2002/06/08(土)「模倣犯」
原作は未読。よく分からない部分が二つほど(結末の赤ん坊とか。でもこれは原作にはないようだ)あったので、本棚に積ん読状態だった原作を読み始めた(この映画、原作の販売促進効果があるのではないか)。で、読んでいない時点での感想をとりあえず書いておくと、あまり面白くはないが、まったくダメではないというところか。
映画が始まって、豆腐屋の孫娘が殺され、雑誌記者のダンナが殺され、その他何人かの女が殺されるまでの描写は非常に雑である。いったい何人殺されたのかも分からず、本来ならじっくり描くべき豆腐屋のじいさん(山崎努)の無念の思いもあっさり流れている。感情移入しようがないような描写に終始して、とりあえず原作の設定を話し終えましたという感じ。
ところが、ピース(中居正広)が出てきて、グッと調子が変わる。中居正広が好演しているのである。それまでとは違う映画になり、描写も丁寧になる。頭はよいが、どこかねじれた方向に行ってしまったピースと浩美(津田寛治)の関係はなかなかいいし、それまでの話を別の視点で語り直すのも面白い。
この部分はなんとなく「アメリカン・サイコ」を思わせる話なのだが、残念なことに「アメリカン・サイコ」同様、犯人が殺人を続ける理由にあまり説得力がない。森田芳光監督としてはシリアル・キラーを描くことよりも犯人と山崎努の対決に話を絞っていくのが狙いだったようだ。しかし、犯人の動機や背景を十分に描いてくれないと、こういう話では面白くないのだ。中居VS山崎の構図は道徳的な結論に至り、意外性はない。