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アカデミー賞5部門受賞に何の文句もない傑作。楽しくてホロッとさせて元気になる映画だ。エンタテインメントの要素をてんこ盛りにした作風が良い。昨今のバカCG映画((C)小林信彦)とは一線を画す仕上がりで、アカデミーノミネート作品でもこれがダントツの出来だろう。
白黒スタンダードでほぼサイレントという作りなので最初はどうかなと思ったのだけれど、ルドルフ・ヴァレンティノ+ダグラス・フェアバンクスというよりもむしろクラーク・ゲーブルを思わせる主人公ジョージ・バレンティン(ジャン・デュジャルダン)の風格と、タップダンスが魅力的なペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)の組み合わせに引き込まれた。「スタア誕生」のプロットを大まかになぞりながら、サイレント映画のパロディに陥るわけではなく、立派にオリジナリティーがある。
キム・ノヴァクはクライマックスで「めまい」の音楽が使われたことに異議をとなえたそうだが、バーナード・ハーマンのロマンティックで美しいスコアは少しも汚されてはいない。ハリウッド映画への愛情があふれた映画だが、それだけに終わらず、シンプルなラブストーリーとして好ましい出来だ。主人公を支えるベレニス・ベジョの役柄は男にとっては理想的な女性だ。
欲を言えば、映画の中で言われるほどベレニス・ベジョがチャーミングに見えないのが難。タップを踊れて演技のできる女優は限られているのだだろう。