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九州新幹線開業に合わせたお仕着せ企画をここまでの映画にするのは立派。あと30分ほど短かったら、文句なしの傑作になっていたのではあるまいか。九州新幹線の一番列車がすれ違う時に願いを言うと奇跡が起きる。それを信じた鹿児島と福岡に離れて暮らす小学生の兄弟を巡る話。
奇跡を縦糸とするなら横糸は自分が住む地域への愛着だ。桜島の降灰に「意味分からん」とうんざりしていた兄の航一(前田航基)は桜島が大爆発して住めなくなり、また家族4人で暮らせたらと思っているが、ラストでは風向きを見て、「今日は灰は降らへんな」と考えを変える。是枝裕和は安易な奇跡を描くことよりも子供たちの成長にスポットを当てている。まいるのは描写の隅々がいちいちうまいこと。凝ったストーリーでなくても、生き生きとした細部の描写で映画はここまで素敵になれるのだ。
左半身が少し不自由で、明らかに脳梗塞の後遺症と思える姿で仲代達矢演じる忠男が家を出る。その後を孫娘の春(徳永えり)が追う。春が給食の仕事で勤める学校が休校となり、春は東京へ出て行くことに決めた。一人娘は5年前に自殺して、忠男は春と2人暮らし。春が出て行けば、忠男は一人では生きていかねばならない。それに自信がない忠男は疎遠の兄弟たちを訪ね、居候を決め込もうと思ったのだ。忠男は春と一緒に兄弟たちを訪ねていく。
兄弟たちにはそれぞれに事情があり、自分勝手に生きてきた忠男を引き取ることを拒否する。その中で浮かび上がってくるのは家族の絆だ。春は別れた父親と会いたいと思うようになる。大滝秀治や淡島千景、香川照之、小林薫、田中裕子らが出てきては印象に残る演技を見せる。こうした俳優たちがそろったのは脚本が良かったからだろう。キネ旬ベストテン16位。監督は小林政広。