2011/05/29(日)「釈迦」
気が進まなかったが、少し見てみたら、画面のきれいさに驚いた。これもブルーレイが出ているらしい。日本人がインド人を演じるというのは無茶で、無国籍映画と言いたくなる。もっとも、考えてみれば、アメリカの俳優がロシア人やエジプト人を演じることもあるわけで、西洋から見れば、同じアジアなのだから違和感はないかもしれない。
1961年の三隅研次監督作品。セットやエキストラの数を見ると、予算はかかってるなあと感じさせる。日本初の70ミリ映画で、そういう資料的価値だけはあるだろう。山本富士子や叶順子、驚いたことに月岡夢路や中村玉緒まで、僕らの世代ではおばさんとの認識しかない女優陣はきれいだった。
2011/05/29(日)「無法松の一生」
所々で激しく胸を揺さぶられる。日本人の感性にぴったりの作品と言うほかない。陸軍大尉の未亡人(高峰秀子)とその息子を一途に支え続ける車引きの松五郎(三船敏郎)のあまりにも有名な話。松五郎は献身的に尽くすが、身分の違いをわきまえて、未亡人への慕情を表に出すことはない。それがついに押さえきれなくなったクライマックス、松五郎は「俺の心は汚い。奥さんにすまん」と絞り出すように言う。
稲垣浩監督は1943年に阪東妻三郎主演で映画化したが、軍の検閲によってカットされ、不完全なまま上映せざるを得なかった。15年後にリメイクしたこの作品はベネチア映画祭金獅子賞を受賞した。日本的な話だが、国境を越えて共感を呼ぶ映画なのだなと思う。キネ旬ベストテン7位。
2011/05/27(金)「フェーズ6」
致死率100%のウィルスが蔓延した世界で4人の男女(兄弟とその恋人、級友)の殺伐としたサバイバルを描く。地味にならざるを得ないような低予算の映画で、ホラーではなく、人間のエゴを描いたドラマ。悪くはないが、アイデアが不足している。監督はスペインのレックス&デヴィッド・パストー兄弟。「スター・トレック」のクリス・パインが粗暴な兄の役で出ている。2009年のアメリカ映画。原題はCarriers。
2011/05/27(金)「ファンタスティック・プラネット」
1973年のアニメ。フランス、チェコスロバキア合作。アニメというよりは動く絵本という感じだが、そこらのアニメよりはずっと面白い。アニメは絵とストーリーが重要であることを再認識させられる。フランスの作家ステファン・ウルの原作「オム族がいっぱい」をルネ・ラルー監督が映画化。ドラーグ族といわれる巨人族が支配する惑星で虫けらのように扱われる人間たちを描く。人間はドラーグによってペットとして飼われたり、駆除されたりしている。主人公のテールがドラーグから盗んだレシーバーによって、人間たちは徐々にドラーグの高度な科学技術を習得し、反撃する。
amazonのレビューで、子供の頃に見てトラウマになったと書いている人がいるが、当然だろう。人間にとっては絶望的な状況で怖さと気味の悪さがある。38年前の作品だが、まったく古びていない。強い個性を備え、時代を超えた普遍的な作品になっている。カンヌ映画祭審査員特別賞。
2011/05/27(金)「フローズン・ドリーム/煽情の殺人」
2009年のアメリカ映画。IMDBの評価は4.7。ジャンクと分かっていながら見たのはソーラ・バーチが出ていたから。「アメリカン・ビューティー」や「ゴースト・ワールド」で注目されたバーチは今、こんな映画に出ているのか。バーチの両親は「ディープ・スロート」にも出演した成人映画の俳優とのこと。それが関係しているわけではないだろうが、もう少し映画の選択をした方がいいと思う。
WOWOWの紹介記事には「アメリカで初めて裁判の模様がテレビ中継された実際の殺人事件を基に描く」とあるが、テレビ中継の部分は描かれない。1977年、売春婦のバーバラ・ホフマンが起こした事件で、男2人が毒殺された。ホフマンはこのうち1件の殺人で終身刑となった。殺人の様子も描かれないのはホフマンが今も取材を断っているからだろう。核心に触れず、その周りをぐるぐる回っているだけの印象がある。ストーリーテリングが下手なのが評価の低い理由か。監督はエリック・マンデルバウム。監督は10年ぶりで、デビュー作の「Roberta」もIMDBで4.9。10年たっても進歩はなかったらしい。DVDは出ていないようだ。まあ、当然か。原題はWinter of Frozen Dreams。