに思えるが、SFとしては幽霊の侵食にきちんとした理論がほしいところ。もちろん元々SFを作ろうというつもりはなく、ホラーの設定を突きつめていったら、SFに近くなったのだろう。凡百のホラーを超えたユニークな作品であることは間違いない。加藤晴彦は好演。麻生久美子、小雪も良かった。