2025/08/24(日)「私たちが光と想うすべて」ほか(8月第4週のレビュー)

 「ファイナル・デスティネーション」シリーズ最新作の「ファイナル・デスティネーション ブラッドライン」は日本では劇場公開されず、10月22日からDVD・ブルーレイ・配信開始となりました。タイトルは「ファイナル・デッドブラッド」。レーティングがR18+なのでヒットが見込めないという判断でしょうかね。

「ウルフズ」や「M3GAN ミーガン 2.0」など最近、こういうケースが続いてます。「ミーガン2.0」はまだ配信予定も発表されてません。IMDb6.1、メタスコア54点、ロッテントマト59%で、ここまで低評価だと劇場未公開もしょうがないかなと思います。「ファイナル…」はIMDb6.8、メタスコア73点、ロッテントマト92%と、まずまずの評価です。

「私たちが光と想うすべて」

「私たちが光と想うすべて」パンフレット
「私たちが光と想うすべて」パンフレット
 2024年のカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したインド映画(フランス=インド=オランダ=ルクセンブルク合作)。個人的には特に優れた部分があるとは思えず、テーマの描き方も浅く感じ、どこが評価されたのか分かりにくい映画でした。玄人受けしそうなのはラスト近くにファンタスティックな場面を用意していることですが、煙に巻かれたような気分になりました。この年のパルムドールは「ANORA アノーラ」(2024年、ショーン・ベイカー監督)で、女性の生き方を描く点で本作と共通しています。その意味で一環した審査結果ではあり、審査委員長を務めたグレタ・ガーウィグ監督の好みの反映でもあるのでしょう。

 インドのムンバイが舞台。看護師のプラバ(カニ・クスルティ)と年下の同僚アヌ(ディヴィヤ・プラバ)はルームメイトとして一緒に暮らしている。プラバは職場と自宅を往復するだけの真面目な性格。何事も楽しみたい陽気なアヌとの間には少し距離がある。プラバは親が決めた相手と結婚したが、夫はドイツで仕事を見つけ、ずっと連絡がない。インドで多数派のヒンドゥー教徒であるアヌはイスラム教徒のシアーズ(リドゥ・ハールーン)と密かに付き合っているが、異教徒との交際を親が認めるわけがないことは分かっていた。病院の食堂で働くパルヴァディ(チャヤ・カダム)が高層ビル建設のためにアパートの立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることになる。プラバとアヌは失意のパルヴァディの励ましも兼ねて村まで一緒に送っていくことにする。

 インドに詳しくない自分に理解しにくいのは言語のこと。プラバが働く病院の医師マノージ(アジーズ・ネドゥマンガード)はムンバイの公用語であるヒンディー語をうまく話せない設定ですが、じゃあ、この医師が話しているのは何語なんだと思うわけです。プラバと会話できるのはいったい何語で話しているからなのだろう?

 パンフレットによると、プラバたちが話しているのはマラヤーラム語です。プラバとアヌはインド南西部のケーララ州出身で、この州の公用語がマラーヤラム語であり、主要登場人物5人を演じる役者のうち、チャヤ・カダムを除く4人は実際にケーララ州出身とのこと。映画で交わされる会話の8割がマラーヤラム語であり、この映画はマラーヤラム語映画と言えるのだそうです。ちなみにケーララ州出身の看護師は優秀な人が多く、「マラーヤラリー・ナース」として一目置かれる存在なのだとか。

 ドキュメンタリー映画「何も知らない夜」(2021年)で注目を集めたパヤル・カパーリヤーの劇映画監督デビュー作。この映画もドキュメンタリーの手法を取り入れることを意識して撮ったそうです。冒頭の場面といい、確かにそんな感じです。カパーリヤー監督はムンバイ出身で、マラーヤラム語は話せないそうです。
IMDb7.3、メタスコア93点、ロッテントマト100%。
▼観客11人(公開2日目の午後)1時間58分。

「バレリーナ The World of John Wick」

b「バレリーナ The World of John Wick」パンフレット
「バレリーナ」パンフレット
 「ジョン・ウィック」シリーズのスピンオフでアナ・デ・アルマス主演。シリーズの監督であるチャド・スタエルスキは製作に回り、「アンダーワールド」シリーズや「ダイ・ハード4.0」のレン・ワイズマンが監督していますが、スタエルスキが追加撮影した部分もあるそうです。アクションのバリエーションが凄い映画で、特に手榴弾を使ったアクションと火炎放射器同士の戦いに見応えがあって感心しました。アクション映画ファンは必見です。

 幼い頃に父親を殺されたイヴ(アナ・デ・アルマス)がロシア系犯罪組織“ルスカ・ロマ”で殺しの腕を磨き、父の復讐に立ち上がるという物語。なぜタイトルが「バレリーナ」というと、ルスカ・ロマでは殺しの技術と同時にバレエも教えているからです。

 アルマスはスタエルスキが共同設立したアクションデザイン会社87elevenでトレーニングを積み、ハードなアクションを見せています。危険なアクション場面ではダブルがいたそうですが、これは吹き替えではないだろうと思えるワンカットのアクションもあって、シャーリーズ・セロンを受け継ぐ美形のアクション女優という感じでした。アルマスは「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021年、キャリー・ジョージ・フクナガ監督)で華麗なアクションをこなしていました。あれがこの役に繋がったのでしょうね。もっとアルマスのアクションを見たいです。

 「バレリーナ」というタイトルを聞いてNetflixのアクション映画「バレリーナ」(2023年、イ・チュンヒョン監督)を思い浮かべましたが、内容は全く関係ありませんでした。
▼観客30人ぐらい(公開初日の午前)2時間5分。

「桐島です」

「桐島です」パンフレット
「桐島です」パンフレット
 足立正生監督の「逃走」と同じく「東アジア反日武装戦線 “さそり”部隊」のメンバー、桐島聡を描いた作品。49年間逃走を続けた桐島の逃走中の詳細は分かっていませんので、「爆弾犯の娘」である脚本の梶原阿貴は自分の父親のエピソードを取り入れて物語を作っています。高橋伴明監督の演出も的確で、映画としての結構は「逃走」より上だと思いました。何より主演の毎熊克哉が桐島とよく似ています。

 クリスマスツリー爆弾事件の犯人を父親に持つ梶原阿貴はそれを見込まれて高橋監督から脚本を依頼されたそうです。「5日で初稿あげてこい」という監督の要求は無茶ですが、既に桐島の記事をスクラップしていた梶原阿貴はそれに応えました。自伝的エッセイの「爆弾犯の娘」(ブックマン社)もそうなのですが、梶原阿貴の文章にはユーモアが滲み出ていて好ましいです。劇中、桐島が安倍首相の言動に怒ってコーヒーカップを投げつけて画面を割るテレビは梶原阿貴が私物を提供したそうです。

 ラスト、アラブ地方と思える場所にいる女性を高橋恵子が演じています。超法規的措置で海外に逃亡した「東アジア反日武装戦線」のメンバーのうち、国際手配され、まだ逃走中の女性は大道寺あや子(大道寺将司の妻)です。エンドクレジットを確認したら、高橋恵子の役名はAYAとなっていました。
▼観客8人(公開5日目の午後)1時間29分。

「ChaO」

「ChaO」パンフレット
「ChaO」パンフレット
 「海獣の子供」のスタジオ4℃がアンデルセンの童話「人魚姫」をモチーフに製作したアニメ。興行的に歴史的大爆死と言われているそうで、僕が見た時も観客1人でした。今年観客1人だった映画は「愛されなくても別に」「見える子ちゃん」に続いて3回目なので別に珍しくはありません。去年は「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間」の前編、「密輸1970」「おいしい給食 Road to イカメシ」「美と殺戮のすべて」の4本でした。平日の地方の映画館はそんなものです。

 内容的にはともかく興行的に失敗した原因は誰もが言うようにキャラクターデザインがかわいくないからでしょう。「人は見た目が9割」というベストセラーがありましたが、アニメ映画もキャラデザインがかなり重要なのです。映画を見たいかどうかはそれで決まる要素が大きいです。

 これに関連して、主人公のChaO(チャオ)が水の中では人魚、陸に上がると魚の形態なのも計算違いの気がします。「スプラッシュ」(1984年、ロン・ハワード監督)のダリル・ハンナは陸に上がると人間、水に入ると人魚の姿でした(これが普通)。ChaOは本当に愛し合ってる人の前では陸上でも人魚の姿になるという設定で、これはルッキズムの観点から言うと好ましくはないでしょう。

 舞台が上海なのもよく分かりません。中国での公開を考えたんでしょうか? ストーリー的にも同じ「人魚姫」モチーフの「リトル・マーメイド」(1989年、ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ監督)の素直な展開に負けてます。アニメの技術ではかなり頑張っているのに惜しいです。
▼観客1人(公開6日目の午前)1時間45分。

2025/08/17(日)「黒川の女たち」ほか(8月第3週のレビュー)

 スピンオフドラマ「エイリアン:アース」の配信がディズニープラスで始まりました。現在2話までですが、同サービスのスピンオフとしては久しぶりに続きを見たい作品になってます。

 「エイリアン」(1979年、リドリー・スコット監督)の2年前、2120年の地球が舞台。プロディジー社の天才創業者兼CEO若き天才CEOカヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)は“ネバーランド・リサーチ・アイランド”で不老不死に関する実験を行っていた。実験を重ねる中、12歳の少女ウェンディは自身の意識を成人女性形態のアンドロイドに移され、世界初の<ハイブリッド>として生み出される。ある日、プロディジーシティにウェイランド・ユタニ社の宇宙船「マギノット号」が墜落する。宇宙船の中に格納されていたモノを回収するべく派遣されたのは、ウェンディ(シドニー・チャンドラー)を中心とした人間の身体能力をはるかに凌駕する<ハイブリッド>たち。船内は荒れ果てた廃墟のようになっていた。この宇宙船、宇宙の深淵から5種の生命体を回収し、それらが逃げ出したらしい。

 というわけで、おなじみのエイリアン“ゼノモーフ”だけでなく、大小の異なるエイリアンが登場します。これに対抗するのが、ウェンディたちハイブリッド、という展開。主演のシドニー・チャンドラーは29歳ですが、ティーンを演じて違和感はありません。監督はノア・ホーリー。製作は「SHOGUN 将軍」を大成功させたFX。全8話の予定です。
IMDb8.1、ロッテントマト87%、フィルマークス4.0。

「黒川の女たち」

「黒川の女たち」パンフレット
「黒川の女たち」パンフレット
 敗戦後の満州で開拓団を守るためにソ連軍幹部への性接待をさせられた黒川開拓団の女性たちを描くドキュメンタリー。女性たちは帰国後、故郷で感謝されるどころか中傷を浴び、苦難の人生を送ってきました。このため戦後長く沈黙を貫きましたが、2013年以降、「なかったことにはできない」として声を上げるようになりました。映画は当時の状況を説明し、女性たちと開拓団の子孫が送ってきた戦後を描いています。

 黒川開拓団は岐阜県黒川村(現在の白川町)の農民で組織した開拓団。貧しい農民が多かったとされています。満蒙開拓は1931年の満州事変以降、日本が国策として推進し、中国の人たちから家と農地を安く買いたたいて開拓団に提供しました。黒川村からは600人以上が加わったそうです。

 映画の中で高校の先生が授業で話しますが、開拓団には中国への加害と被害の両方の側面があります。敗戦後に現地の人たちから迫害を受けたのは戦時中の恨みを買っていたからです。それ回避するため、黒川開拓団が考えたのは侵攻してきたソ連軍に守ってもらうこと。どちらから言い出したのかは分かりませんが、その引き換えに18歳以上の未婚女性15人が性接待をさせられることになりました。

 年老いた女性たちが語る言葉が重いです。「私たちがどれほど辛く悲しい思いをしたか、私らの犠牲で帰ってこれたということは覚えていて欲しい」「次に生まれるその時は平和の国に産まれたい。愛を育て慈しみ花咲く青春綴りたい」。松原文枝監督のインタビューによると、そうした女性たちは性接待の事実を世間に明らかにしたことで笑顔が出るなど大きな変化があったそうです。もちろん、自身の若い頃の性被害を告白することには相当な勇気が必要だっただろうと思います。

 2018年11月、性接待の事実を刻んだ「乙女の碑」の碑文が完成。その除幕式のあいさつで黒川開拓団遺族会会長の藤井宏之さんは女性たちへの謝罪の言葉を述べました。藤井さんの父親は開拓団に参加し、性接待の呼び出し係をしていたそうですが、当時生まれてもいなかった藤井さん自身には何の責任もありません。それでも碑文を書き、謝罪し、女性たちのために尽力する姿には頭が下がります。

 松原監督は「ハマのドン」(2023年)に続いて監督2作目。テレビ朝日の記者、報道ステーションディレクターなどを経て現在はビジネスプロデュース局の部長。
▼観客20人ぐらい(公開2日目の午後)1時間39分。

「この夏の星を見る」

「この夏の星を見る」パンフレット
「この夏の星を見る」パンフレット
 辻村深月の原作を残り数十ページぐらいまで読んだところで映画を見ました。映画は原作を端折ったところや駆け足の描写もありますが、原作のエッセンスをうまくすくい上げ、むしろ原作より良い出来だと思います。「私たちなら、できる」と言い切る溌剌とした主人公を演じる桜田ひよりをはじめ黒川想矢、中野有紗、早瀬憩、星乃あんな、水沢林太郎ら若い俳優たちが実に良いです。コロナ禍の青春の輝きを情感豊かに活写した傑作。

 コロナ禍で部活動が制限された2020年、茨城の高校2年生・溪本亜紗(桜田ひより)はオンラインでのスターキャッチ・コンテストを思いつく。賛同したのは東京の中学校と高校、長崎県五島の高校で計4校の生徒たちが手作りの望遠鏡で競うことになる。同時に映画はコロナ禍のさまざまなドラマを取り入れ、悩み苦しむ生徒たちがコンテストに向かうことで希望を見いだしていく姿を描いています。

 クライマックス、12月のISS(国際宇宙ステーション)観測会で、厚い雲に覆われていた茨城の夜空が奇跡のように晴れてくる場面は原作にはありません。いや、前日譚で本編の1年前を描く短編「薄明の流れ星」の中にあるんですが、それをうまく取り入れてドラマティックな効果を上げています。森野マッシュの脚本はそうしたアレンジにうまさを感じました。

 森野マッシュと同様、山元環監督もこれが商業映画デビューですが、正攻法の演出に加えて画面構成のうまさが光っていると思いました。原作ではピンとこなかったオンライン・スターキャッチ・コンテストのやり方は映画ではよく分かりました。夜空へ天体望遠鏡を向ける素早い動き自体が形になってます。

 映画を見た辻村深月は「私が小説で書いた風景や迷いながら選び取った場面が言語化を超えた映像になっていて、魔法を目撃したような気持ち」と高く評価しています。
▼観客多数(公開初日の午後)2時間6分。

「顔を捨てた男」

「顔を捨てた男」パンフレット
「顔を捨てた男」パンフレット
 ルッキズムの観点から「サブスタンス」(コラリー・ファルジャ監督)に言及するレビューが多いようですが、自分と似た外見の他者が現れるというプロットから僕はエドガー・アラン・ポーの「ウィリアム・ウィルソン」(「世にも怪奇な物語」でアラン・ドロンが演じました)を思い浮かべてました。

 この映画に登場するのは「ウィリアム・ウィルソン」のようなドッペルゲンガーではなく、主人公エドワード(セバスチャン・スタン)と同じ神経線維腫で顔が「エレファントマン」のように変形したオズワルド(アダム・ピアソン)。性格はうつむきがちなエドワードとは正反対の明るさです。実験的な治療で新しい顔を得たエドワードは新しい人生に踏み出し、恋人と仕事を得ますが、そこにオズワルドが現れてエドワードから恋人も仕事も奪っていくという展開。オズワルドには悪意があるわけではないのがエドワードにとって痛いところでしょう。アダム・ピアソンは実際の神経線維腫の患者だそうです。

 映画は前半が特に面白いんですが、結末に向かって意外性があまりないのが少し残念。恋人役を演じるのは「わたしは最悪。」のレナーテ・レインスヴェ。監督のアーロン・シンバーグは長編3作目ですが、日本公開は初めて。口唇口蓋裂の治療を受けた経験があるそうです。
IMDb6.9、メタスコア78点、ロッテントマト93%。
▼観客6人(公開7日目の午後)1時間52分。

「脱走」

「脱走」パンフレット
「脱走」パンフレット
 北朝鮮の兵士が韓国への脱出を目指すサスペンス。主人公が南へ向かって走る前に紆余曲折のピンチがあるんですが、いったん始めたら地雷原も難なく走りきり、スムーズな脱北が出来てしまいます。十分な下調べがあったとはいえ、簡単すぎる気がしました。

 非武装地帯を警備する主人公ギュナム軍曹にイ・ジェフン、幼なじみの保衛部少佐ヒョンサンをク・ギョファンが演じています。監督は「サムジンカンパニー1995」のイ・ジョンピル。
IMDb6.4、ロッテントマト71%(アメリカでは映画祭での上映のみ)
▼観客9人(公開6日目の午後)1時間34分。

2025/08/10(日)「カーテンコールの灯」ほか(8月第2週のレビュー)

 Googleで「長崎原爆を描いた映画」を検索すると、AIの回答の中に「黒い雨 (1989年):井伏鱒二の小説を原作に、原爆投下後の長崎を舞台に、原爆症に苦しむ人々の姿を描いた作品」と出てきました(今は修正されてます)。もちろん、「黒い雨」が描いたのは広島原爆の方です。

 Googleは「AI の回答には間違いが含まれている場合があります」と注意書きを付けていますが、いったいどこを捜したら、こんな回答になるんですかね。間違った人のブログでも参照してたんでしょうか?

「カーテンコールの灯」

「カーテンコールの灯」パンフレット
「カーテンコールの灯」パンフレット
 原題のGhostlightは「劇場が閉まっている時、舞台上に灯されたままになっているライト」のこと。主に安全を保つためのものですが、劇場に住みつく亡霊を遠ざける意味もあるそうです。そのタイトル通り、これはある悲劇的な出来事から立ち直れず、崩壊しそうになっている家族が演劇を通して再生する姿を描いています。

 建設作業員のダン(キース・カプフェラー)は妻シャロン(タラ・マレン)と思春期の娘デイジー(キャサリン・マレン・カプフェラー)とのすれ違いの日々を送っていた。ある日、見知らぬ女性に声をかけられたダンは小さなアマチュア劇団の「ロミオとジュリエット」に参加することに。最初は乗り気でなかったが、個性豊かな団員と過ごすうちに居場所を見出してゆく。ダンはロミオ役に抜擢されるが、劇の内容と自身のつらい経験が重なり、次第に演じることができなくなってしまう。そして家族や仲間の想いが詰まった舞台の幕が上がる。

 主人公が出演する「ロミオとジュリエット」の悲劇は主人公が置かれた状況と近すぎると感じました。もちろん、過去のつらい体験と近い内容を演じることで立ち直ることもあるのでしょうが、それよりも役を演じること自体と、新たな仲間とともに公演を成功させること(何かを成し遂げること)が再起に大きな役割を果たすのではないかと思います。

 監督は「セイント・フランシス」(2019年)のアレックス・トンプソンと、脚本も担当しているケリー・オサリヴァンの共同。小品ですが、ユーモアを絡めた作劇は好印象で温かみがあり、スッカスカの大作などよりよほど心に残る作品になっています。主人公の家族を演じた3人は実際の家族だそうです。

 邦題は意味が分かるようで分からず、決して良くありません。普通に「ゴーストライト」とすると、ホラー映画と間違われそうですし、「劇場の灯」もピンとこないので考えた末にこう付けたのでしょうが、もう少し良いタイトルはありませんかね。
IMDb7.6、メタスコア82点、ロッテントマト99%。
▼観客3人(公開初日の午後)1時間55分。

「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」

「アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓」パンフレット
パンフレットの表紙
 タイトルの「アメリカッチ」はアメリカ人の意味。これも「カーテンコールの灯」同様、しみじみと良かったです。

 オスマン帝国(現在のトルコ)によるアルメニア人虐殺・迫害から逃れるために、幼い頃アメリカに渡ったチャーリー(マイケル・グールジャン)は1948年、祖国アルメニアに戻る。ソビエト連邦の統治下であっても、理想の故郷と思えたからだ。だが、食料を求める長蛇の列、劣悪な生活環境、そしてソ連による統治の重圧に直面する。ある日、チャーリーは不当に逮捕され、収監されてしまう。悲嘆に暮れながらも、牢獄の小窓から近くのアパートの部屋が見えることに気づき、そこに暮らす夫婦の“幸せな食卓”を観察することが彼の日課となる。

 ヒッチコックの「裏窓」(1954年)を思わせるシチュエーションですが、サスペンスではなく、ユーモアも絡めたヒューマンなドラマです。監督・主演を務めたマイケル・グールジャンはサンフランシスコ生まれのアルメニア系アメリカ人。

 アカデミー国際長編映画賞のショートリストに入ったそうですが、ノミネートには至りませんでした。
IMDb7.3、メタスコア62点、ロッテントマト88%。
▼観客5人(公開7日目の午前)2時間1分。

「長崎 閃光の影で」

「長崎 閃光の影で」パンフレット
「長崎 閃光の影で」パンフレット
 1945年の長崎で原爆被爆者の救護に当たった看護学生の少女たちを描いた作品。「閃光の影で:原爆被爆者援護赤十字看護婦の手記」(日本赤十字社長崎県支部)を原案に長崎出身で被爆三世の松本准平が脚本(保木本佳子と共同)と監督を務めました。

 長崎原爆をテーマにした作品は黒木和雄監督の傑作「TOMORROW 明日」(1988年、キネ旬ベストテン2位)がありますが、広島原爆の映画に比べて数は意外に少なく、投下後の惨状を劇映画で本格的に描いた作品はほかに思いつきません。プロデューサーの鍋島壽夫は「TOMORROW 明日」をプロデュースした人。「TOMORROW 明日」で原爆投下前の長崎の人々を描いたので、今度は投下後を描く作品を作りたかったのでしょう。

 井上光晴の原作(「明日 一九四五年八月八日・長崎」)があった「TOMORROW…」に対して、これは手記の脚本化。ドラマに弱い部分があるのは端的に脚本の詰めが足りなかったためと思われます。朝鮮人を差別し、治療を拒否する場面を描くなど意欲的な部分もありますが、物語にエモーションをかき立てるような求心力が今一つ足りないと思えました。

 映画初主演の菊池日菜子をはじめ出演者は頑張ってます。主題歌は福山雅治作詞作曲の「クスノキ」(2014年発表)を使用していて、これはぴったりの選曲だと思いました。
▼観客9人(公開5日目の午後)1時間49分。

「ジュラシック・ワールド 復活の大地」

「ジュラシック・ワールド 復活の大地」パンフレット
パンフレットの表紙
 登場人物を一新したシリーズ第7作。心臓病の治療薬に恐竜のDNAが活用できることが分かり、陸・海・空に生息する3大恐竜のDNAサンプルを採取しようとするストーリー。酷評が多いですが、僕は退屈せずに見ました。序盤の海洋恐竜モササウルスとの戦いは「ジョーズ」(1975年)を思わせ、相手が巨大なだけにずっとリアルで迫力がありました。

 ミッションに参加するのは製薬会社のマーティン・クレブス(ルパート・フレンド)、特殊工作員ゾーラ・ベネット(スカーレット・ヨハンソン)、彼女が信頼するダンカン・キンケイド(マハーシャラ・アリ)、古生物学者のヘンリー・ルーミス博士(ジョナサン・ベイリー)ら。これにモササウルスに襲われて転覆したヨットで漂流していたルーベン・デルガド(マヌエル・ガルシア=ルルフォ)の娘2人と娘の恋人の計4人が加わります。ゾーラたちは金儲けのために恐竜の島に乗り込むわけで、共感を得にくいのが難(後で改心します)。そんな危険な場所に行って、当然のように危険な目に遭うのは自業自得で、ドラマもキャラクターの深みも足りません。

 それでも、おなじみのティラノザウルスをはじめ、巨大翼竜のケツァルコアトルス、竜脚類ティタノサウルスなどさまざまな恐竜が登場し、存分に暴れ回ってくれます。そういうものを好きな人は楽しめるでしょう。誰かが書いてましたが、アトラクションのような映画であり、4DXやMX4Dの体感型上映方式にぴったりではないかと思います。監督は「GODZILLA ゴジラ」(2014年)、「ザ・クリエイター 創造者」(2023年)のギャレス・エドワーズ。
IMDb6.1、メタスコア50点、ロッテントマト51%。
▼観客15人ぐらい(公開初日の午前)2時間1分。

「アンティル・ドーン」

 人気ゲームの実写化で、人里離れた山荘で男女5人が殺されて生き返るループを繰り返すホラー。これも酷評だらけですが、ラストのループの貧弱な説明を除けば、まずまずと思いました。

 ループを抜けるには夜明けまで生き延びる必要があります。しかも単なるループではなく、繰り返すうちにどうやら怪物化していくことが分かってきます。ループできるのは13回目までらしく、それを超えると怪物になって夜に取り込まれてしまう、というわけ。

 敵も殺され方もバリエーションがあり、残虐描写が多いのでR18+指定となってますが、それほど大したことはありませんでした。監督は「アナベル 死霊人形の誕生」(2017年)、「シャザム!」(2019年)のデビッド・F・サンドバーグ。
IMDb5.8、メタスコア47点、ロッテントマト52%。
▼観客5人(公開6日目の午後)1時間43分。

2025/08/04(月)「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション」(8月第1週のレビュー)

 ニューズウィーク日本版のデーナ・スティーブンズは毎回感心するほど詳しく的確な映画評を書いていますが、今週担当しているのはビリー・メリッサという人。「ジュラシック・ワールド 復活の大地」に関して幼稚・単純・能天気な文章を書き連ねていて、頭が痛くなります。

 この映画は一般映画ファンの投票であるIMDbでさえ6.2という低評価。メタスコア50点、ロッテントマト51%とプロからは当然酷評されてます。それなのに歯の浮くような褒め言葉を並べてるのは映画会社から金もらってるんじゃないかと疑いたくなります。ダメなレビュアーはどこにでもいるわけですね。

「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション」

「劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション」パンフレット
パンフレットの表紙
 テレビドラマの劇場版(2023年)の第2弾。鹿児島と沖縄の離島地域に対応するため試験運用されている南海MERのメンバーが諏訪之瀬島の火山噴火で危機に陥った住民を助けるために奔走する姿を描いています。火山噴火と迫る溶岩のCGは水準を十分にクリアし、前半はすこぶる緊迫感のある展開。住民を全員救助するまでは文句の付けようがないんですが、その後の医療ドラマらしい展開が付け足しのように思えてしまうのが難点です。それでも全体としては前作より良い出来だと思います。

 TOKYO MERチーフドクターの喜多見幸太(鈴木亮平)と看護師の蔵前夏梅(菜々緒)は指導スタッフとして南海MERに赴任したが、この半年間、出動は一度もなく、政府は廃止を検討していた。ある日、鹿児島県の諏訪之瀬島で大規模な噴火が発生。溶岩が村に流れ、巨大な噴石が道路や建物を破壊し始めた。ヘリコプターによる上空からの救助は、噴煙のため不可能。海上自衛隊や海上保安庁の到着には、なお時間がかかる絶望的な状況のなか、近くの海上にいた南海MERは島に取り残された79人全員の救助を決断する。

 噴火の予兆はあったはずなので既に全島避難してるんじゃないのかとか、まだ避難中なのに、船に乗ったらヘルメットを脱ぐなどの気になる描写は細部にありますが、まあ許容範囲でしょう。お約束とはいえ、事態が収拾した後で、「死者……、ゼロです」と報告するシーンはもう不要ではないかと思いました。見てりゃ分かりますぜ。

 南海MERのメンバーはほかに江口洋介、高杉真宙、生見愛瑠、宮澤エマ。監督は松木彩、脚本は黒岩勉でいずれもテレビドラマから劇場版前作まで手がけています。このパターンの話なら、他の地区を舞台にした第3作もできそうです。というか、大ヒットしているようなので必ず作るでしょう。
▼観客多数(公開初日の午前)1時間55分。

「親友かよ」

「親友かよ」パンフレット。表紙と裏表紙がつながった絵になってます
「親友かよ」パンフレット
 「バッド・ジーニアス危険な天才たち」(2017年)のバズ・プーンピリヤ監督がプロデュースしたタイの青春映画。話は悪くないんですが、描写も展開もまどろっこしく感じました。もっと簡潔な描き方が望まれます。

 高校3年生のペー(アンソニー・ブイサレート)は転校先で隣の席になったジョー(ピシットポン・エークポンピシット)と知り合うが、ジョーは不慮の事故で亡くなってしまう。ペーはジョーの遺品の中に彼が書いたエッセイを見つけ、それがコンテストで受賞していたことを知り、これを使って短編映画を撮ることを思いつく。コンテストに入賞すると学科試験を免除され、大学の映画学科に入学できるのだ。そこにジョーの本当の親友・ボーケー(ティティヤー・ジラポーンシン)が現れ、学校全体を巻き込んで映画撮影が始まる。

 終盤の展開には伏線がなく、ご都合主義に思えました。これが第1作のアッター・ヘムワディー監督はCMやMV製作で活躍している人だそうです。
▼観客3人(公開5日目の午後)2時間10分。

「フォーチュンクッキー」

「フォーチュンクッキー」パンフレット
「フォーチュンクッキー」パンフレット
 白黒スタンダードの画面でじわっとくる笑いを交えて描くラブストーリー。初期のジム・ジャームッシュを思わせるタッチだと思ったら、そういう感想を持つ人は多いようです。

 カリフォルニア州フリーモントにあるフォーチュンクッキー工場で働くドニヤ(アナイタ・ワリ・ザダは、アパートと工場を往復する単調な毎日。母国アフガニスタンの米軍基地で通訳として働いていた彼女は基地での経験から、不眠症に悩まされている。ある日、クッキーのメッセージを書く仕事を任されたドニヤは、新たな出会いを求めて、その中の一つに自分の電話番号を書いたものを紛れ込ませる。間もなく1人の男性から、会いたいとメッセージが届く。

 監督のババク・ジャラリはイラン出身。主人公を演じるアナイタ・ワリ・ザダは実際にアフガニスタン出身で、テレビの司会やジャーナリストとして活躍していましたが、タリバンが復権した2021年8月にアメリカに逃れてきたそうです。
IMDb6.9、メタスコア72点、ロッテントマト98%。
▼観客8人(公開初日の午後)1時間31分。

「事故物件ゾク 恐い間取り」

 「事故物件 恐い間取り」(2020年)の続編ではなく、登場人物を一新した第2弾。といっても前作は事故物件住みます芸人(亀梨和也)、今回は事故物件住みますタレント(渡辺翔太)が主人公で趣向は同じです。4軒の事故物件に住みますが、ただ幽霊が出るだけで、話に何も発展性がなく、このパターンで傑作を作るのは難しいと思えました。

 ホラー映画のベンチマークになるような傑作「ドールハウス」(矢口史靖)の後ではどんなホラーも分が悪いです。共演は畑芽育、吉田鋼太郎、滝藤賢一ら。監督は「リング」シリーズ、「スマホを落としただけなのに」シリーズなどの中田秀夫。
▼観客30人ぐらい(公開7日目の午後)1時間53分。

2025/07/27(日)「木の上の軍隊」ほか(7月第4週のレビュー)

 「夜明けまでバス停で」「『桐島です』」の脚本家・梶原阿貴の自伝的エッセイ「爆弾犯の娘」(ブックマン社、1980円)が抜群に面白かったです。クリスマスツリー爆弾事件の犯人で指名手配された父親との関係から始まり、芸能界に入り、女優として映画・テレビに出た後、脚本家になるまで。父親の影は薄いんですが、著者自身はもちろん、母親や祖母のキャラが立っていて、何より著者の視点の明るさが良いです。すぐにでも映画やドラマになりそうな内容ですが、映画では時間が足りなさそうなので、1クールのドラマでじっくり描いてほしいところです。

「木の上の軍隊」

「木の上の軍隊」パンフレット
「木の上の軍隊」パンフレット
 沖縄県の伊江島で終戦を知らずに2年間、ガジュマルの木の上を拠点に生きた2人の日本兵の実話を基にした作品。井上ひさし原案による同名舞台劇を映画化したもので、沖縄出身の平一紘(「ミラクルシティコザ」)が監督し、脚本も書いています。沖縄戦を描いた映画を沖縄出身者が監督するのは初めてとのこと。

 1945年、宮崎出身の少尉・山下一雄(堤真一)と沖縄出身の新兵・安慶名(あげな)セイジュン(山田裕貴)は米軍の激しい銃撃を受け、大きなガジュマルの木の上へ身を潜める。太い枝に葉が生い茂るガジュマルの木は隠れ場所として最適だったが、木の下では仲間の死体が増え続け、敵は迫ってくる。2人には連絡手段もなく、援軍が現れるまでこのまま耐えようとする。終戦を知らないまま、彼らは木の上で“孤独な戦争”を続けるが、やがて食料が尽きる。2人は米軍の残飯で生き延びていくことになる。

 伊江島は沖縄本島北部から北西9キロにある面積23平方キロの島。序盤、日本軍の命令で建設したばかりの飛行場を今度は壊すよう命令された住民たちが作業中に米軍の爆撃に倒れるシーンは広い絵も含めて大がかりに描かれます。殺されていく民間人の姿には心が痛みますし、沖縄戦の映画でよく描かれる、ガマ(自然洞窟)に入れてくれと兵士に頼む親子の場面も出てきます。本土防衛の捨て石にされた沖縄戦の悲劇は鉄の暴風雨と言われた米軍艦砲射撃の苛烈さとともに、住民を守らない日本兵が多かったことにあります。平監督はそうしたことをてきぱきと描いた後、難を逃れた2人の日本兵のサバイバルを描いていきます。

 横井庄一さん(終戦後28年)や小野田寛郎さん(同29年)ほどの長年月ではありませんが、島のジャングルにいたため終戦を知らなかったという状況は同じでしょう。ただ、日本国内でなぜ終戦に気づかなかったのかと思ったら、伊江島の住民約2100人は米軍に収容され、慶良間諸島に移送されていたそうです。住民が島に戻ってきたのは終戦後2年近くたってからで、そこで2人はようやく終戦を知ることになったというわけです。

 平監督は題材を正攻法に描いていて、堤真一と山田裕貴も頬がこけるほど体重を落としてリアルに演じています。悲惨なだけではないユーモアが滲むのはこの2人の好演によるところが大きいでしょう。終盤にセイジュンが見る夢(幻覚)のシーンも秀逸でした。惜しむらくは、米軍支配下の島の全体的な状況を含めてサバイバルの詳細な状況をもっと知りたいところではありました。

 パンフレットによると、山下少尉のモデルとなった山口静雄さんは小林市出身、セイジュンのモデルの佐次田秀順さんは沖縄県うるま市出身だそうです。主題歌「ニヌファブシ」(北極星)を伊江島出身のシンガーソングライターAnlyが歌ってます。
▼観客4人(公開初日の午後)2時間4分。

「年少日記」

「年少日記」パンフレット
「年少日記」パンフレット
 学校でのいじめと厳格な父親を描いた香港映画ですが、語り方に大きな仕掛けがあります。果たしてそれがテーマと合っているかとも思いますが、観客を楽しませようとする姿勢の表れなのは確かでしょう。始まって3分の2のあたりで明かされる真実に驚くこと請け合いです。監督はこれが第一作のニック・チェク。

 高校教師のチェン(ロー・ジャンイップ)が勤める学校で自殺をほのめかす遺書が見つかる。私はどうでもいい存在だ……幼少期の日記に綴られた言葉と同じだった。彼は遺書を書いた生徒を捜索するうちに、閉じていた日記をめくりながら自身の幼少期の辛い記憶をよみがえらせていく。弁護士で厳格な父(ロナルド・チェン)のもとで育った兄弟の記憶だ。勉強もピアノも何ひとつできない兄と優秀な弟。親の期待に応える弟とは違い、出来の悪い兄は家ではいつも叱られていた。しつけという体罰を受ける兄は家族から疎外感を感じていた。

 監督インタビューによると、物語は大学時代に監督が体験した出来事(仲間の死)を投影しているそうです。体験の直接的な描き方ではなく、子供への抑圧に転化した脚本は見事と言って良いと思いました。兄弟の描き方は立場が逆ではありますが、「エデンの東」(1955年、エリア・カザン監督)をなんとなく想起しました。
IMDb7.7、ロッテントマト100%(観客スコア。アメリカでは限定公開)
▼観客3人(公開5日目の午後)1時間35分。

「ファンタスティック4 ファースト・ステップ」

「ファンタスティック4 ファースト・ステップ」パンフレット
パンフレットの表紙
 2005年、2015年に続いてマーベルコミック「ファンタスティック4」の3度目の映画化(映画としては4本目)。これまでは20世紀フォックスが映画化してきましたが、今回は満を持してのマーベル(MCU)作品となっています。

 それもあってか、4人が宇宙放射線を浴びて超能力を得るシーンは省略。1960年代に考えられた未来のデザインはレトロフューチャーなもので悪くありませんが、敵のギャラクタス、シルバーサーファーの有り様は新味に乏しく感じました。

 スー・ストームの役は「ファンタスティック・フォー 超能力ユニット」(2005年、ティム・ストーリー監督)のジェシカ・アルバ(公開当時24歳)に比べると、今回のヴァネッサ・カービーは年齢が上過ぎるのではと思いましたが、これは母親になる展開を考慮してのキャスティングなのかもしれません。ファンタスティック4のリーダーであるリード・リチャーズを演じるペドロ・パスカルともどもスター性には欠けるのが少し残念。

 監督はディズニープラスの傑作ドラマ「ワンダヴィジョン」(2021年、全9話)のマット・シャクマン。考えてみると、「ワンダヴィジョン」もレトロなドラマを思わせる作りになってました。

 今後のMCU作品は来年夏に「スパイダーマン ブランド・ニュー・デイ」、同年末に「アベンジャーズ ドゥームズデイ」、その1年後に「アベンジャーズ シークレット・ウォーズ」が予定されています。
IMDb7.5、メタスコア64点、ロッテントマト88%。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)1時間55分。

「ラ・コシーナ 厨房」

「ラ・コシーナ 厨房」パンフレット
「ラ・コシーナ 厨房」パンフレット
 イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーが25歳の時に書いた戯曲「調理場」(1959年初演)の2度目の映画化。ニューヨークのレストランの調理場に舞台を変え、移民問題を絡めたドラマにしています。一部青っぽい場面はありましたが、モノクロ、スタンダードサイズの映画です。

 ニューヨークにある観光客向けの大型レストラン「ザ・グリル」の厨房は目の回るような忙しさ。店の売り上げ800ドル余りが消えていることが分かり、従業員に盗みの疑いがかけられる。さらに次々とトラブルが起こり、調理人のペドロ(ラウル・ブリオネス)と密かに愛し合うウエイトレスのジュリア(ルーニー・マーラ)らスタッフのストレスは最高潮に達する。

 移民の多い調理場はアメリカの縮図と言え、怒りが爆発するクライマックスは不安定な移民の立場を象徴しているのでしょう。それは分かるんですが、もう少しコンパクトな作りにした方が良かったかなと思いました。監督はメキシコ出身のアロンソ・ルイスパラシオス。
IMDb7.1、メタスコア75点、ロッテントマト71%。
▼観客3人(公開7日目の午後)2時間19分。