2015/07/05(日)「アリスのままで」
単語を忘れ、数分前の記憶が抜け、自宅のトイレの場所も分からなくなる。若年性アルツハイマーを描いたこの作品で主演のジュリアン・ムーアはアカデミー主演女優賞を受賞した。初期症状から重症化するまでを演じるムーアの演技は確かに賞に値する見事なものだし、アルツハイマーの進行過程もよく分かるのだが、物語自体には食い足りない思いが残った。アルツハイマーの進行過程だけでなく、プラスαのドラマがほしいと思えてくるのだ。ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」の後半部分だけを見ているような気分になってくるが、「アルジャーノン」の原作にあった人間性への深い考察やドラマティックな悲劇性がこの映画には足りない。本筋に絡めたサイドストーリーがあると、映画に膨らみが出たのではないかと思う。
主人公のアリスは50歳。ニューヨークのコロンビア大学(リサ・ジェノヴァの原作ではハーバード大学)で言語学を教えている。講演中に「語彙」という単語が出てこないなど言葉を忘れることが多くなり、大学構内をランニング中に自分のいる場所が分からなくなる。不安を感じたアリスは病院で検査を受け、脳にアミロイドβが増えていることから、若年性アルツハイマーと診断される。アリスは「病気が癌なら良かったのに」と夫(アレック・ボールドウィン)に話す。記憶がなくなり、自分が自分でなくなっていくことを自覚するのはつらいことだ。大学を辞め、自宅療養するが、症状は徐々に悪化し、自分の娘を認識できなくなることも出てくる。
怖いのは若年性アルツハイマーの遺伝子を持つ場合、100パーセント発症すると映画の中で医師が断言すること。アリスの3人の子どもの1人も遺伝子検査で陽性だった。それと学歴の高い人ほど進行が速いと言われること。医師の説明によれば、高い適応能力が補うので症状が表面化しにくいためらしい。つまり症状が表面化した時にはかなり悪化しているので進行が速く感じられるのだろう。
監督はリチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランド。グラッツァーはALS(筋萎縮性側索硬化症)で、アカデミー賞授賞式後の今年3月に亡くなった。IMDbによると、監督作品はこの映画のほかに、ゲイを描いた「ハードコア・デイズ」(2001年)など4本ある。
どうでも良いことだが、主人公アリスの次女リディア役の女優の名前が思い出せず、見ていて焦った。「トワイライト」シリーズの主演女優であることは分かっているのだが、名前が出てこない。頭に浮かんだのはヘイデン・クリステンセン。そんなわけない。それは「スター・ウォーズ エピソード2」のアナキンだ。しばらく考えてクリステン・スチュワートの名前をようやく思い出した(クリステンだけ合ってたわけだ)。だからこの映画で描かれることは他人事ではない。
そのクリステン・スチュワートは「トワイライト」よりずっと良い演技を見せる。3人姉弟の末っ子で上2人がエリートコースを歩んでいるのに対して、大学には行かず、演劇に打ち込んでいる。将来を心配して大学に行くことを勧めるアリスと対立するが、認知症の進んだアリスの面倒を最終的に見るのはリディアなのだ。映画のラストでアリスが言う言葉はリディアに向けて言ったものだと思う。この母娘の関係をもっと掘り下げると、良かったかもしれない。
2015/07/04(土)SBIカードの魅力ゼロへ
ポイント探検倶楽部がSBIカードのサービス変更について報じていた。「SBIカード、2015年10月1日から大幅改悪 SBIレギュラーカードの年会費も有料化へ」。SBIカードからニュースリリースも出ているが、これはユーザーにとっては大幅改悪と言うにふさわしい中身だ。年会費が有料化(972円)されるだけでなく、ポイントのキャッシュバック交換率が大幅に悪くなるのだ。
SBIカードは現在、10000ポイントが現金12000円と交換でき、業界トップクラスと言って良いポイント還元率(1.2%)を誇っている。それがいきなり0.5%に変更になる。しかも0.5%の還元は10000ポイントを交換した場合で、3000ポイントは1000円(還元率0.33%)、5000ポイントは2000円(同0.4%)と業界最低レベルになってしまう。
水準的な0.5%の還元率に変更するというのならまだ話は分かるが、それを超えてトップクラスからいきなり最低クラスへの変更というのはわけが分からない。カード利用者が減るのは目に見えているにもかかわらず、踏み切らざるを得なくなったということは相当に経営状態が悪いのではないか。
年間の利用額に応じてボーナスポイントがあるらしいが、それが大したことなかったらこのカードを利用する意味はなくなる。というわけでメインカードとして利用してきたSBIカードの支払いを他のカードに切り替えていこうと思っている。楽天カードやYahoo!JAPAN JCBカード、au WALLETクレジットカードなど還元率1%のカードはたくさんある。
元々、メジャーなカードではないし、利用者はSBI証券の利用者がメインだろうが、こういうことをやると、SBIホールディングス全体のイメージも悪くなる。住信SBIネット銀行やSBI証券はネット専業銀行・証券会社として規模が大きい方なので、あまり心配はいらないとは思うが、大企業が破綻した例は過去にいくらでもある。預金は1000万円まで保護されるし、証券も信託銀行が保管しているので破綻しても影響はほぼない。しかし、万一のために移行先を用意しておいた方が良いかもしれない。そんなことまで考えてしまう変更内容だった。
利用者にもかかわらず、僕はリリースを見落としていたが、住信SBIネット銀行がSBIカードを完全子会社化するそうだ(SBIカード株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ)。株式譲渡は今年10月。これに合わせての変更らしい。3月末時点でのカード会員数は8万3000人とのこと。