2000/09/20(水)「ミュージック・オブ・ハート」

 「エルム街の悪夢」のウェス・クレイブン監督による心温まる実話の映画化。ドキュメンタリーとして以前映画化され(邦題「ハーレムのヴァイオリン教室」)、1996年のアカデミー長編ドキュメンタリーにノミネートされたそうだ。

 それをクレイブン監督が見て感動したのが、映画化のきっかけ。クレイブンとしては初のホラー以外の映画になるが、演出には前から定評があるので、まず面白い映画に仕上がった。映画は前半と後半にはっきり分かれる構成。前半は主人公のロベルタ・ガスパーリ(メリル・ストリープ)がハーレムの小学校でバイオリン教室を軌道に乗せるまで。後半は一気に10年後に飛び、市教委から予算を打ち切られ、教室が危機に陥る話。ここがドキュメンタリーで描かれた部分で、ロベルタは生徒の親や友人の助力を得て、教室を存続するためのコンサートを企画。アイザック・スターンをはじめ一流のバイオリニストが協力してカーネギー・ホールでの公演にこぎつける。

 最初は“ハーレムの子どもを救うためにやってきた白人教師”と皮肉に受け止められるロベルタの前半の描写が良く、ここだけでも1本の映画として面白くなったと思う。しかし、それではエドワード・ジェイムス・オルモス「落ちこぼれの天使たち」の二番煎じになってしまう。ウェス・クレイブンは教室の中よりもロベルタの人となりを描く部分を重視したようで、ストリープが監督の期待に応えて絶妙の演技を見せる。後半はまあ、ドキュメンタリーには負けるのではないか。トントン拍子に話が進みすぎる気がしないでもない。実話でなければ、カーネギー・ホールでそんなに簡単にコンサートなどできるかい、と思うところだ。

 全体的にハッピーな感覚が好ましい映画で、へたに感動を強要しないところがいい。