2009/06/04(木) MWA賞

 ミステリマガジン7月号でオットー・ペンズラーが今年のMWA賞について書いている。最優秀長編賞はC・J・ボックス「ブルー・ヘヴン」。翻訳は昨年8月に既に出ている。昨年の長編賞「川は静かに流れ」と出版が前後したわけだ。受賞作品で邦訳があるのはこれとメアリ・ヒギンズ・クラーク賞のビル・フロイド「ニーナの記憶」のみ。これは昨年2月に出版されている。ちなみにどちらも「このミス」のベストテンには入っていない。

 ペンズラーの文章で共感できるのは「評価できなかった点は、この5年間で最高のスリラー、トム・ロブ・スミスの『チャイルド44』が候補にさえならなかったことだ」という部分。確かにそれはないだろうと思う。ペンズラーによれば、MWA賞は過去に選ばれたことのない賞全体の責任者が各分野の委員4人を選ぶのだそうだ。これは公平な在り方だが、責任者が特定の分野に理解がないと、その分野からの長編賞の受賞は遠のくことになる。今年の責任者と委員には冒険小説(と僕は思っている)好きがいなかったのかもしれない。

 「ブルー・ヘヴン」と「ニーナの記憶」は会社の近くの書店にいずれも1冊だけあったので買った。どちらもハヤカワ文庫だが、MWA賞を取ったことで早川書房は増刷するのかな。MWA賞には映画のアカデミー賞ほどの効果があるわけでもないので期待薄か。出版のタイミングというのはなかなか難しいものだと思う。オビに「MWA受賞作」とあるだけで、手に取るミステリファンはいるだろうが、どれがノミネートされるかも分からないわけだから、それを待って出版するわけにもいかないだろう。