2013/03/23(土)タコ足配当

 ドルコスト平均法に従って昨年7月から毎月積み立てをしているDLIBJ公社債オープン(中期コース)の基準価額が21日に66円も下がった。あれ、債券相場は上昇したのになぜだろうと思ったら、この日、1万口当たり80円の分配金が出ていた。この投信、元本を取り崩して分配するタコ足配当の投信だったのか?

 SBI証券が発行した「自動けいぞく投資 再投資のご案内」を見たら、やっぱり元本払戻金(特別分配金)になっていた。特別分配金は元本を取り崩して支払う分配金のこと。この場合、非課税扱いのはずだが、なぜか課税されている。分配時の基準価額が個別元本(取得単価)を上回っている場合は利益が出ていることになるので、課税されるらしい。

 利益に課税されるのは仕方がないが、こんなことなら分配はない方が良かった。税金の分だけ元本が減ることになるからだ。僕は分配金再投資の設定にしているが、これは分配しないということではなく、いったん分配金を出して税引き後に再投資するということなのですね。知らなかった。

 DLIBJ公社債オープン(中期コース)の分配金は毎年3月と9月。タコ足配当がほとんどの毎月分配型の投信よりはましだが、タコ足であることに変わりはない。同じく積み立てをしているeMAXIS 国内債券インデックスは2009年10月の設定来一度も分配金を出さず、基準価額が右肩上がりになっている。長期的な資産形成をする場合はこちらの方が望ましいだろう。アクティブ型とインデックス型の違いはあっても、どちらも国内債券の投信なので、より有利なeMAXISに一本化しようかなと思っている。

暴落時の選択

山崎元「ホンネの投資教室」の「国債暴落」を個人投資家の立場から考えるを読むと、なんだか将来が不安に思えてくる。「アベノミクスが十分に目的を達したあかつきには、国債暴落が起こる公算はかなり大きい」という見方なのだ。

 通常、暴落でなくても国債価格が下がれば、金利は上がる。金利が上がれば、円高になる。となれば、円高不況に逆戻りするので、「外貨リスクをいつまでも大きく取り続けているのは危険」という意見はもっともだという気がする。円安進行中の今、海外の株や債券、REITに投資すれば、円高になった場合、利益を上回る為替差損によって損失を被る恐れがあるのだ。

ただし、アベノミクスがインフレ目標2%を達成するには2年はかかると言われている。この記事も「向こう数年以内に起こってもおかしくない」状況に関する考察だということに留意しておいた方がいい。長期的に見れば、少子高齢化の進行によって日本の経済力は衰えていくだろうから、円安になるという見方が一般的だ(それはそれでなんだか悲しいことではある)。

長期分散コツコツ投資の場合、そういう状況になってもコツコツしていていいかどうか。それは投資家の年齢と関係してくる。定年退職まで20年、30年ある人は損害を被ってもいずれ巻き返せるだろう。リーマン・ショックでの損失が今、回復しているのと同じだ。残り10年を切っているような人は大きな損失が起こりそうな状況では資金をさっさと安全資産に移した方がいい。というか、若い人でも逃げるに越したことはない。山崎さんは「国債暴落に特に強い商品は、実は個人向け国債(10年金利変動型)」としている。さらに金融緩和政策が引き締め政策に変わった場合は「現金ないし、現金に近いものがベスト」だそうだ。

 長期投資はリスクが小さくなるといわれることが多いが、実は短期投資に比べてリスクが大きい。それは山崎さんも吉本佳生さんも言っている。吉本さんの場合、長期投資は暴落に巻き込まれる恐れが大きくなるから、との理由。「むしろ暴落しそうな金融商品を買え!」には株価の暴落が数年に一度の割合で起きるようになった現在、「もはや長期投資は儲からない」と書いている。暴落に巻き込まれそうになったら、ほったらかしにせず、さっさと逃げるのが賢明だ。

2013/03/10(日)リバランス

 カン・チュンドさんの日経電子版の連載「コレだけ読めば大丈夫! はじめての投資信託」を毎週楽しみに読んでいる。今週は「定年退職後の資産管理 守るべき3つのルール」と題し、資産の取り崩し方について書いてある。定年後に預金を取り崩して生活費に充てていくと、いずれ預金は底をつく。投資信託などで資産のポートフォリオを組んで、利回り3.6%で運用し、そこから年間3.6%を現金化すれば、資産は減ることはない、という趣旨。

 この記事ではポートフォリオを5000万円としていて、3.6%ならば毎年180万円が現金化できる。しかし普通の会社員が5000万円まで資産を増やしていくのはなかなか大変だ。資産の額を一般的な投資関係の本で目標となっている3000万円にすると、180万円引き出すには毎年6%の運用利回りを目指すことになる。もちろん、うまくいかない年もあるだろうが、これは実現できない数字ではないだろう。現金化するのは毎月ではなく、年2回のリバランスの時が良いそうだ。

 リバランスと言えば、個別の株式をポートフォリオに組み入れると、リバランスが難しくなる。今のように株価がガンガン上昇している時には、まだ上がるのではと思ってしまい、なかなか売る踏ん切りがつかないのだ。株の売買は依存症になる人もいるほど面白いのだけれど、ポートフォリオは個別銘柄を組み入れず、投資信託とETFで構成した方が良いようだ。

寄付の文化

藤野英人「投資家が『お金』よりも大切にしていること」によれば、アメリカの成人一人当たりの年間寄付金額は約13万円。これに対して日本は2500円だそうだ。「ほとんどの先進国では家計の2~3%くらいの寄附をします。アメリカは3%です。ところが日本人は、家計のたった0.08%しか寄附しないのです」。アメリカでは年収2万5000ドル(240万円)以下の人が年収の4.2%を寄附しており、決して富裕層だけが寄附をしているわけではない。寄付の文化があるのだろう。

募金目標を1億1700万円としているみらいちゃんを救う会には現在、3700万円足らずしか集まっていない。病状は進行しており、時間的な余裕はあまりないそうだ。

宮崎県民が1人100円の寄付をすれば、1億1000万円余りが集まる。子供も含まれているので全員ができるわけではないが、1000円寄付すれば10人分、1万円なら100人分になるという計算はしても良いだろう。寄付は強要するものではないが、みらいちゃんへの支援に限らず、寄付は日常的にするものなのだと思う。アメリカの寄付の多さを見習いたい。

藤野英人はこう書いている。「あえて断言しますが、日本人ほどケチな民族はいません。困っている人のために寄附もしないし、社会にお金を回すための投資もしない。じゃあ、他の先進国の人たちに比べて、公共のためのお金である税金を多く払っているのかといえば、そんなこともない。日本の税率はむしろ低いくらいです」。

2013/01/01(火)預貯金の目減りと投資

 日経電子版で某投信会社の会長が「『大胆な金融緩和』があなたの現預金を脅かす」というコラムを書いていた。インフレになったら、中低所得者は食べることにも困ってしまう。預金に偏っている財産を投資にも向けるべきだという内容だ。

 インフレになれば、金利がゼロに等しい今の預貯金の価値が目減りするのは確かだが、こういう書き方では、がんの恐怖を煽って、加入を勧めるがん保険のやり方となんら変わらない。このがん保険、日本と韓国、台湾でしか流行っていないそうだ(特に日本が多い)。世界的に見れば、数ある病気のうち、がんの保障しかしない極めて特異な医療保険、という位置づけである。僕は医療保険そのものが不要だと思うが、どうしても入りたいなら、がん保険ではなく、普通の医療保険の方がまだましだと思う。がん保険に加入してよいのは家族・親族の多くが、がんで死んでいる人ぐらいだろう。

 インフレになって、企業の業績が上がったにしても給料はなかなか上がらないだろうから、生活は苦しくなる。そういう場合、どうするのか。多くの日本人はたぶん我慢する。この20年で日本人は我慢することに慣れてしまった。若者は車も酒も欲しがらなくなった。ZAiオンラインの「年間給与が低い会社100社」を見ると、年間給与200万円台の会社が多いのに驚く。庶民が自己防衛で投資を始めるよりも、社会全体が豊かになる政策が望まれる。景気回復の掛け声よりも、国民の生活を豊かにするという直接的な言葉がほしいものだ。

 昭和20年代、30年代の日本映画を見ると、日本人はみんな今よりはるかに貧しい。貧しくて不便でも不幸じゃない。貧しいのが当たり前の社会だからだ。映画「三丁目の夕日」シリーズが僕は好きだが、このシリーズで残念なのは画面から貧しさが欠落していること。当時の世相が皮膚感覚として分かっていないからだろう。あのシリーズ、きれいなカラーや3Dじゃなくて、小栗康平「泥の河」のように白黒映画にすれば、もっと雰囲気が出ると思う。もっとも、山崎貴監督はリアリズムをが目指しているわけではなく、ファンタジーやSFに近い感覚なのだと思う。そうした舞台設定で人情味豊かだった時代の理想像を目指しているのだろう。

2012/12/23(日)リスクとリターン

わたしのインデックスというインデックス投資支援サイトがある。個人投資家がコツコツ長期分散投資するための情報やツールを無料で提供していて、利用者はけっこういるようだ。ここの資産配分(アセットアロケーション)ツールを利用して作成したのが下のグラフ。現金(定期預金)が6割近くを占めるという保守的なポートフォリオで、リターン1.5%、リスク4.1%。これはどちらも平均(リターン5.1%、リスク11.3%)を下回っている。

ただし、過去のリターンは将来のリターンを規定するものではないというのが定説だ。衆院解散以来、株価が上昇していることもあって、実際のリターンは今のところ10%を超えている。これが続いてくれるとうれしいのだが、日本株は為替の影響を大きく受けるので、また円高傾向になったら、リターンは確実に下がる。

同サイトによると、日本株の過去20年のリターンはマイナス25%という恐ろしいことになっている。さらに恐ろしいのはリーマンショックの時期を含む過去5年間のデータでマイナス43%だ。リーマンショックのような株価の暴落は数年に一度の割合で起きる。株価上昇に伴って「持たざるリスク」なんていう言葉を用いる証券関係者がまたぞろ出てきたが、持っている方がリスクが大きいに決まっているのだ。日本株に集中投資するのはかなりのリスクがあると思った方が良い。

だから分散投資が必要なわけで、「しぶとい分散投資術―世界金融危機でわかった!」という本には分散投資をしていた場合、大恐慌後も数年で資産が回復したと書いてある。3年前に出た本だが、外貨投資に関する説明も的確で、名著だと思う。

2012/12/15(土)お宝保険は本当に得か

 生命保険の見直しをすることにした。加入しているのはJA共済の終身型で、保険料は年間32万円ほどの一括払いである。去年までは何も考えずに支払ってきたが、今年から投資を始めたので、費用対効果が気になり始めた。で、JA共済の担当者に来てもらい、話を聞いた。

 これまでに支払った保険料の総額は18年間で600万円を超えているそうだ。保険金は病気死亡の場合4200万円、災害死亡時6200万円、入院特約1日1万円(ただし10日以上の入院の場合しか出ない)といった内容。子どもが小さかったころはともかく、今は4200万円もいらない。子どもが大学を卒業するまでの費用を上回る蓄えもある。おまけに全労済にも入ってる。計算してみると、今のまま支払いを続けた場合、65歳の満了時までに1000万円を超える保険料を払うことになる。なのに、66歳以降の死亡保障は700万円。これでは見直すしかない、という気にもなるでしょう。

 担当者が提示したのは死亡保障を2000万円に落とす内容。保険料は年間14万5000円程度に下がる。これに医療保障を加えると、82000円程度が加算される。合計額は今より10万円ほど安いが、それでもまだ高く感じる。医療保障は本当に必要なのか?

 新しい医療保障では入院1日目から日額1万円が出るそうだ。最近の病院は長い入院は認めてくれないのでせいぜい1カ月だろう。30万円ぐらいなら不要だ。先進医療を受けられる契約にもなっていて、例えば、「固形がんに対する重粒子線治療」295万3000円にも対応している。これはかなり迷うが、払えない金額ではない。だいたい県内にはこういう治療をしてくれる病院はない。JA共済の指定病院は筑波大学附属病院など全国5カ所だけだ。医療保障の82000円は66歳以降も支払う必要がある。こうしたことを考えると、医療保障の部分はすっぱり切り捨ててもかまわないのではないかと思う。

 予定利率について聞いてみた。加入した平成6年12月の予定利率は検索して調べたら、一般的に3.75%だった。JA共済の場合は4.75%だという。20年以上前の利率5%を超える保険は「お宝保険」と言うらしいが、そこまではなくてもかなり有利な利率であることは間違いない。お宝保険は解約しない方がいいというのが大方の意見だ。今の利率は1.5%しかないからだ。

 ところが、よくよく聞いてみると、4.75%で運用しているのは保険料32万円のうち、わずか6万円余りなのだそうだ。最初に一時金として約72万円(それまで入っていた他社の保険の解約返戻金をあてた)を払っているので、これに毎年6万円を加えて18年間4.75%で運用すると、330万円ぐらいになっている計算。今後も6万円を毎年積み立てにあてた場合、65歳で670万円ぐらいになる。66歳からはいかに計算上増えようが、解約返戻金は700万円に届かないという。ちなみに今、解約すると、返戻金は300-400万円程度らしい。

 投資信託の場合、3%の手数料でも高いと感じる(だからネット証券のノーロードの投資信託をやっている)が、保険の場合は3%なんてもんじゃない。80%ぐらいの手数料(じゃないんだけど)を取っている計算だ。これならば、即刻解約して自分で運用した方がお得じゃないかと思う。返戻金を400万円として、保険料を払ったつもりで毎年22万円積み立て、利回り2%の投資信託で運用すると、65歳までに800万円近くなる。66歳以降は医療保障分の8万円を積み立てて運用すると、80歳の時には1200万円ほどになる計算なのだ(その頃まで生きてるかどうかは分からない)。

 払い済み契約についても聞いてみた。これまでに払った保険料で残りの保障をまかなうやり方。払い済みにすると、今後の保険料支払いはなくなるかわりに、医療特約などは付かず、死亡保障額も1000万円以下になる。JA共済はこれに抵抗する場合が多いと、検索したページには出てきたが、担当者はいやな顔もせず、「保障額を試算してみます」と答えた。担当者によると、最近、払い済みにする人が増えてきたそうだ。保険相談でのアドバイスらしい。

 いろいろ検討した結果、今の段階では解約して自分で運用するのがベストのように思えてきた。お宝保険と言うけれど、「とんでもなく手数料が高い投資信託」と思った方が良いのではないか。投資に詳しい人は継続か解約か検討してみた方がいい。もちろん自分で運用する場合、元本割れの危険が常につきまとう。投資について知らない人はやってはいけない。

 それと、蓄えの少ない20代、30代の頃は家族のためにも保険に入っていた方が安心だ。投資に詳しい人でも、解約した途端に交通事故死なんていうことが十分考えられるので、家族が生活に困らないぐらいの蓄えがない場合は解約しない方がいいだろう。JA共済のホームページには必要保障額のシミュレーションがある。シミュレーション結果がマイナスにならない限り、保険には入っていた方が良いということになる。