2014/04/27(日)「アナと雪の女王」
公開6週目にしてようやく見た。未だに親子連れで満杯状態だった。これはもう歌の力で長く記憶に残る作品になったと言って良い。オリジナルのイディナ・メンゼル「Let it Go」よりも松たか子「Let it Go ありのままで」の方が良いのは歌声が素晴らしいからではなく、表現力において松たか子がメンゼルを上回っているためだ。松たか子、素晴らしい。日本語吹き替え版でエンドクレジットに流れる(声量だけの)May J.にも軽く勝っているのは言うまでもない。興収が100億円を超え、サントラ盤が売れに売れているのも納得だ(僕もすぐに買って、繰り返し繰り返し聴いている)。
「ありのままで」は映画の中盤に流れる。凍らせる能力によって人を傷つけることを恐れ、何年も部屋に閉じこもっていたエルサが雪山の中で自分の力をすべて発揮すること、自分を信じること、自由に生きることを肯定する場面だ。この場面の開放感がとても良い。この歌の素晴らしさのために当初とは物語が変わったそうだが、優れた歌にはそういう力があるのだろう。惜しむらくはこの場面、クライマックスに持って来ていれば、というか、そういうストーリー展開にしていれば、文句なしの名作になっていたのではないかと思う。
と、ここで思い浮かべるのはピクサーの「Mr.インクレディブル」(ブラッド・バード監督)なのだけれど、あの映画ほど「ありのままで」のテーマ、自己実現の重要さが前面には出てこないのが惜しいのだ。エルサの凍らせる能力が何の役に立つのかが具体的には示されていないからだ。映画が描くように愛の力、自分よりも他人を思う力も大事だが、せっかく自分の力を信じるという歌があるのだから、これをもっと生かしても良かったのではないか。
そこを除けば、映画はうまくまとまっている。雪だるまやトナカイなど脇役に至るまでキャラクターの設定も描き方もうまい。最近のディズニーは絶好調だが、その中でもこれはエポックメイキングだった「美女と野獣」に匹敵する充実さを兼ね備えた映画だと思う。