2015/07/25(土)「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」

 「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」のラストに登場した双子の姉弟(エリザベス・オルセン、アーロン・テイラー・ジョンソン)が出てきてアベンジャーズに敵対する。この姉弟(スカーレット・ウィッチとクイックシルバー)はトニー・スタークの会社が作ったミサイルで家族を殺され、スタークに恨みを持っている。高速移動と精神を操る能力を持つ2人が加わると、「X-メン」になんだか似てくるなあと思ったら、その通り、X-メンのメンバーなのだった。この映画ではヒドラによって改造された超能力者だが、X-メンではミュータント。今回の敵ウルトロンがロボットというのも「フューチャー&パスト」のセンチネルに似ている。ただ、どうもロボットが敵だと個人的には盛り上がらない。どうしてもドラマに乏しくなるのだ。

 もっとドラマが欲しいと思う。ブラックウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)とハルク(マーク・ラファロ)のロマンスはいいのだけれど、これを前面に押し出すわけにはいかない話なのがつらい。ハルクは今回も大暴れで、マーベルのヒーローの中では最強なんじゃないかと思えてくる。

2015/07/19(日)「ターミネーター 新起動/ジェニシス」

 カール・リース役のジェイ・コートニーに主役を張るだけの力量がない。サラ・コナー役のエミリア・クラークも魅力を発揮しているとは言いがたい。主演の2人に関して言えば、1984年の第1作、マイケル・ビーンとリンダ・ハミルトンに負けている。その上、発想は良かったものの、物語の展開が面白くない。筋を追うのが精いっぱいでエモーションにも欠ける。第1作どころか、2作目にも3作目にも4作目にも負けっ放しなのだ。つまりシリーズ最低の出来である。SF感覚に欠けた脚本(パトリック・ルシエ、レータ・カログリデス)と監督のアラン・テイラーの凡庸な手腕が原因なのだろう。シュワルツェネッガーを再起用してせっかく新起動したのに、このままシャットダウンする可能性が大きい。

 2029年、スカイネットの中枢を破壊したジョン・コナー率いる人類抵抗軍がその直前にターミネーターを1984年に送られたことを知り、サラを守るためカイルに後を追わせる。第1作の描写をなぞって、全裸のターミネーター(T-800)が84年のロサンゼルスに出現し、服を奪おうとしたところで、背後から「お前に着るものは必要ない」と声がして年齢を重ねたターミネーターが登場。新旧というか、老若のターミネーター同士の戦いとなる。面白かったのはここまでだった。いや、実を言えば、その前のシーン、スカイネット中枢の襲撃シーンが間延びしていて嫌な予感はしたのだった。

 カイルは転送装置の中で、ジョン・コナーが襲われるのを見る。どうやら過去に何かが起きて未来が書き換わったらしい。スカイネットが核兵器で30億人を抹殺したジャッジメント・デイは1997年のはずだったが、それが2017年に延びたようだ。サラ・コナーとカイルはスカイネットを阻止するため2017年に向かうことになる。

 時間テーマSFに多元宇宙の概念は付きものだが、処理を誤ると収拾が付かなくなる。第1作にも言えることだが、ターミネーターが84年のロスでサラ・コナー殺害に成功していたら、現在は瞬時に書き換わり、カイルが後を追う展開にはならない。第1作でこれが気にならなかったのはそういう細部に気づく前に描写がとことんうまかったからだ。傷だらけになりながら、ひたすらサラを守るカイル。必死の逃走を続ける2人がうらぶれたモーテルで体を合わせる場面でカイルは「会うずっと前から好きだった」と打ち明ける。ロボット軍団に殲滅させられそうな絶望的な未来社会で、古ぼけた写真に映ったサラの姿はカイルにとって唯一の希望だったのだ。それが今回はT-800から「早く合体しろ」と言われる始末。ロマンティシズムも何もあったものじゃない。

 予告編でイ・ビョンホン演じるT-1000は「T2」のロバート・パトリックと同様の雰囲気を見せて悪くなかったが、本編で出てくるのは84年の場面だけ。2017年に出てくるT-3000は型番は上がってもT-1000よりパワーアップしているとは思えなかった。

2015/07/12(日)NHK「老後危機」で気になったこと

 11日放送のNHKスペシャル「老後危機」の中で気になることがあった。毎月1万円を30年間積み立てて得る運用益は毎月3000円余り節約するのと同じという計算だ。ゲストのFPは運用利回りを2パーセントとして計算していた。エクセルのFV関数で計算してみると、30年後の受け取り額は492万7254円で運用益は132万7254円となる。運用益を360カ月で割ると、確かに1カ月当たり3687円節約すれば、運用しなくても同じことになる。

 これ、早とちりしやすいのは、それなら積み立てしなくても節約するだけでいいじゃないかと思ってしまうこと。あくまで毎月1万円の積み立てを利回りゼロパーセントで30年間積み上げた結果との比較であることに注意。今の普通預金はほぼゼロ金利(0.02%)なので、30年間積み立てても利子は1万791円にしかならない(0.025パーセントの定期預金でも1万3496円だ)。番組の結論は銀行預金での積み立てと節約を組み合わせれば、株式投資信託などリスクを取った運用はしなくても同じ、と受け取っても良いだろう。

 気になったのは利回り2パーセントが少し低すぎないかということだ。例えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は運用の目標利回りを3.2パーセント( 基本ポートフォリオの考え方)としている。この利回りで毎月1万円積み立てを計算すると、30年後の総額は603万1356円で、運用益は243万1356円となる。これを毎月の節約で達成しようとすると、6754円となる。ただし、株式の割合を高めた昨年度のGPIFの運用益は過去最高の15兆2922億円となり、利回りは12.27パーセントに及んだのだ。もちろん、これが毎年続くわけではないし、赤字の年もあるだろう。だから、こうした積み立ての期待利回りは5パーセント程度にするのが普通だ。

 利回り5パーセントで計算すると、30年後の総額は832万2586円、運用益は472万2586円となり、積み立て分の360万円を大きく超える。この収益を節約で達成しようとすると、毎月1万3118円の節約が必要になる。積み立てを2万円に増やせば、収益も2倍になり、総額は1664万5173円となる。これならば、ボーナス月の加算などによって、よく言われる老後の必要資金3000万円も達成できそうだ。利回りが高くなれば、節約では追いつかなくなる。

 運用利回り2パーセントの根拠が番組の中では示されず、おまけに「バブルで失敗したから投資はこりごり」なんていう意見まで出て、どうも節約の結論ありきだったような印象を受けた。NHKが投資を奨励するわけにはいかないのだろうが、運用の実際は正しく伝えないと、高齢者は銀行預金にため込んだお金を投資で社会に循環させようとはしないだろう。NHKには「じぶん年金」の作り方を教えるような投資教育番組も作ってほしいものだ。

2015/07/05(日)「アリスのままで」

 単語を忘れ、数分前の記憶が抜け、自宅のトイレの場所も分からなくなる。若年性アルツハイマーを描いたこの作品で主演のジュリアン・ムーアはアカデミー主演女優賞を受賞した。初期症状から重症化するまでを演じるムーアの演技は確かに賞に値する見事なものだし、アルツハイマーの進行過程もよく分かるのだが、物語自体には食い足りない思いが残った。アルツハイマーの進行過程だけでなく、プラスαのドラマがほしいと思えてくるのだ。ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」の後半部分だけを見ているような気分になってくるが、「アルジャーノン」の原作にあった人間性への深い考察やドラマティックな悲劇性がこの映画には足りない。本筋に絡めたサイドストーリーがあると、映画に膨らみが出たのではないかと思う。

 主人公のアリスは50歳。ニューヨークのコロンビア大学(リサ・ジェノヴァの原作ではハーバード大学)で言語学を教えている。講演中に「語彙」という単語が出てこないなど言葉を忘れることが多くなり、大学構内をランニング中に自分のいる場所が分からなくなる。不安を感じたアリスは病院で検査を受け、脳にアミロイドβが増えていることから、若年性アルツハイマーと診断される。アリスは「病気が癌なら良かったのに」と夫(アレック・ボールドウィン)に話す。記憶がなくなり、自分が自分でなくなっていくことを自覚するのはつらいことだ。大学を辞め、自宅療養するが、症状は徐々に悪化し、自分の娘を認識できなくなることも出てくる。

 怖いのは若年性アルツハイマーの遺伝子を持つ場合、100パーセント発症すると映画の中で医師が断言すること。アリスの3人の子どもの1人も遺伝子検査で陽性だった。それと学歴の高い人ほど進行が速いと言われること。医師の説明によれば、高い適応能力が補うので症状が表面化しにくいためらしい。つまり症状が表面化した時にはかなり悪化しているので進行が速く感じられるのだろう。

 監督はリチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランド。グラッツァーはALS(筋萎縮性側索硬化症)で、アカデミー賞授賞式後の今年3月に亡くなった。IMDbによると、監督作品はこの映画のほかに、ゲイを描いた「ハードコア・デイズ」(2001年)など4本ある。

 どうでも良いことだが、主人公アリスの次女リディア役の女優の名前が思い出せず、見ていて焦った。「トワイライト」シリーズの主演女優であることは分かっているのだが、名前が出てこない。頭に浮かんだのはヘイデン・クリステンセン。そんなわけない。それは「スター・ウォーズ エピソード2」のアナキンだ。しばらく考えてクリステン・スチュワートの名前をようやく思い出した(クリステンだけ合ってたわけだ)。だからこの映画で描かれることは他人事ではない。

 そのクリステン・スチュワートは「トワイライト」よりずっと良い演技を見せる。3人姉弟の末っ子で上2人がエリートコースを歩んでいるのに対して、大学には行かず、演劇に打ち込んでいる。将来を心配して大学に行くことを勧めるアリスと対立するが、認知症の進んだアリスの面倒を最終的に見るのはリディアなのだ。映画のラストでアリスが言う言葉はリディアに向けて言ったものだと思う。この母娘の関係をもっと掘り下げると、良かったかもしれない。

2015/07/04(土)SBIカードの魅力ゼロへ

 ポイント探検倶楽部がSBIカードのサービス変更について報じていた。「SBIカード、2015年10月1日から大幅改悪 SBIレギュラーカードの年会費も有料化へ」。SBIカードからニュースリリースも出ているが、これはユーザーにとっては大幅改悪と言うにふさわしい中身だ。年会費が有料化(972円)されるだけでなく、ポイントのキャッシュバック交換率が大幅に悪くなるのだ。

 SBIカードは現在、10000ポイントが現金12000円と交換でき、業界トップクラスと言って良いポイント還元率(1.2%)を誇っている。それがいきなり0.5%に変更になる。しかも0.5%の還元は10000ポイントを交換した場合で、3000ポイントは1000円(還元率0.33%)、5000ポイントは2000円(同0.4%)と業界最低レベルになってしまう。

 水準的な0.5%の還元率に変更するというのならまだ話は分かるが、それを超えてトップクラスからいきなり最低クラスへの変更というのはわけが分からない。カード利用者が減るのは目に見えているにもかかわらず、踏み切らざるを得なくなったということは相当に経営状態が悪いのではないか。

 年間の利用額に応じてボーナスポイントがあるらしいが、それが大したことなかったらこのカードを利用する意味はなくなる。というわけでメインカードとして利用してきたSBIカードの支払いを他のカードに切り替えていこうと思っている。楽天カードやYahoo!JAPAN JCBカード、au WALLETクレジットカードなど還元率1%のカードはたくさんある。

 元々、メジャーなカードではないし、利用者はSBI証券の利用者がメインだろうが、こういうことをやると、SBIホールディングス全体のイメージも悪くなる。住信SBIネット銀行やSBI証券はネット専業銀行・証券会社として規模が大きい方なので、あまり心配はいらないとは思うが、大企業が破綻した例は過去にいくらでもある。預金は1000万円まで保護されるし、証券も信託銀行が保管しているので破綻しても影響はほぼない。しかし、万一のために移行先を用意しておいた方が良いかもしれない。そんなことまで考えてしまう変更内容だった。

 利用者にもかかわらず、僕はリリースを見落としていたが、住信SBIネット銀行がSBIカードを完全子会社化するそうだ(SBIカード株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ)。株式譲渡は今年10月。これに合わせての変更らしい。3月末時点でのカード会員数は8万3000人とのこと。