2025/02/02(日)「リアル・ペイン 心の旅」ほか(1月第5週のレビュー)
気になったので書店で買ってきました。カバーにある著者(玖月晞=ジウ・ユエシー)の写真を見て、女性だったのかとびっくり。映画はデレク・ツァン監督の男視線で描かれていましたからね。それと巻末の解説に「中国語の『少年』は少女の意味も含む」とあって、なるほどと思いました。少年よりも少女(チョウ・ドンユイ)の方がメインと思えましたから。
「リアル・ペイン 心の旅」

ニューヨークに住むデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)は誕生日が2週間違いのいとこ同士。デヴィッドはIT業界で働き、ブルックリンの自宅に妻と子供がいる。ベンジーは情熱的でチャーミング、自由奔放で人を魅了するが、どこか危うさを持ち合わせていた。兄弟同然に育ち、近年は疎遠になっていたが、数年ぶりに再会。亡くなった祖母の遺言で、彼女の故郷ポーランドのツアー旅行に参加することになる。ユニークなツアー参加者と交流するなか、正反対の性格であるデヴィッドとベンジーは騒動を起こしながらも、彼ら自身の“生きるシンドさ”に向き合う。
パンフレットによると、原題の「A Real Pain」には「本当の痛み」のほかに「困ったやつ」という意味があり、「自分を困らせる人に使う表現」とのこと。明らかにベンジーを指しているわけですが、誰とでも親しくなる半面、他人の迷惑を顧みないベンジーは心に傷を抱えて不安定な精神状態にあることが徐々に分かってきます。それをキーラン・カルキンは陰影豊かに演じています。
精神的に不安定なのはデヴィッドも同じようなのですが、デヴィッドには妻子がいることが大きな違いになっているのでしょう。2人は兄弟同然に育ったから親しいのではなく、ともに不安定な状態にあることを含めて相手のことがよく分かっているから親しいのでしょうね。
結果がどうなるかは分かりませんが、キーラン・カルキンもジェシー・アイゼンバーグも賞に値する力を見せていると思います。
IMDb7.1、メタスコア86点、ロッテントマト96%。
▼観客9人(公開初日の午後)1時間30分。
「お坊さまと鉄砲」

2006年のブータン。国王の退位によって民主化への転換を図るため、選挙の実施を目指して模擬選挙が行われることになる。周囲を山に囲まれたウラの村の高僧ラマ(ケルサン・チョジェ)はこの報を聞くと、次の満月までに銃を二丁用意するよう、若い僧タシ(タンディン・ワンチュク)に指示する。そのころ、“幻の銃”を探しに銃コレクターのロン(ハリー・アインホーン)がアメリカからやって来て、村人から古い銃を購入しようとしていた。
ブータンはかつて国民の幸福度が高い国として知られていましたが、2019年のランキングでは156カ国中95位にとどまり、それ以来、ランキングに登場していないそうです。幸福度は他者との比較で左右されることが多く、素朴なブータンの人たちも外国の豊かな情報に触れると、自分の今の環境と比較してしまうのかもしれません。
ドルジ監督はパンフレットでこの映画のテーマを「無垢」の価値としています。「残念なことに私たちがより近代的で教育水準の高い国へと変化し移行するにつれ、この美しい価値は失われ、捨て去られつつあります。現代人には『無垢』と『無知』の違いを区別できないのでしょう」
監督の父親は外交官で監督自身も外国に住むことが多かったそうです。ブータンに対して第三者的視点を持ち、その価値をよく知っているからこそ、前作や本作のような寓話的側面を持った作品が生まれるのでしょう。ブータンの実情に沿わない面もあるのかもしれませんが、「無垢の価値」の訴えには十分に共感できました。
IMDb7.2、メタスコア74点、ロッテントマト94%。
▼観客11人(公開5日目の午後)1時間52分。
「嗤う蟲」

イラストレーターの杏奈(深川麻衣)は脱サラした夫・輝道(若葉竜也)と共に都会を離れ、麻宮村に移住する。自治会長の田久保(田口トモロヲ)を過剰なまでに信奉する村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも、新天地でのスローライフを満喫する。杏奈は村民の中に田久保を畏怖する者たちがいることに気づく。輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された掟を知ってしまう。
この題材なら「理想郷」(2022年、ロドリゴ・ソロゴイェン監督)の方がリアルに振って、というか実話の映画化ですが、よく出来ていました。城定秀夫監督はパンフレットで「村八分に遭うが、村から逃げない」展開にリアリティを持たせることが難しく、夫が心理的に村に取り込まれていく展開にしたと述べています。「理想郷」のように逃げたくても全財産はたいて移住したので無理という展開でも良かったのではないでしょうかね。
▼観客2人(公開6日目の午前)1時間39分。
「怪獣ヤロウ!」
岐阜県関市のご当地映画。市役所の観光課に勤め、何をやってもうまくいかない山田一郎(ぐんぴぃ)は、市長(清水ミチコ)から市を盛り上げるためのご当地映画の製作を命じられる。凡庸なご当地映画の製作に疑問を持った山田は、子供の頃からの夢だった怪獣映画の製作を思いつく。Wikipediaによれば、ご当地映画は「ある特定の地域を主要な舞台にしてドラマが展開していく映画作品を指す」。ただ、最近は地元の自治体が中心となって地域のPRのために作る場合が多いようです。ご当地映画=自己満足なだけでつまらん、という場合が多く、つまらない映画を作ってもPRにはならないんじゃないかと思います。
この映画は頑張ってる方で、手塚とおる、菅井友香、三戸なつめ、麿赤兒らキャストもそろえてますが、特に褒めるところはなく、フツーの出来でした。監督・脚本は岐阜県出身で、「実りゆく」(2020年)の八木順一朗。
▼観客6人(公開初日の午前)1時間20分。
「ナイト・オブ・アルカディアン」
ヒューマントラストシネマ渋谷で先月から特集している「未体験ゾーンの映画たち2025」で上映した作品をU-NEXTで配信しています。これはその1本。ニコラス・ケイジ主演で予告編に少し興味を引かれたので見ました(U-NEXTでは2月23日まで有料配信)。夜に現れる謎の生物が跋扈する世界で生きる父子のサバイバルを描くサスペンスホラー。謎の生物とはモンスターですが、これが何なのか劇中で詳しい説明はありません。「奴らは地球が汚染された後に出現した。今、地球は随分きれいになった」とケイジが言いますが、それならモンスター、いなくなってもいいんじゃない? で、このモンスター、夜になると、多数の群れとなって襲ってきます。モンスターの造型は悪くないと思いますが、口を高速にパクパク、ガクガクするのが安っぽいです。
ニコラス・ケイジは序盤で重傷を負って、寝たきりとなり、クライマックスに回復してモンスターを撃退します。若い俳優たちばかりだと、映画に重みがないので重し代わりに登場させたような扱いですね。モンスターと物語の背景をもう少し練った方が良かったと思います。監督は「ダーティー・コップ」(2016年)でもケイジと組んだベンジャミン・ブリューワー。
IMDb5.5、メタスコア57点、ロッテントマト78%。1時間32分。
2025/01/19(日)「室町無頼」ほか(1月第3週のレビュー)
「室町無頼」
垣根涼介の原作を入江悠監督が映画化したアクション時代劇。室町時代中期を舞台に徳政一揆(土一揆)を主導した蓮田兵衛(大泉洋)の戦いを描いています。展開に違和感があったので原作の新潮文庫版の上巻を途中まで読みました。原作の主人公は蓮田兵衛ではなく、才蔵(長尾謙杜)です。映画で才蔵の修行シーンが延々と描かれたり、クライマックス、二条城前でのアクションシーン(ここが一番良いです)で活躍するのが才蔵なのはそのためでしょう。監督・脚本は「ビジランテ」(2017年)、「あんのこと」(2024年)などの入江悠。アクション場面や当時の飢饉と疫病に苦しむ庶民の表現など画面づくりは良いのですが、脚本に難があります。一揆側に蓮田、才蔵以外にキャラの立った人物がいず、物語としての膨らみに欠けますし、エモーションも盛り上がっていきません。1人ではなく、複数で脚本化した方が良かったと思います。
かつての仲間でありながら蓮田兵衛と対立していく骨皮道賢役の堤真一と、高級娼婦・芳王子(ほおうじ)役の松本若菜は良いです。才蔵に修行させる唐崎の老人役の柄本明はずーっと叫んだセリフ回しがうるさく感じられ、こういうセリフ回しだと、武術の達人には見えませんね。
音楽がマカロニウエスタン風なのは入江監督の趣味だとか。マカロニウエスタン以外に黒澤明「用心棒」も意識したそうですが、映画史に残る傑作「用心棒」の域にはとても達していません。こういうジャンルは好きなだけに残念です。
▼観客10人ぐらい(公開初日の午前)2時間15分。
「満ち足りた家族」

「八月のクリスマス」(1998年)、「四月の雪」(2005年)のホ・ジノ監督だけに緊密な作りですが、物語の先行きはこうなるだろうと予想はつきます。そこを少し裏切り、ショッキングな結末となるのは原作通りなのか映画の工夫なのか分かりません(原作絶版です。amazonでテンバイヤーが売ってます)。
弁護士の兄を演じるのはソル・ギョング、医師の弟はチャン・ドンゴン。それぞれの妻をクローディア・キムとキム・ヒエが演じています。子供たちの犯行の様子は防犯カメラに映っていて、映像が不鮮明だったために親だけに分かったという設定。自首させるか、隠し通すか親たちは悩むことになります。親に分かるなら友人知人近所のおばさんたちにも分かるんじゃないか、と思ってしまいます。
IMDb7.2、ロッテントマト100%(アメリカでは映画祭で上映のみ)。
▼観客3人(公開初日の午後)1時間49分。
「アット・ザ・ベンチ」
川沿いにあるベンチを舞台に4つの物語(5エピソード)で構成するオムニバス映画。映像監督・写真家の奥山由之による自主制作作品で、脚本を生方美久、蓮見翔、根本宗子、奥山由之が担当しています。もっとも面白いのは2話目の蓮見翔脚本で、岡山天音と岸井ゆきの、荒川良々の好演も相まっておかしくて真実味もある話になっています。相手の嫌な部分を握り寿司にたとえ、一つ一つは小さな事でも寿司桶が寿司でいっぱいになって別れを思い立ったという展開が実に納得できました。1話目と5話目の生方美久は普通の出来(長い方が真価を発揮するタイプ?)。3話目の根本宗子はいかにも舞台の人らしい作品。4話目の奥山由之は自分だけたくさん俳優出してずるいぞ、という感じでした。
他のキャストは広瀬すず、仲野太賀、今田美桜、森七菜、草なぎ剛、吉岡里帆、神木隆之介らで、自主制作としては破格の豪華さですね。
▼観客10人ぐらい(公開7日目の午後)1時間26分。
「おーい!どんちゃん」
売れない役者の若い男3人が一緒に暮らす家の前にある日、赤ちゃんが置いていかれた。元カノが置いたらしい。3人は赤ん坊を「どんちゃん」(「どーん」としているから)と名づけ、協力しながら慣れない子育てに奮闘する。「横道世之介」(2012年)「さかなのこ」(2022年)の沖田修一監督が自分の娘を使って撮影した自主制作映画。撮影は2014年から2017年にかけて行われたそうです。ドキュメンタリー風の作品と予想していましたが、物語の設定はあり、緩やかにストーリーが進行します。ですから、他人のホームビデオを見せられて「どうだかわいいだろう」と強制されるような部分はなく、沖田監督独特のほんわかムードが漂う作品になっています。
基本的に赤ちゃんはずーっと見ていても飽きないもの。映画もどんちゃんが出てくる部分は面白いんですが、3人の役者の売れないエピソードはどんちゃんパートより落ちる感じがあるのは否めません。要するに「子供と動物には勝てない」わけです。上映時間も2時間程度にまとめた方が良かったと思います。
売れない役者を演じるのは坂口辰平、大塚ヒロタ、遠藤隆太の3人。宇野祥平、黒田大輔、山中崇がゲスト的に出演しています。
映画終了後、どんちゃんから「もうすぐ11歳になる」とのメッセージが流れてびっくり。他人の子の成長は早いのです。公式サイトによると、映画は2022年から各地の映画祭などで上映が行われており、東京では2月21日から新宿武蔵野館で公開されます。
▼観客10人ぐらい(公開6日目の午後)2時間37分。
2025/01/12(日)「泳ぐひと」ほか(1月第2週のレビュー)
新作はウォレスとグルミットの活躍により前作で捕まった宝石泥棒のペンギンが、収容されている動物園の中から、ある方法で仕返しを図る、というストーリー。35年ぶりの続編というのが凄いですが、それほど邪悪なペンギンのキャラに魅力があったのでしょう。相変わらず評価も高く、IMDb7.7、メタスコア83点、ロッテントマト100%。アニー賞など多くの賞の候補になっています。
「チネチッタで会いましょう」
さっぱり面白くなくて、僕の見方が悪いのかと思いました(途中で少し寝ちゃったし)が、海外の評価を見ても、IMDb6.7、メタスコア47点、ロッテントマト54%と散々。日本では日経電子版が★4個、週刊新潮が83点を付けていたのが数少ない高評価でした。キネ旬では評者3人が★1個、2個、1個。まあ当然と思える評価の低さではありますね。映画の中で映画を撮影するシーンが進行し、映画に関する言及も多いですが、もはや評価できないウディ・アレンの諸作と比べても大きく見劣りがして、どこも感心するところのない出来に終わってます。
ナンニ・モレッティ監督が主人公の映画監督を演じていますが、自分で演じる必然性はないように思いました。けっこう自己顕示欲の強い人なんでしょうかね。
▼観客2人(公開13日目の午前)1時間36分。
「泳ぐひと」
「チネチッタで会いましょう」の中でナンニ・モレッティ演じる映画監督がジョン・チーヴァー原作「泳ぐ人」を撮りたいと言うシーンがあります。これ、1968年にバート・ランカスター主演で既に映画化されていて(邦題は「泳ぐひと」)、僕は高校時代に映画雑誌「ロードショー」の名画紹介連載でタイトルと大まかなストーリーを知りました。これまで見る機会がありませんでしたが、配信を探したらU-NEXTにあったので見ました。アメリカン・ニューシネマの傑作の1本とされ、キネ旬ベストテン6位にランクされています。聞きしに勝る傑作だと思いました。隣人たちのプール伝いに泳いで家へ帰ろうと決心した主人公の背景がだんだん分かってくる構成が素晴らしく、ラストは予想が付きますが、呆然とさせられます。主人公が過去の記憶を次第に思い出し、とんでもなく怖いラストを迎える筒井康隆の傑作短編「鍵」を思い出しました。夏の1日の話なのに、日差しが翳り、主人公が寒さに震えるようになるという描写が記憶を取り戻していく主人公の姿と重なって効果を上げています。
監督はフランク・ペリーですが、IMDbとWikipediaによると、一部のシーン(主人公ネッドと若いジュリーのシーンなど)をランカスターの友人のシドニー・ポラック監督が撮り直したそうです。プロデューサーのサム・シュピーゲルがペリーを解雇したためで、IMDbではポラックとの共同監督となっていますが、映画にポラックのクレジットはありません。
原作を収録した短編集「巨大なラジオ/泳ぐひと」(新潮社)が村上春樹訳で2018年に出ていたのでamazonで購入しました。上下二段組み16ページの短さ。映画はこれを基に多くのエピソードとセリフを追加しています。素晴らしいのはそれがすべて原作のエッセンスを損なっていないこと。どころか、効果的に補強しています。脚色のエリナー(エレノア)・ペリーはフランク・ペリー監督の奥さんで、「去年の夏」(1969年、フランク・ペリー監督)、「パリは霧にぬれて」(1971年、ルネ・クレマン監督)などの脚本を担当しています。
U-NEXTで配信しているソフトは画質が大変良いです。修復した上で、2015年に発売されたブルーレイディスクのものなのでしょう(ブルーレイは日本未発売。DVDはあります)。
IMDb7.6、ロッテントマト100%。1時間35分。
「太陽と桃の歌」
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。監督のカルラ・シモンは自身の体験を基にした監督デビュー作「悲しみに、こんにちは」(2017年)で評価を集めた人です。今回はスペインのカタルーニャ地方が舞台で、ソーラーパネルを設置するため土地を明け渡すよう地主から求められた桃生産農家を描いています。原題の「アルカラス」はカタルーニャの奥地にある村の名前。シモン監督の父親の兄弟はカタルーニャ地方で桃を生産しており、それがモデルになったそうです。農業か太陽パネルかという対立軸で見ていくと、テーマが散漫になったきらいがありますが、監督は揺れる農家を描きたかったのでしょう。
出演者はカタルーニャ地方でオーディションで選出した演技素人の人たち、言葉はすべてカタルーニャ語だそうです(僕は聴いても分かりません)。気になったのは幼女の裸の胸にボカシがかかることで、配給会社が気を回して行ったんですかね? かえって不自然に感じました。
IMDb7.0、メタスコア85点、ロッテントマト93%。
▼観客3人(公開2日目の午後)2時間1分。
「ゴンドラ」
ジョージアの小さな村にあるロープウェーを舞台に描く心優しいドラマ。父親が亡くなって村に帰ってきたイヴァ(マチルド・イルマン)はロープウェーのゴンドラの乗務員として働き始める。もう一つのゴンドラの乗務員はニノ(ニニ・ソセリア)。すれ違うゴンドラで2人が交わす奇想天外なやりとりは、まるでゴンドラ合戦。その楽しさは、やがて地上の住民も巻き込んでいく。ほとんどセリフのない映画ですが、ファイト・ヘルマー監督がこういう映画を撮るのは4作目だそうです。パンフレットによると、実際にはゴンドラは1台しかなく、それを映画のマジックで2台に見せているとのこと。確かにあんな田舎で2台のゴンドラは必要ないのでしょうけど、驚きました。女優2人が良いです。
IMDb6.7(アメリカでは未公開)
▼観客6人(公開7日目の午後)1時間25分。
「グランメゾン・パリ」
ドラマ「グランメゾン・東京」(2019年、全11話)と昨年12月29日に放送したスペシャルドラマを見た上で見ました。フランス料理の一流シェフ尾花夏樹(木村拓哉)はパリで新店舗「グランメゾン・パリ」を立ち上げ、右腕の早見倫子(鈴木京香)とともにミシュラン三つ星の獲得を目指す。巨匠たちがしのぎを削る本場フランスでの三つ星は尾花の悲願。だが、満足いく食材を手に入れることにすら高い壁があった。
黒岩勉脚本、塚原あゆ子監督はテレビシリーズと同じコンビ。これまでのドラマを見ていた方が楽しめますが、見ていなくても話は分かります。手堅くまとめた作品と思います。
▼観客多数(公開初日の午前)1時間58分。
「ビーキーパー」
サンデー毎日の映画評に「冒頭のフィッシング詐欺シーンがリアル。身につまされるほど恐ろしい」とありましたが、パソコンのエラー表示に驚いて電話してきた人から金を巻き上げるという極めてよくある手口ですね。その詐欺に引っかかって200万ドルを失った隣人の老婦人が自殺。唯一、優しくしてくれた人だったため、ビーキーパー(養蜂家)の主人公アダム・クレイ(ジェイソン・ステイサム)が怒り、詐欺組織に復讐を図る、というアクション。とにかくステイサムが圧倒的に強く、次々に組織の男たちを秒殺していきます。たった1人の老婦人の敵討ちとしては殺しすぎではと思えますが、詐欺の被害者はかなりいるはずで、組織を叩き潰す名目はありますね(やり方は違法ですが)。ビーキーパーとは米国の極秘プログラムで、主人公は既に引退していたんですが、現役のビーキーパーより素早く動き、とても強いです。アクションは申し分ないので、もう少しリアル方向に話を振ってくれると良かったかなと思います。
監督は「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)「フューリー」(2014年)などのデヴィッド・エアー。
IMDb6.3、メタスコア53点、ロッテントマト71%。
▼観客20人ぐらい(公開7日目の午前)1時間45分。