2003/07/16(水)「ターミネーター3」

 12年ぶりの第3作。ジェームズ・キャメロンは降り、ジョナサン・モストウ(「U-571」)が監督した。そして驚くほど手堅く、真っ当なSFアクション映画になった。モストウはシリーズのセルフパロディ的な描写でユーモアを挟みつつ、ハードなアクションを徹底的に見せる。ストーリーもよく考えられていて、人類を支配するスカイネットの正体や、成長したジョン・コナー(ニック・スタール)とケイト・ブリュースター(クレア・デーンズ)の関係、衝撃的ラストまで過不足なく描かれてある。未来から現代へ殺人マシーンが送られてくるという基本プロットを踏襲しながら、新たな話を作り上げたと言ってよく、ここから始まる人間対機械の戦いの続きを見たくて仕方がなくなる。時間テーマSFの常でパラドックスじゃないかと思える部分もあるのだが、見ている間はそれを感じさせないタイトでスピーディーな演出は見事。モストウの起用は大成功だったと思う。

 パンフレットでも触れられているが、ラストは「猿の惑星」シリーズを思わせるものである。「猿の惑星」は2作目で地球が核兵器によって消滅し、それでジ・エンドになるはずだったが、製作者たちは地球の爆発によって宇宙船が過去にタイムスリップし、2匹の猿が現代に現れるという凝った設定の第3作を用意した。「ターミネーター」シリーズも2作目でスカイネットの誕生を阻止したのだから、本当は3作目は作りようがない。シリーズを続けるための設定が「猿の惑星」ほど考えられてはいないのは少し残念だが、とにかくスカイネットは未来に現れることになる。そして新しいターミネーターT-Xを現代(時代は明示されないが、前作から10年たっている設定だから2004年のはずだ)に送り込んでくる。同時にシュワルツェネッガー型のT-850も再びジョン・コナーの元に送り込まれる。前半はなぜターミネーターが現れたのかの理由を説明しないまま、新旧のターミネーターの壮絶な戦いが描かれる。クレーン車を使ったカーアクションにまず圧倒される。通りの建物を次々にぶち壊しながら繰り広げられる凄まじいカーチェイス。こんなの見たことがなかった。ここを見るだけでもこの映画には価値がある。

 ストーリーの詳細を書くのは避けるが、後半はスカイネットの稼働を阻止しようとするコナーとケイト、T-850を執拗にT-Xが追いかけてくる。ターミネーターの原型となるロボットT-1や空飛ぶ破壊兵器のプロトタイプも登場してくる。なぜ、送られてきたターミネーターが古いタイプのシュワルツェネッガー型なのかという説明も後半にあり、そこがまたSF的でいい。スカイネットによる核ミサイル発射まで3時間という設定が緊迫感を盛り上げる。

 僕は前作「T2」のVFXの充実ぶりには感心したが、ターミネーターが人間を傷つけないという制約があったためか、アクションシーンのインパクトはそれほどでもないなと思った。ストーリー的にもロマンティシズムとSF的アイデアが見事に融合した第1作の方がまとまりが良かったと思う。今回は両方のいいとこ取りをした感じである。モストウは前2作をよく研究している。T-Xは金属の骨格にT-1000の液体金属の表皮を付けたような感じ。演じるクリスタナ・ローケンの硬質な表情が良く、この映画の成功に貢献している。

 ニック・スタールは外見が冴えないのだが、演技力はあり、次第に人類のリーダーになるコナーらしくなってくる。クレア・デーンズはリンダ・ハミルトンの代わりを十分に果たした。この2人の関係は第1作のカイル・リースとサラ・コナーを彷彿させるものである。シュワルツェネッガーも前作の人間らしさを排してロボットらしさを前面に出しており、最近の映画の中ではベストの演技ではないか。

 続編を意識したようなラストで、こちらとしても話の続きがどうしても見たくなるけれど、作るのはなかなか難しいだろう。話がここまで進んだ以上、未来からターミネーターが送られてくるというパターンはもう使いにくいからだ。そして、この映画の続きにシュワルツェネッガーが登場するとすれば、それはスカイネットが作ったターミネーターになるはずで、ということは第1作のような悪役のターミネーターとして登場せざるを得ないだろう。