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2004年02月05日の記事

2004/02/05(木)「青春の殺人者」

 実話を基に中上健次が書いた小説「蛇淫」を映画化した長谷川和彦監督のデビュー作。1976年度のキネ旬ベストテン1位。

 前半の両親殺しのシーンが凄まじい。父親(内田良平)を殺した息子(水谷豊)を最初はかばっていた母親(市原悦子)がちょっとした感情の行き違いから息子を殺して自分も死のうとし、それを防ぐために息子は結局、母親をも刺し殺してしまう。エディプス・コンプレックス的描写を含めたこの長い2人芝居のシーンが凄すぎるために、死体を処理する後半の展開が普通の青春映画のように思えてくる。

 原田美枝子の無花果とヤツデのエピソードとか、母親が連れ込んだ男との関係をセリフでしゃべるあたりに深いものがある。デビュー作らしい瑕瑾はあるものの、面白いですねえ。原田美枝子は「半落ち」の今の演技を見ると、上手に年を取ったなという感じがする。

2004/02/05(木)「女はみんな生きている」

 監督のコリーヌ・セローは男と女の間にある深い断絶を娼婦ノエミの終盤のセリフに凝縮して見せる。男をみんな一緒くたにして語るこのセリフには異論もあるし、そうかそれなら君たちは男なしで今後やっていくんだなと思えてしまうが、それほどセローの意識は厳しいのだろう。後半のノエミの長い回想は技術的にはうまくないと思えるのだが、男をすべて敵視するようになる説得力はある。