2021/07/01(木)6月に見た映画
「映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」
脚本の弱さが致命的。前作もそうだったが、30分のテレビドラマでは成立したものが、2時間の映画では持たない。前半の退屈さに比べれば、後半のロシアンルーレットの場面は悪くないが、いかさまのトリックが穴だらけ。もっと脚本を練ってほしい。浜辺美波、池田エライザ、森川葵などのファンの方はどうぞ。
「明日の食卓」
WOWOWオンデマンドで見た。石橋ユウという同じ名前(ユウの漢字は違う)で同じ小学3年の男子児童を育てる3人の母親の話。裕福な家庭(尾野真千子)、共働きの家庭(菅野美穂)、シングルマザーの家庭(高畑充希)と3つの家庭は異なる環境だが、それぞれに男児を巡る問題が起きてくる。子育てを巡る切実な問題が描かれ、瀬々敬久監督が力作に仕上げている。一つ疑問なのはこれ、原作由来の問題なのだが、児童が同じ名前である必要がないこと。3人の母親に接点がまるでなく、冒頭に描かれる事件との関連を示唆してるにも関わらず、なんだこれはというラストになる。つまり、3つの話を一つの作品にまとめたいがために同じ名前にし、余計な事件を加えたという構成なのだ。
しかも、そっちの事件の方が深刻なので、そっちを詳しく描かないとダメでしょう。ネタバレになりかかってるのでやめるが、子育ての母親の苦悩を描く部分はとても良いので、もったいない構成と思う。
「AWAKE アウェイク」
Netflixオリジナル。SFだったので見たが、激しく後悔した。世界的な大停電の後、人類は眠れなくなってしまい、昏睡状態の患者たちも目を覚ます(だから「アウェイク」というタイトル。目覚めというより不眠症だ)。主人公の娘はなぜか眠れる。その娘を政府機関が狙ってくるという展開で、アイデアの発展が少しもないC級SFだった。
IMDb4.8、メタスコア35点、ロッテントマト31%と酷評されている。
「Mr.ノーバディ」
アメリカではそんなに評価が高くない(IMDb7.4、メタスコア63点、ロッテントマト83%)ので、スルーしようかと思ったが、日本ではなかなか好評のようだ。ヘンリー・フォンダが出た映画で同じタイトルがあったよなと思い、調べたら「ミスター・ノーボディ」(1973年)だった。さらに「ミスター・ノーバディ」(2011)という映画もあった。
ひと言で言うと、「なめてた相手が実は殺人マシンだった」という映画だ。最近ではデンゼル・ワシントン主演の「イコライザー」がこのタイプだった。主人公のハッチ(ボブ・オデンカーク)は自宅と工場を往復するだけの毎日を送っているが、ある夜、自宅に2人組の強盗が押し入り、間一髪のところで撃退する。実はハッチ、過去に国の機関で凄腕の殺し屋として働いていた。強盗との格闘でかつての自分に火が付き、ハッチは強盗が手首にしていた刺青を手がかりに居所をつきとめ、盗まれたものを取り返す。
これで終われば良かったのに、帰りのバスにロシア系のギャングが数人乗り込んできて、ハッチは戦う羽目になる。全員を病院送りにするが、そのうちの1人はロシアンマフィアのボスの弟だった、という展開。序盤の刺されたり、殴られたり、自分も傷を負いながら戦う主人公にリアリティーがあり、これは傑作かと思ったが、クライマックスのアクションがリアリティーを欠き、大きく減点した印象。メタスコアの低い点数はこのあたりが影響したのだろう。
ただ、B級アクションを好きな人なら、見て損はない映画だと思う。主演のボブ・オデンカークは大傑作ドラマ「ブレイキング・バッド」の悪徳弁護士役でブレイクした俳優。アクションをやるタイプには見えないが、だからこそのキャスティングだろう。ちょい役でマイケル・アイアンサイドが出ている。すっかり太ってて、最初は誰だか分からなかった。強烈な印象があった「スキャナーズ」から既に40年だからなあ。
「キャラクター」
小栗旬は2016年の「ミュージアム」でやはりサイコパスを追う刑事役をやっているから、この映画でも同じような主役級の役回りなのだろうと思っていた。中盤でまさかああなるとは予想していなかった。脚本は永井聡監督と長崎尚志、川原杏奈の3人で書いているが、オリジナルでここまで面白い話にできるのは大したものだと思う。ただ、サイコパスの犯人像というのはヒッチコックの「サイコ」(1960年)のモデルになったエド・ゲインにずーっと、どんな作品でも影響されている。模倣してると言っても良い。「レッド・ドラゴン」や「羊たちの沈黙」などもそうで、サイコパスはこうしたキャラクターが一般的になっている。
まあ、今回もそのパターンを抜けられなかったのは少し残念ではある。犯人のアパートの部屋なんて、一目で異常者と分かってしまう。現実にはあんな風にはならないだろう。アメリカの田舎の方の人口の少ない地域ではエド・ゲインのように死体の皮を剥いだりすることもできたのだろうが、日本のアパートでは近所の人に怪しまれてしまうだろう。
「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」
3年ぶりの続編で、音に反応して人間を襲うモンスターが大量に出現し、荒廃した世界を舞台にしたSFホラー。冒頭に1日目の描写があるが、話は前作の終了直後から進む。今回もサスペンスたっぷりに進行し、前作を上回る評価を得ている。ジョン・クラシンスキー監督と主演のエミリー・ブラントは夫婦で良い仕事をしているなと思う。ただ、モンスターの弱点は前作で分かったため、展開の目新しさはなかった。
「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」
腹立たしいことに入場料が1900円均一だった。招待券も使えず。これでつまらなかったら怒るところだが、予想より面白かった。中盤にある市街地上空でのモビルスーツの戦いで下の建物や人たちが被害に遭うという「ガメラ3」みたいなシーンに迫力があったし、徐々に分かってくる人間関係も楽しめた。加えてヒロインのギギ・アンダルシア(10代なのに80歳超の富豪の愛人)にセクシーな魅力があり、中高生男子はイチコロだろう。
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年)の12年後の話といわれても、33年も前の「逆襲のシャア」の細部は忘れているが、原作はその翌年1989年から1990年にかけて発表されたそうだ。3部作と言われていて、話はまだまだ導入部。続きを見たい気持ちになった。
「アメリカン・ユートピア」
ただし、スパイク・リーがやったことは舞台を真上から撮影したり、犠牲になった黒人の名前を連呼する歌に合わせて犠牲者の写真を出すなど元のショーを効果的に見せるための補足的な演出にとどまる。
映画にすることでブロードウェイに行けない世界中の観客がこの優れたショーを見ることができるというメリットはあるが、これを映画と言うなら、「キンキーブーツ」はもちろん、堂本光一主演の「Endless Shock」も同列に扱う必要があるだろう。そのあたり、釈然としない気持ちも残った。
「ブータン 山の教室」
アカデミー国際長編映画賞のブータン代表作品。標高4800メートルにあるブータン北部の村ルナナを舞台に、都会から赴任した男性教師と子どもたちや村人との交流を描く。ルナナは人口56人。電気は太陽光発電で不安定、水道もガスもない不便なところで、8日かけてたどり着いた若い教師はすぐに帰りたくなるが、次第に素朴な村人たちに惹かれていくという話。といっても、教師はオーストラリアに行きたいという夢を持っていて、数カ月で村を後にすることになる。
「ブータンは世界一幸福な国と言われるのに、若者は幸せを求めて外国へ行く」という村長の指摘には考えさせられる。
「夏への扉 キミのいる未来へ」
夏菜は意外なことに悪女役が実にぴったりな感じ。この路線で菜々緒に負けない存在になれるのでは、と思えた。
「Arc アーク」
不老不死を巡る話だが、前半に描かれるのは死体の防腐処置(プラスティネーション)。これが無用に長いのが敗因で、単純に脚色(石川慶、澤井香織)の失敗だと思う。
後半の展開を考えれば、前半にはプラスティネーションではなく、主人公(芳根京子)が十代で子どもを産み、捨てた経緯をもう少し詳しく描いた方が良かっただろう。後半はエモーショナルな映画らしくなるだけに前半の無機質な描き方が悔やまれる。
役柄の予想はつくが、小林薫が情感を込めたさすがの演技を見せて良かった。
2021/04/04(日)2本のサイレント映画
Wikipediaによると、「激しいフラッシュバックや多重露光、キアロスクーロ、素早いショット繋ぎ、オーバーラップなどの技法を駆使して斬新な映像表現を試みた、日本初のアヴァンギャルド映画」。ドイツ映画「カリガリ博士」(1920年)に影響を受けているそうだ。公開当時は一種のホラーだったのではないか。精神病院の患者たちを恐怖の対象にしているのは明らかだ。関連作品としてamazonが表示したトッド・ブラウニング「怪物團(フリークス)」(1932年)が公開された際の観客の受け止め方と同じだったのではないかと思う。
急いで付け加えておくと、当時の見世物小屋を舞台にして観客に大きなショックを与えた「フリークス」には障害を持った人がたくさん出てくるが、そうした人たちを恐怖の対象とはしていない。ストーリーはむしろ健常者の方があくどいことをやる、という結論であり、出てくる障害者の多くは善良な人たちとして描かれている。現在では高く評価され、IMDb7.9、メタスコア80、ロッテントマト95%と高得点なのも納得できるのである。
「狂った一頁」はYouTubeでも見られる。
閲覧履歴に基づいてamazonがお勧めしてきたのは同じくサイレント映画の「何が彼女をさうさせたか」。鈴木重吉監督作品で1930年度キネ旬ベストテン1位。長らく「幻の映画」になっていたが、1992年にソ連で発見され、大阪芸術大学によって修復・復元された。1997年の第10回東京国際映画祭で上映されたそうだ。こちらは丁寧な字幕があるので極めて分かりやすく面白い。
「公開当時に流行し、社会主義思想の影響を受けた『傾向映画』の代表作としても知られる」とWikipediaにある。主人公の少女は不幸の固まり、不運の連続のような人生を送る。親が自殺して叔父に頼るが、曲馬団(サーカス)に売られる。恋心を寄せた青年と脱走の途中に青年が交通事故に遭ったため離ればなれになり、少女は職を転々として酷い目に遭い続ける。
悪人は本当に悪人顔という分かりやすい配役をしている。救いのない展開で悲劇のまま終わるのが「傾向映画」らしい。ラストはフィルムが消失していて字幕だけになる。偽善や不正への少女の怒りをどう表現していたのか映像が見たいところだが、もうどこにも残っていないのだろう。
この映画もYouTubeにアップされている。
2021/03/19(金)「さらば映画の友よ インディアンサマー」の感慨
原田眞人監督のデビュー作「さらば映画の友よ インディアンサマー」(1979年)のダンさん(川谷拓三)はそう言う。僕も365本の映画を見ることを今年の目標にしたが、劇場のほかに配信とDVD、テレビ録画も含めての数字だ。ダンさんの場合は劇場だけでカウントしているから、1年で365本はけっこう大変な数字ではある。映画の時代設定の1968年当時はまだ名画座が健在だったから、こうしたこともできたのだろう。映画は数多く見れば良いというものではない。しかし、数多く見ておかなければ、分からないことだってある。
1979年度のキネマ旬報ベストテン49位。はっきり言ってキネ旬ベストテンの30位以下にはあまり意味がない。投票者が少なくなるからで、この映画に票を入れたのは2人だけだった(南俊子と渡辺武信)。もちろん、ベストテンに入れたくなる映画というのはどこかに魅力があるのだ。
静岡県沼津市が舞台。予備校よりも映画館に多く通っているシューマ(重田尚彦)は映画館で中年の映画ファン、ダンさんに出会う。映画館の中でおしゃべりしていた女子学生たちを注意したダンさんは痴漢扱いされ、その窮地をシューマが救ったのだ。「死の接吻」のリチャード・ウィドマークのセリフを引用したことで、ダンさんが根っからの映画ファンであることが分かり、2人は意気投合する。この2人に絡むのが17歳の少女ミナミ(浅野温子)。シューマはミナミを好きになるが、ミナミにはヤクザが付いているらしい。
沼津は原田監督の出身地だから体験的な部分も入っているとのことだが、終盤はフィクションの度合いを強める。ダンさんは拳銃を手に入れて、1人でヤクザの親分の屋敷に殴り込みをかけるのだ。
出演者の多くは既に亡くなっている。川谷拓三、重田尚彦、トビー門口、原田芳雄、鈴木ヒロミツ、室田日出男、そして映画評論家で最初の方に出てくる映画館主役の石上三登志。SFに詳しい石上さんはキネ旬などによく映画評や長い評論を書いていて、それを読むのが僕は好きだった。42年前の映画だから亡くなった俳優が多いのは仕方がないが、感慨を持たざるを得ない。
この映画も長い間、見ることができなかった。ファンの要望を受けて、ようやくDVDが発売されたのは昨年9月。原田監督が監修に当たったそうだが、元のフィルムが劣化していたためか、全体的に赤みがかっていて、画質的に満足できる仕上がりではないだろう。
内容に関して原田監督は日記にこう書いている。
「さらば」は演出的には稚拙なパーツ満載の映画ではあるが、20代で撮った作品はこれ一本。駆け出し監督の痛点を見てもらえればありがたい。いやいや、イタいところなんてないですよ。時代背景も含めて僕には懐かしい映画でした。
2021/03/08(月)「午前十時の映画祭11」上映作品ランキング
順位は次の通り。
(1)赤ひげ(1965年)1位の黒澤明監督の「赤ひげ」は山本周五郎の原作を映画化した3時間5分の大作。僕は「羅生門」のラストの取って付けたようなヒューマニズムが嫌いだったが、この作品は黒澤監督のヒューマニズムが最も良い形で出た傑作だと思う。1965年度のキネマ旬報ベストテンでも1位を獲得した。
(2)ターミネーター2(1991年)
(3)天使にラブ・ソングを…(1992年)
(4)スタンド・バイ・ミー(1986年)
(4)アンタッチャブル(1987年)
(6)座頭市物語 4Kデジタル修復版(1962年)
(7)隠し砦の三悪人 4Kデジタルリマスター版(1958年)
(8)ターミネーター(1984年)
(9)ユージュアル・サスペクツ(1995年)
(9)ファイト・クラブ(1999年)
(11)シャイニング 北米公開版(1980年)
(12)グラディエーター(2000年)
(13)2001年宇宙の旅(1968年)
(14)ザ・ロック(1996年)
(15)ノッティングヒルの恋人(1999年)
(16)グッドフェローズ(1990年)
(17)ナイトメアー・ビフォア・クリスマス(1993年)
(18)シカゴ(2002年)
(19)未来世紀ブラジル(1985年)
(20)真昼の決闘(1952年)
(21)ファーゴ(1996年)
(22)マディソン郡の橋(1995年)
(23)ロミオ+ジュリエット(1996年)
(24)イージー・ライダー(1969年)
(25)モスラ 4Kデジタルリマスター版(1961年)
(26)ティファニーで朝食を(1961年)
(27)イングリッシュ・ペイシェント(1996年)
2位の「ターミネーター2」は1991年キネ旬ベストテン8位。公開当時、「VFXはすごいが、映画のまとまりは1作目の方が上」と思った。殺人を禁じられたターミネーター、T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)の魅力は1作目に比べて半減してると思ったんですけどね。今の観客の目から見れば、VFXのレベルの違いがそのまま作品の面白さの違いになるのかもしれない。
上の表のPDFは以下にあります。
「午前十時の映画祭11」上映作品ランキング(PDF)
2021/03/03(水)映画観賞作品リストを作る
しかし、劇場公開映画しか記録できないとなると、だんだん未公開映画やNetflixオリジナル映画を見なくなってくる。つまり記録できる映画しか見なくなる、あるいは記録できない映画の優先度が低くなるのだ。これは本末転倒なことなので、なんでも記録できる観賞作品リストを自分で作ることにした。最低限必要な記録項目は映画のタイトル、観賞日時、観賞方法、評価だろう。あとは必要に応じて観賞費用とコメント入力欄があればいいか。Excelで作ってみると、これで十分な感じ。Excelがない場合はGoogleスプレッドシートでもいい。
表計算ソフトで作るメリットは日付や評価点数でソートできることだ。僕は月ごとに記入シートを分けて記録しているが、1年分のリストをつないで評価点数でソートすれば、簡単に年間ベストテンを選ぶことができる。年間の観賞本数が100本程度までなら1枚のシートに記録した方が一覧性があって良いかもしれない。
で、2月分を記録した。見た映画は24本。内訳は日本映画18本、外国映画6本。観賞方法は映画館6本、WOWOW9本、amazonプライムビデオ5本、Netflix2本。日本映画専門チャンネルと購入DVD各1本。観賞費用は8,180円。このほかHulu、Netflix、amazonプライムビデオ、ディズニープラス、日本映画専門チャンネルの月額料金を合わせて4,895円(WOWOWの料金は月額2,530円だが、12月から3月までは株主優待で無料)。合計13,075円だった。普段の月は映画館で見る映画は週2本ペースなので、WOWOWの料金を加えても2万円ぐらい。趣味の費用としてはまずまずか。
Huluでは1本も映画を見ていないが、利用していないわけではなく、ドラマやバラエティーなどは見ている。古い日本映画やサタデー・ナイト・ライブが見られるのはHuluのメリットだ。まあ、それでも映画ファンとして利用の優先度は低くなるなあ。